テラーノベル
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4話(🎹⚡️)の続き
🎹→「」
⚡️→『』
🎹視点
一目惚れだった。
小2の、朝顔が咲く頃。
夏休み直前のその日は偶然にも僕の誕生日で、雲一つない天蓋は鮮やかな空色に染まっていた。
「転校生がくる」なんて同級生が騒いでいるものだから、どんな人が来るのだろうと少しだけ期待に胸を膨らませた。
その人が朝礼台に立った時、思わず息を呑んだ、
あんまりにも綺麗だったから。
その瞳がたたえる薄浅葱が夏空と調和して、宝石と見まごうほど美しかったのを覚えている。
まだ初恋を迎えていなかった僕でも、恋だと自覚するのに時間はかからなかった。
本当はすぐにでも話しかけに行きたかったが、学年が2つも違うせいでそうもいかなかった。
おまけに転校生の周りには何かと人が吸い寄せられるもので、僕なんかが入る隙も与えられなかった。
初めて話ができたのは夏休みに入ってからだった。
家が近いことを親から聞き、彼が来るかもしれないと近所の公園で待ってみた。
1時間ほど経った頃、公園の前で自転車に乗った彼が友人らしき上級生と別れたのが見えた。
そのまま彼は公園に自転車を停め、僕が座っているベンチへと歩み寄った。
『…あ』
その瞳が僕を捉えた。
『…えと、このへんに住んでる子だよ…ね?』
『帰りのときよく見るからさ』
「…うん」
「…あきら、さん?」
『え!そう!』
『〇〇小?何年生?』
コミュ力の高さに少し押されたが、それ以上に話せたことが嬉しかった。
あきらさんは僕に買ってきた駄菓子を分けてくれた後、夕方まで遊んでくれた。
『…あ、俺もう帰らなきゃ…』
『ピヤノまた遊ばん?せっかく家近いんだしさ!』
夕焼けに照らされた笑顔が眩しかった。
「……すき」
『え?』
「…ぼく、あきらさんのこと好き」
なんの躊躇いもなくそれを言葉にして伝えた。
幼かった故に、男同士の恋愛に対しての偏見もなかったから出来たことだろう。
結局その場では会話ごと流されてしまっけれど、その瞳は確かに揺らいでいた。
その日から、僕は毎日あきらさんにアプローチしてははぐらかされてを繰り返した。
反応を見るのが楽しくて、それからのあきらさんと過ごす日々が幸せだった。
「…そんな事もあったなぁ」
高校の卒業式が終わり、明日からは通ることのない帰り道。
卒業証書と花束を抱え、誰もいない静かな公園に足を踏み入れる。
来訪者を迎え入れる桜の木が、僕を祝福するかのように風に揺れた。
校庭にある桜よりも随分と小さいが、それでも慎ましやかな美しさを纏っている。
花弁でできた花道を歩き、ベンチに腰掛ける。
待ちわびたこの日は、この場所で迎えたかった。
『ピヤノ!』
自転車を押した彼に名前を呼ばれる。
あきらさんは自転車を停め、いつかの日のようにこちらに歩み寄る。
その手には、小ぶりな花束が握られていた。
『…卒業おめでとう』
花束を手渡される。
「ありがとうございます」
『花束すごいね、手いっぱい…w』
「先生方が用意してくださったみたいで、一人一人手渡してもらったんですよ」
「まあ僕はあきらさんから貰った花束の方が嬉しいですけどね」
『…そりゃよかった』
ベンチの花弁を手で払い、僕の隣に座る。
数秒の間、風の音だけが響く。
あきらさんはどこかそわそわしていて、落ち着かないように見える。
…このまま少し待たせてみようかとも思ったが、そんな意地悪をする程性格は悪くない。
「…あきらさん」
花束を横に置き、あきらさんの手を取る。
瞬間、淡い瞳が大きく揺れて、確かに僕を視界に捉える。
期待を孕んだ目がひどく愛おしい。
しっかり見つめ合うと、手を握る力をきゅっと強くする。
あきらさんもそれに応じるように手を握り返してくれる。
「僕と、付き合ってください」
少しだけ、びっくりしたような顔をした後、彼は鼻を赤くしてはにかんだ。
『…はい』
『喜んで』
繋いだ手を引いて、顔を至近距離に寄せてみる。
以前のように拒まれるだろうか、とも思ったが、額同士をこつんとされるだけで拒否はされなかった。
それどころか僕が手を頬に添えると、子供の我儘を受け入れるように、その空いた手で頭を撫でられる。
「…もう大人なんですけど」
『んふ、w…そうだね』
僕を撫でていた手は少しずつ下降し、首に手をまわす形になる。
あきらさんが目を閉じたのを合図に、唇を寄せる。
触れるだけの短いキス。
唇を離しても、しばらくは幸福感と甘い余韻に浸っていた。
添えていた手で優しく撫でる。
『へへ、…』
目を細めて笑う姿が可愛らしい。
(ああ、)
(この人のそばにいることを、もう誰にも止められることはないんだ)
「あきらさん」
『んー?』
「…僕は、」
「…病める時も、健やかなる時も…死がふたりを分かつまで、貴方を愛し、想い、大切にすることをここに誓います」
『っ…あ』
『……なんか前も似たこと言われた気がするんだけど…』
「ふふっ」
「前は未遂みたいな感じで終わっちゃいましたから」
今度こそ、永遠の誓いを。
『でもそれ、ほんとは結婚式で言うやつじゃないの』
「まあ、本来はそうですね」
『今もう言っちゃったけどさ、』
『……俺達の結婚式でも言ってくれるの?』
「…そりゃもちろん」
これからの2人が歩む道が、何処までも幸福でありますように。
コメント
5件
ダレカレのセリフ? ですかね。