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静寂。
誰も動かなかった。
過去の視線。
らんの表情。
未来の少女の怯えた顔。
全部が。
すちへ向いている。
🦈「……」
こさめも思わず振り返った。
すちは黙っていた。
否定しない。
怒らない。
ただ静かに立っている。
その沈黙が。
逆に重かった。
🦈「すち?」
こさめが呼ぶ。
優しい先輩。
いつも穏やかで。
困ったように笑って。
何度も助けてくれた人。
そのすちが。
ゆっくり目を閉じた。
🍵「過去」
静かな声。
🍵「余計なことを言わないでほしかったな」
過去「余計じゃない」
過去は即答した。
過去「もう隠しきれない」
🍵「……」
過去「九十三%まで来てる」
封印解除率の数字がまた変わる。
94%
95%
赤い警告が点滅する。
『記憶封印崩壊接近』
館内放送が鳴る。
しかし。
誰も聞いていなかった。
こさめはただ。
すちを見ていた。
🦈「何を隠してるの?」
静かな声。
怒っているわけじゃない。
責めているわけでもない。
ま~い@毎日投稿ちゅ~
18,404
翠玲
2,128
純粋な疑問だった。
だが。
その問いに。
すちはすぐ答えられなかった。
長い沈黙。
そして。
小さく笑う。
いつもの優しい笑顔。
だけど。
どこか諦めたような笑顔だった。
🍵「全部かな」
🦈「え」
🍵「たくさん隠してた」
こさめの胸がざわつく。
🦈「どうして」
🍵「約束したから」
その言葉。
また記憶が反応する。
約束。
何度も出てきた言葉。
未来とも。
らんとも。
そして。
すちとも。
何か約束していた。
🦈「……どんな約束?」
すちは少しだけ空を見た。
砕けた天井の向こう。
青い光が漏れている。
🍵「忘れてって言われたんだ」
こさめの呼吸が止まる。
白い空間。
過去の自分。
🦈『忘れて』
泣きそうなすち。
全部が繋がる。
🍵「だから」
すちは続ける。
🍵「忘れようとした」
苦笑する。
🍵「無理だったけど」
らんが小さく吹き出した。
🌸「全然無理だったな」
🍵「うん」
🍵「びっくりするくらい無理だった」
🌸「そうだね」
二人とも少し笑った。
懐かしい思い出を話すみたいに。
でも。
その笑顔はどこか苦しかった。
過去が静かに言う。
過去「話せ」
すちは黙る。
過去「本人に知る権利がある」
🍵「……」
過去「三千年間黙っていたんだ」
瞳が細められる。
過去「もう十分だろう」
長い沈黙。
そして。
すちはゆっくり頷いた。
🍵「分かった」
その声はとても小さかった。
未来の少女が不安そうに見上げる。
らんも何も言わない。
みんな知っているのだ。
これから話されることを。
🍵「未来消失事件の日」
すちが語り始める。
🍵「未来は暴走してた」
こさめは黙って聞く。
🍵「放っておけば世界が壊れる状態だった」
🦈「うん」
🍵「だから未来を分解して隠す計画が立てられた」
そこまでは知っている。
記憶で見た。
問題はその先だ。
🍵「本当は」
すちの声が震えた。
初めてだった。
こんな声。
🍵「本当は俺がやる予定だった」
静寂。
こさめが固まる。
🦈「え?」
🍵「未来の分解」
すちは俯く。
🍵「俺の仕事だった」
らんが目を閉じる。
過去も何も言わない。
🍵「でも」
すちは拳を握った。
🍵「失敗した」
小さな声。
🍵「俺が」
胸が苦しくなる。
聞いているだけなのに。
苦しい。
🍵「術式が崩れた」
🍵「未来が暴走した」
🍵「封印できなくなった」
その時。
未来の少女がぎゅっと服を握った。
思い出しているのだろう。
あの日を。
🍵「だから」
すちの声が掠れる。
🍵「こさめちゃんが代わった」
世界が静まり返る。
🍵「俺を突き飛ばして」
こさめの瞳が揺れる。
🍵「そして」
すちが笑う。
泣きそうな顔で。
🍵「『大丈夫だよ』って」
今まで何度も聞いた言葉。
こさめ自身が。
何度も言ってきた言葉。
🍵「そのまま未来の中へ入った」
その瞬間。
封印解除率が跳ね上がった。
96%
97%
98%
記憶が溢れる。
崩壊する世界。
泣いている未来。
叫ぶらん。
倒れているすち。
そして。
過去のこさめ。
🦈『ごめん』
笑っている。
なのに泣きそうな顔。
🦈『すち』
🍵『だめ!!』
若いすちが叫ぶ。
初めて見る顔。
取り乱している。
🍵『行くな!!』
🦈『大丈夫』
🌸『大丈夫じゃない!!』
🦈『らんくん』
🌸『……』
🦈『未来をお願い』
らんが歯を食いしばる。
何も言えない。
🦈『二人とも』
過去のこさめは笑った。
🦈『ありがとう』
そして。
巨大な未来の光の中へ飛び込む。
🍵『こさめちゃん!!』
絶叫。
すちの叫び。
らんの叫び。
未来の泣き声。
全てが遠ざかる。
最後に見えたのは。
泣いている二人だった。
🦈「っ!!」
現実へ戻る。
こさめは息を呑む。
涙が止まらない。
理由なんて分からない。
でも。
分かってしまった。
自分は消えた。
未来を守るために。
そして。
すちは。
それを三千年間抱え続けていた。
🍵「……ごめん」
気づけば。
すちがそう言っていた。
静かな声。
🍵「守れなかった」
その言葉に。
未来の少女が泣き出した。
らんも俯く。
そして。
封印解除率が。
ついに。
**99%
へ到達した。