まず一度目の人生。私は、そこではかなり有力な貴族の令嬢《ラニスピア・クロイマー》として生まれた。一度目の私の父―クロイマー家当主は、当時名のある実業家だった。武器や生活品などの商売をしていて、その売上はトップクラスを維持していた程だ。父は優しく、名声もあり、誰からも愛される。そんな人だった。けれど―私が7歳の時、クロイマー家は、父を敵視していたビネガーによって滅ぼされた。その時、父と私は、奴に殺された。
二度目の人生では、ホイップ村のごく普通の少女として生まれた。母と二人で、なんでもない普通の生活を楽しんでいた。その時は、ただこの生活が楽しくて、復讐なんかは考えていなかった。でも―またしてもビネガーは、私の、私たちの大切な日常を奪った。もう二回目なのに、私はあまりにも無力だった。そして、私は母を連れて逃げているところを、村を焼き尽くす劫火と倒れた家屋に押しつぶされ、また死んでしまった。
三度目の人生は、なぜなのかは分からないが、私の意識は、魔王竜スカードンに入り込んでいた。その当時のスカードンは、世界を滅ぼす寸前だった。街の兵士たちが、スカードンと闘っていた。私の意識がスカードンの中に入り込んだ時、スカードンの動きを止めた。その瞬間、兵士達が一斉に奇襲をかけた。―あぁ、私はまた死ぬのか。―そう思った。でも、今回は仕方ないところもある。だって、私の意識が入る前のスカードンは、この世界を滅ぼそうとしていたんだから。
私はふと死ぬ直前に、誰もいない真っ暗な闇に向かって呟いた。「なぜ、こんなにも死ぬことを繰り返さなければならないのか。」けれども、そんなことを祈っても、私の人生に終止符が打たれることは無く、何度も何度も輪廻を繰り返した。何度死んでも、何度願っても、この輪廻が終わることは無かった。
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