降谷side
芹那の家も僕の家も、親が放任主義なのか割と自由に遊んでいた。小学校が終わり放課後、2人で街の公共施設で遊ぶのが毎日になっていた。
「芹那ってさ」
「ん?」
「なんでそんなに強いんだ?」
「うーん…秘密」
「えー!教えてくれよー!」
そう、芹那は強い。自分らよりも大きい上級生だって泣かせてしまうほどの口述、武術を持っていた。
「大丈夫だよ。零のことは私が守ってあげるから」
「それじゃ駄目なんだ!」
「何故?」
「だって…」
「?」
大好きな女の子に守られるだけの男にはなりたくなかった。
「と、兎に角!俺だって強くなるんだ!!」
「そう」
「応!」
「期待しとく」
「!!、うん!!!」
ある夏休みの1日。俺と芹那は虫取りをしていた。
「無理無理無理無理無理」
「芹那、大丈夫だから」
「虫は無理なんだよ!」
「えーw」
誰よりも強い芹那にも苦手な物があるなんて、可愛い一面もあるんだな。
「…ん?あそこに誰か居る」
「え?何処だ?」
芹那は人を見つけるのが上手い。目に見えていないはずなのに、すぐ見つけることが出来る。不思議だ。
「君、そんな所で何してんの?」
芹那が声を掛けると確かにそこに人が居た。
「お前、誰だ?なんで泣いてんだよ」
そこに居たのは泣いていた男の子。
「誰かに虐められたのか?」
俺がそう聞くも、そいつは首を横に振った。そいつはポケットからメモ帳とペンを取り出し何かを書いていく。
『思い出して泣いてたの』
見せられたメモ帳にはそう書いてあった。
「…なんで声出さねーんだよ。声出した方が楽しーぞ?」
俺は不思議で仕方なかった。
「もしかして、失声症?」
「!」
男の子は首を縦に振る。
「なんだそれ」
「心因性の病気。声が出せないんだよ」
「しんいん?」
「心の病だ」
「へえ」
芹那は物知りだ。その男の子はなぜ分かったのかと瞳を輝かせていた。俺は自分のことでは無いのに誇らしくなった。
「…辛かっただろう」
「!」
「芹那?」
「ごめんね。君に何があったのかは分かってあげられない。でも、よく耐えたね」
「っ、」
「わっ!ど、どうしたんだ?!」
男の子は泣き始めてしまった。その子を芹那はぎゅっと抱き締めていた。僕だって、芹那に抱きしめてもらったことないのに。
一通り泣き終わったのか、男の子がまたペンを走らせた。
『ありがとう。俺、諸伏景光って言うんだ』
「私は五条芹那」
「俺は降谷零」
「見ない顔だけど何組?」
『引っ越してきたばかりなんだ。夏休み明けから小学校に通うよ』
「ふーん。あ、俺ら超絶仲良しでクラスも一緒なんだ!」
「零、それ今関係ないだろ。まあ、よろしくね景光」
景光は首を縦に振った。
それから夏休みは3人で遊んだ。景光はやけに芹那に懐いていて俺はちょっと気に食わなかったけど。
「なあ」
「?」
「何零」
「なんで景光は声が出なくなったんだ?」
「っ、」
「零」
「だって気になるだろ!」
「でも、景光にとってそれは声が出なくなるほどの辛い出来事だったんだよ。無理やり聞くことじゃ…景光?」
『話すよ、何があったか』
「いいの?」
景光は首を縦に振る。
『実は───────』
「そんなことがあったんだな」
「景光、話してくれてありがとう。私は景光が生きていて嬉しい。私達は景光が背負ってる物を一緒に背負いたい」
「!」
「そうだぜ景光!もう俺らの仲だろ!」
「!、景光」
景光は泣き出してしまった。
「…が、と」
「「え!」」
「あり、が、と、、う。ふ、たり、、と、も」
「景光!!」
芹那は景光に抱きついた。…今日ぐらいは許してやる。
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