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月曜日。
いつものように栄太郎が西原の教室までついて来て、お喋りを始める。
土曜日にお出かけをしたおかげか、以前とは違い、相槌を打つだけだった西原が積極的に栄太郎の話題に乗ったり、逆に話題を振ったりしている。
明らかに良い雰囲気というやつである。
「あっ、西原さん、島田君おはよう」
普段と違った栄太郎と西原の空気を感じ取る事なく、大倉さんは2人に挨拶をして自分の机の上に荷物を置く。
その間も、会話が絶えない栄太郎と西原。
「あっ、何の話してるの?」
そんな栄太郎と西原の間に割り込むように、というか実際物理的に割り込んで入る大倉さん。
栄太郎の隣か、西原の隣に立てば良いのに、わざわざ2人を引き裂くように真ん中に入り込んだことに、栄太郎も西原も当然疑問に感じる。
だが、ここで「なんで間に割り込んできたの?」と言い出せない栄太郎と西原。相手の事を意識していると悟られないようにと考えるあまり、ちょっとした事を言うだけでも「意識しているとバレるのでは?」と脳裏をよぎってしまうので。
なので、大倉さんの行動になにも言えない。
そして、そんな態度が逆効果だった事に栄太郎も西原も気づいていない。
勇気を出し、あえて空気を読まずに割り込んだのに何も言われなかったことで大倉さんは確信する。
明らかに空気を読まない割り込み方をしたというのに、2人は何も言って来ない。それはつまり。
(西原さんは島田君に恋愛感情がなくて。島田君も西原さんに恋愛感情がない!)
もしどちらかが何か言うのなら、それは多少なりとも気がある事になる。
しかし、栄太郎も西原も何も言わない。それはつまり、その程度の仲だと大倉は推理した。
(そして、島田君は私の事が好き!!)
いや、その理屈はおかしい。
だが 思春期というのは、些細な事で相手が自分に気があると勘違いしてしまうものである。
(この前も出かける服装に困ったとか言って、明らかに私の趣味に合わせようとしてるのバレバレだって。フ、フヒ!)
そして、一度勘違いをすると、相手の行動すべてが自分のためにやってると思い込んでしまう。
……まぁ、勘違いする原因は栄太郎にあるのだから、大倉さんばかり責めることは出来ないだろうが。
貞操観念が逆転した世界で、男子がホイホイと素肌を見せるのだ。勘違いするなという方が難しい。
もし栄太郎が、元の世界で女子に同じような行動をされていたら、余裕で勘違いしていただろう。コイツ俺に気があるんだな、と。
この世界の思春期の女子がスケベに興味津々なのは理解している栄太郎だが、そんな相手に肌を見せていれば勘違いされてガチ恋させてしまうという事にまで配慮は出来ていない。
(今日の大倉さん。なんかめっちゃ俺の事ニヤニヤ見てくるんだけど)
普段だったら、大倉さんは誰かと目が合えばすぐに目を逸らすので、そもそも目が合わないようにしている。
そんな大倉さんが、今日に限って栄太郎の顔をジロジロと見ているのだ。
女の子に顔をジロジロ見られ慣れていない栄太郎。チラリと横目で大倉さんを見ると、すぐに目が合ってしまう。
そして、目が合っても視線を逸らそうとしない大倉さん。
(なんかやりづらいな……それならば)
今日は暑いなぁと言いながら、胸元のシャツを左手で摘まむと、右手で扇ぐ栄太郎。
「ちょっと栄太郎。はしたないわよ」
「だって暑いんだから仕方ないだろ」
これなら大倉さんは胸元をガン見るするはず。
大倉さんはもちろん、ガン見である……ガン見ではあるが、普段の厭らしい笑みではなく、どこか穏やかな笑みを浮かべている。
(やっぱり島田君、私の事好きなんだ。今もこうやって色仕掛けで落とそうとして来てる)
大倉さんの勘ちがいを加速させているだけの事に、栄太郎は気づいていない。