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僕らは、『六角』という六人で殺戮機と戦っている。
でも、本当に戦っているのが“機械”なのかは、
まだ分からない。
機械人形に支配された国。
人々は隠れて生きるしかなかった。
お金のある人達は、皆他の国へ逃げた。
見つかれば捕らえられ、
“燃料”にされる。
胸に埋め込まれた橙色の液体――それが、機械人形を動かす命。
使い切られれば、人も機械も、ただのゴミだ。
イオリは廃墟を歩いていた。
埋もれた食べ物を探すため。
そして、まだ見ぬ“希望”を探すために。
「……ん?」
瓦礫の影に、それはあった。
壁にもたれ掛かれ、座っている機械人形。
傷だらけで、片腕は外れ、胸の窓もひび割れている。
――完全に、壊れている。
イオリは警戒しながら近づいた。
動かない。
反応もない。
「……これなら、いけるかも」
機械いじりは得意だった。
昔は、友達のバイクや簡単なロボットを直していたこともある。
この世界になってからは、ただの生存手段だ。
――もし。
もし、この機械人形が動いたら。
もし、あの“殺戮機”を止められるなら。
淡い期待が、胸に灯る。
数時間後。
「……よし」
配線を繋ぎ直し、破損部を応急処置で固定する。
そして、差し込まれていたドクロのマークが書いてある黒いカードを見つけた。
「これは……メモリーカード?
殺戮機にするための……キー……なのかな」
イオリはカードを見つめ、少しだけ迷ったあと、
ポケットにいれた。
これが何かは、後で機械に強い仲間に見てもらうことにする。
――今は動かすことが先だ。
「こんにちは。僕はイオリ。君の名前は?」
機械人形に語りかける。
「………………。」
反応はない。
ただ、ゆっくりと首が動き、イオリを見た。
「危険性は感じない……なら、成功かな」
胸の窓に残る橙色の燃料は、ほとんど空だった。
「燃料、少ないな……。でも、動けるなら――」
イオリはまっすぐ見つめる。
「ねぇ。君が良ければ、協力してほしい」
機械人形は、動かない。
「僕たちは『六角』っていう仲間で動いてる。
この国を取り戻したいんだ」
声が、少しだけ震える。
「家族は……もう、いない。でも、諦めたくない」
「君たちがどこから来たのか、何で人を襲うのか――
一緒に止めてほしい」
「………………」
沈黙。
動かない。
何も、返ってこない。
「……やっぱり、機械に感情は、……無いのかな」
俯く。
視界が滲む。
「……このまま、僕ら……捕まるだけなのかな……」
ぽたり、と涙が落ちた。
「……お父さん……お母さん……」
その時。
頬に、冷たい何かが触れた。
「……っ!?」
顔を上げる。
機械人形の手が、そこにあった。
ゆっくりと。
ぎこちなく。
それでも、確かに触れていた。
――大丈夫。
そんな“気持ち”が、流れ込んできた気がした。
声ではない。
音でもない。
でも、確かに。
懐かしい感覚。
忘れるはずのない――
「……おにぃ……ちゃん……?」
涙が、止まらなかった。
機械人形の胸。
ひび割れた窓の奥で、橙色の燃料が、わずかに揺れている。
「……ぴ。ぴぴ……」
ノイズ混じりの電子音が、かすかに鳴った。
――イオリ。
――俺は、お前を信じてる。
そんな気がした。
次の瞬間。
ミシ……。
天井が軋んだ。
ガラガラッ!!!
天井の亀裂が、一気に走った。
「っ……!」
瓦礫が落ちてくる。
機械人形が、イオリを引き寄せた。
背中に回された腕。
覆いかぶさるように、守る姿勢。
……ああ、これは。
あの時と同じだ。
家族を守るために、前に出た兄の姿。
「……ありがとう……」
視界が暗くなる。
でも、不思議と怖くなかった。
「……また、会えた……」
ドゴォオォォン!!
床が揺れ、砂煙が一気に視界を覆った。
ガラガラ……パラパラ……。
崩れ残った破片が、遅れて降り続けた。
――静寂。
目を開けると、瓦礫の隙間から光が差していた。
生きている、守られていた。
機械人形が、上に倒れ込んだまま、動かない。
胸の橙色は――完全に消えていた。
「……燃料、切れ……」
イオリは、しばらく動けなかった。
それでも。
手は止まらなかった。
再び、修理を始める。
今度は、燃料ではなく、バッテリー式に組み替える。
時間はかかったが――
機械人形は、再び立ち上がった。
「……ねぇ」
呼びかける。
反応はない。
「……お兄ちゃん?」
沈黙。
ただ、命令通りに動くだけの機械。
あの時の“気配”は、どこにもない。
それでも。
イオリは気づいてしまった。
仲間の『六角』と、殺戮機械人形との戦闘中。
危険な時だけ、ほんのわずかに動きが変わる。
指示よりも早く。
まるで――守るように。
胸の奥に残った“何か”。
使い切ったはずの燃料が、
機械の中に、染み込んでいるように。
「……行こう」
イオリは、前を向いた。
隣には、もう喋らない機械人形。
それでも。
完全には消えていない“何か”と共に。
『六角』の仲間たちと。
そして――かつて兄だった機械と共に。
イオリは、殺戮機の駆除を続ける。
――それが、誰の意思なのかは。
もう、分からないまま。
ただ、前に進むしかなかった。