「そんな 、 まだ 、試作品なんだろう?」
「こうするしかないんだ。
彼のためにも 俺のためにも 。」
彼に、トドメを刺さなくてはならない 。
脳裏に浮かぶ。彼の笑顔と 、彼の仕草 。
彼の家の匂いは 、今でも思い出す 。
古びた襖の匂い 、ヒノキの匂いは愛おしくて、
畳の匂いも、少し埃っぽい匂いも
、
全てが合わさって 、すこし、線香の香りも混じって、美しい匂いがした。
あそこにいると、心が何故か落ち着くんだ。
彼と一緒にいると 、 心が落ち着くんだ。
空間と 、彼という存在が 、
いくら敵だとはいえ、これほどまでに …
彼を止めなくちゃ。
止められるのは僕しかいないんだから 。
「 One 、two 、 three 、 」
投下 、
大きな黒煙が空に広がって 、
国民たちは悲鳴をあげることも無く 、
命をたった。
ガラスは皮膚を突き破り 、眼球は飛び出して、
赤子を守るように2人とも失われてしまった影。
畳に残る影。少年の泣き声。
現地は 、悲惨な状態であろう。
「殺してくれ、」と見つめる彼らに、僕らは何ができただろう。
助けてくれではなくて、殺してくれと願う彼らにどんな顔をすればいいのだろう。
そんな彼らを見つめる日本は、
膝から崩れ落ちて 、その惨状を眺めるばかりで、
その瞳は、 真っ黒に染められていた。
「 菊 、? 」
その呼びかけにも答えない 。
それどころでは無いのであろう。
「 ッ … !! 殺してやる 、殺してやるッ!!! 」
彼が本心に思っている言葉なのであろうか、
地面に拳をたたきつけて髪を引きちぎろうとしている。
「 …… 日本、頼むよ 、
「 ッ 、 」彼は 、答えなかった。
「 ごめんなさい 、ごめんなさい 、」
亡き我が子の影を見つめては手を伸ばして影に向かって謝り続けている。
「 降参しろ 。 」
銃を彼に構えて 、脅したが彼は何も答えなかった、いや。答えられなかった。
我が子が、一斉に殺された。
「 … ッ 、日本ッ …!! 」怒鳴るも彼はそれどころでは無い。
正気にさせるために彼のみぞおちに1発と、
心臓に1発 。
「 …ッ 、ぅ゛、」彼は咳をしながら吐血した。
「…最後だ。降参してくれ 。日本!!」
彼の心に届くことは無かった。
屍人のような顔をしていた 、
「 降参しよう 。 」
「 ッ 、 ぅ 、 陛下 … ? 」
病室に運ばれた彼は 、人形のようになっていた。
指先ですら、ピクリとも動かず、
瞼だけが、上下するのみだった。
彼の名前を呼びかけても 、何も反応しない 。
彼の好きだった花だって、彼の好きだった食べ物だって、
何も興味がわかなかった。大阪ですら。
彼にとっては 、みんな誰か分からないんだろう。
「菊ッ !!!!!」
1番初めに来たのは僕だけど、
次に来たのは中国だった。彼は 、彼にあんなことされたのに、深い傷を 、自身も、国民にもされたのに、
美しく綺麗に透る涙を流していた。
彼は菊を抱きしめた。憎しみなんてないように。
弟のように 、抱きしめていた。
「菊!!菊ッ !!!菊ッッ !!!!」
彼は、何度も彼の名を読んだ。彼はその声に反応しなかった。
誰か分からないから。
その反応を見て中国は嗚咽を出して泣いている。それをじっと見つめていた。
その視線に気がついたのか、次は俺を抱きしめたんだ。
僕は 、抱きしめ返すことが出来なかった。
抱き締め返していい権利なんて 、
僕にはないから 。
彼の次に来たのはやっぱり枢軸国の奴らだった。
本当は、合わせたくなかったが 、
何度も何度もお願いされて、条件をつけて承諾した。
『日本に 、触らないでくれ』
彼らは分かったと、言葉を飲み込んだ。
「 日本 、 俺 … ッ 、ごめんね 、
俺ッ 、やっぱりッ 、できない子だったのかも、
ヘタレで、ッ 、ごめんッ 、菊ッ 、」
彼は何も言わなかった。なんなら、ずっと同じ場所を見つめるばかり。
ドアに何があると言うんだ。その反応じゃ、
誰かを待っているように見つめているようだ。
イタリアのことも 、ドイツのことも、見向きもしずに待つそいつは、君の見舞いに来てくれるやつなのかい?
ドイツも 、イタリア も 、静かにこの場を去った。
コメント
8件
目から水が出過ぎて水位が上昇した
原爆…菊
菊くぅぅぅぅぅん泣