「透子があまりにも可愛すぎるから、もう気持ち抑えらんなくなった。どこまでオレを好きにさせたら気が済むの」
「いや、だって・・」
「どんだけオレの知らない透子隠し持ってんの?こんなのオレの身が持たなくてヤバい」
「そんなの全部樹だからじゃん。こんな自分に樹がさせてるくせに」
私だってこんな自分がいるなんて知らなかった。
こんなの今まで言ったことないし、こんな気持ちになったこともなかった。
だけど樹は私の知らない扉をどんどん開いて、私をどんどん知らなかった自分へと変えていく。
樹に変えられるなら、そんな知らなかった自分も知りたい。
そんな自分もこれからは愛してみたい。
「あーどうしようオレ」
「何が・・?」
「もう透子好きでたまんないわ」
「樹・・」
そう伝えてくれる樹が今どんな顔してるのか見たくて、顔を上げようとする。
そして一瞬樹の顔が見えそうになった瞬間、なぜか阻止されてそのまままた頭を胸に埋めさせられる。
「樹?顔見せて?」
「・・・・」
だけど、樹は何も答えずそのまま頭に手を触れたまま、顔を上げさせてくれない。
「ねぇ樹!?」
「・・・ダメ」
「なんで?」
「柄にもなく今オレ照れてるから。どんな顔してんのかわかんないし、そんなカッコ悪いオレ見られたくない・・・」
樹から返ってきたのは思ってもいない言葉。
そんな可愛い言葉が返って来るとは思ってなくて。
いつも余裕で私を戸惑わせるくらいの樹が、何気ないこんな言葉で照れて顔も見せたがらないなんて。
「フフッ。嬉しい」
私はそんな樹が可愛くて、そんな反応してくれることが嬉しくて。
「笑うなよ・・」
「だって。可愛いんだもん」
「は?だから可愛いオレとか嫌なんだって!」
私の言葉に思わず興奮したのか、樹は私の頭に触れていた手を緩めて、私の肩に移動させ私の顔を覗き込む。
よっしゃ。緩んだ。
このタイミングですかさず私は樹の両頬に手を添えて優しく包み込む。
「いいの。樹はそれで。私はかっこいい樹も可愛い樹もどっちも好きなんだから。どっちの樹の魅力もあるから私はこんなに樹に夢中なんだよ?」
「透子・・・」
いきなり立場逆転された樹は戸惑っているのか、少し目を大きくして私を見つめている。
「照れてる樹も見たい。私の為にしてくれる樹の表情これからはちゃんと全部見せて」
私にとってはそうやって照れて可愛くなる姿も、どんな樹だって全部愛しいんだから。
「わかった?」
「はい・・・」
樹は納得したのか素直にそう返事する。
「よろしい」
私は両頬を包み込んだまま目の前の樹にそう言って微笑んだ。
そして手を下ろした瞬間。
今度は、同じように樹が私の両頬を包み込む。
「じゃあこれからは透子も全部オレに見せてね」
うっ・・・。
また同じことやり返されてる。
「ずるっ!」
「何が?同じことしてるだけ」
そう言って意地悪く微笑む樹。
「透子がそう言ったんでしょ?」
嬉しそうにまた微笑みながらそんな意地悪を返してくる。
なんかまんまと樹のペースに持っていかれてるような・・・。
「私と言ったのとなんか違う気がするんだけど・・」
「ん?同じじゃない?だってこれからは素直に甘えてきてくれるんでしょ?そしたらそんな姿オレ一秒も見逃したくないし」
「やっぱりずるい・・」
結局はまた私が戸惑うパターンにこうやって持っていかれてしまう。
「透子のこと好きだから全部知りたい。ただそれだけ。透子は違うの?」
「そう、だけど・・・」
「ん?ちゃんと言って。オレのこと好き?」
今度は少し憂いを帯びたような表情をして見つめてくる。
「好き・・だけど・・・」
「誤魔化さないで」
樹はこんな言い方じゃ許してくれないみたいで。
「言わないとこのままここでキスするけどいい?」
「・・・!」
そしてもっと追いつめて来る樹。
えっ?なんでこんなことになってんの?
「ここ外だよ。誰かに見られる・・・」
そう一度言ってはみるモノの。
「だから?別にどこだって関係ない。見せつけとけばいいよ」
樹は今まで以上に強気で。
「・・・好き・・・」
だから観念して樹を見つめながら素直にその言葉を伝えた。
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