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相談者「五年い組 久々知兵助」
授業終了を知らせる鐘が鳴り響いた。
幸柳「はい、それでは今日の授業はここまで。各自復習をしておいて下さい」
三年は組「はい!!」
三年は組達の元気な返事を聞いた幸柳は満足そうに教室を出ていった。
そのまま廊下を歩いていて自室へ向かうと自室の前に五年の久々知が立っていた。
久々知「今日って、悩み相談窓口空いていますか。」
久々知は不安そうに幸柳に聞いた。
幸柳「基本的に年中無休です。空いていますよ。」
そう答えると久々知は安心したように息を着いた。
久々知「ああ、良かった。」
幸柳「それで、久々知くんは今回相談窓口の利用ですか?」
久々知「はい、少し相談したいことが。」
幸柳は少し口角を上げた。
幸柳「そうですか。それでは、部屋へどうぞ。」
二人が真ん中に机を挟み向かい合って座る。
幸柳「それで今回はどのような相談で?」
机に頬杖を着きながらいつものように本題へ入った。
久々知「…先生は、俺がずっと三郎に座学でも体術でも負けっぱなしなのは知っていますか。」
幸柳「五年ろ組の鉢屋三郎くんですか。確か彼は座学体術ともに優秀な生徒だと聞きますがね。」
久々知「俺は、三郎に勝てたことがありません。」
久々知「みんなはそれぞれ長所を持っているのに、俺は何もない。 」
目を細めた。
久々知「俺は、特別すごいことがないんです。」
幸柳「皆さんの長所は?」
少し戸惑いながらも話し始めた。
久々知「えっ、と。三郎は座学体術ともに優秀で、勘右衛門は学級委員長らしくクラスをまとめていて、雷蔵は直感力があって、八左ヱ門は委員長代理として委員会をまとめていて。」
幸柳「それ、全部もっているのが久々知くんですよ。」
すぐには何を言われたのか理解できていなかった。
久々知「いや、でもつまりは、全部中途半端にしかできないやつってことで、」
幸柳「久々知くん。」
久々知の言葉を遮って言った。
幸柳「つまり久々知くんはなんでもある程度できるすごい人ってことなんですよ。」
目を見開いた。
幸柳「そこが、久々知くんの長所なんじゃないのかな。」
最後だけ敬語が外れていた。その分説得力が増したような気がした。
久々知「俺の、長所、、?」
幸柳「はい。」
まだ自分の長所を理解できていないようだった。
久々知「そっか、俺の長所は、なんでもある程度できるって事なんだ。」
晴れやかな顔で言った。
久々知「自分の長所がやっと分かりました。みんなみたいに出来なくても焦る必要は無いんですね。」
幸柳「えぇ。久々知くんのペースで進めばいいんですよ。」
久々知「ありがとうございました。幸柳先生。」
幸柳「解決出来たようで何よりです。」
そのまま久々知は部屋から出ていった。
静かになった部屋で幸柳は少し考えた。
幸柳「それにしても仲の良い学年だ。」
そう、実は久々知が相談に来る数日前に1人ずつバラバラにそれぞれ相談してきていたのだ。皆口を揃えて「最近兵助の元気が無い。」と言っていた。
幸柳は小さく笑った。
幸柳「愛されているようだね。久々知くん。」
数日後中庭から五年生達の声が聞こえてきた。
鉢屋「なぁ兵助。私と手合わせしてくれよ。」
尾浜「はぁ!?三郎だけずるい俺も俺も!」
久々知「いや、俺いいなんて一言も、」
竹谷「じゃあ俺も!」
久々知「ちょ、」
久々知は不破に助けを求めるように見つめた。
不破「はは、なら僕も。」
久々知「雷蔵まで?」
尾浜「なあいいだろ?兵助。」
尾浜は久々知をじっと見つめた。他の五年もじりじりと近づいてくる。
久々知「……分かった。いいよ。」
「やったー!」と誰かが叫んだ。その姿を一人の教師が眺めていた。幸柳だ。
幸柳「これにて、一件落着。」
相談者「五年い組 久々知兵助」完
コメント
1件
よかった……兵助くんの「特別なことがない」って悩み、すごく分かる気がするよ。でも幸柳先生の「全部持ってるのが長所」っていう言葉、めっちゃ響いた。みんながそれぞれ兵助くんのことを心配してたのも知れて、五年生の絆がすごく温かかったな。最後にみんなで手合わせするシーン、微笑ましかった🥀
もずくぷりん
#コメディ