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彼を御宅へ送って、玄関で別れようとした間際に、
「──陽介様!」
と、華さんが奥から走り出て来た。
「うん? どうしたんだ?」
「ええ、坊ちゃんからご連絡がありまして」
「ああ、秀司がどうかしたのか?」
息子さんの件なんだろうかと察して、
「あの、プライベートなお話でしたら、私はこれで……」
そそくさとおいとまをしようとすると、
「お待ちくださいませ」
と、華さんに引き止められた。
「でも、私がいる必要は……」
言いかけるのを、「お待ちくださいませと言っていますでしょう!」と、やや強めな口調で制して、
「坊ちゃんが、お話があるので、陽介様にお時間を作ってほしいと、電話でおっしゃっていました」
そう要件を告げた。
「ああ、会社では話せないことなんだろうか?」
「ええ、内々にと」
内々にだなんて、ますます私が加わるべき話ではないような気がして、
「……あの、帰りますから」
と、口にした私に、
三度目の、華さんからの「お待ちくださいませ!」が飛んだ──。