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水視点
最近のないちゃんは、どこかおかしかった。
笑ってはいる。けど、その笑顔はどこか浮いている。
僕たちと目を合わせてもすぐに逸らすし、会話も続かない。
「ねぇ、しょーちゃん。ないちゃん、なんか変じゃない?」
「……うん。なんやろ、笑ってんのに……泣きそうな顔しとる」
僕たちだけじゃなかった。
りうちゃんも、いふくんも、あにきも――皆、同じ違和感を抱いていた。
「学校での噂、ほんまはウソなんちゃうか?」
誰かが呟いた。
けど、それを認めてしまえば、今までないちゃんを疑った自分が許せなくなる。
だから、口を閉ざすしかなかった。
あの日
ないちゃんの部屋のドアが閉まった音がした。
何か嫌な予感がして、俺は胸がざわついた。
「……様子、見に行こや」
いふくんの声が震えていた。
ドアノブを回す。鍵は――開いていた。
「ないこっ!!/ないちゃんっ!」
そこにあったのは、ロープに首を掛けた兄の姿。
力なく揺れる足先。冷たい体温。
目に焼き付いて離れない光景。
叫んだ。泣き叫んだ。
何度も名を呼んだ。
でも、兄はもう動かなかった。
葬式の後、誰も口を開かなかった。
「……信じてやればよかった」
最初に声を出したのは、りうちゃんだった。小さな肩が震えていた。
「僕らが追い詰めたんや」
しょちゃんが嗚咽を堪えきれずに吐き出す。
「兄貴やのに、守れへんかった……っ」
いふくんが拳を壁に叩きつけた。
「俺ら……最低や」
あにきの低い声が響いたとき、全員が泣き崩れた。
僕も涙が止まらなかった。
ずっと頼っていた、強くて優しいお兄ちゃん。
――本当は誰よりも弱くて、誰よりも傷ついていたのに。
そのことに気づけなかった僕たちの罪は、一生消えない。
だから、俺たちはこれからも背負って生きるしかない。
ないちゃんが残した痛みと、後悔を――。