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#ジョジョの奇妙な冒険
「褒めてますよ。……触ろうとしたら、棘で跳ね返されちゃいましたけど」
「……棘ねぇ」
りゅうせいには、そう見えているのか。俺からしたら、それは今更どうしようもない過去への後悔と、自分への戒めに過ぎないのだけれど。
「……りゅうせいこそ薔薇みたいだよ。純粋無垢な白薔薇、って感じがする」
「……白薔薇」
不意に口を突いて出た言葉に、りゅうせいの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。……待て、俺、今めちゃくちゃキザなこと言ったか? 自分で言ってて恥ずかしくなるような台詞だったか?!
「……俺が白薔薇なら、いつきくんは真紅の薔薇ですね。かっこよくて、綺麗で、最高にエロくて……。って、言いながら恥ずかしくなってきちゃった」
「うわぁ」と声を漏らし、両手で顔を覆うりゅうせい。なんだこれ。なんだこの時間。……なんだ、この可愛い生き物は。神様がくれた、何かのご褒美タイムか?
「……ケーキ、やっぱりいつきくんが食べてください。ひとつひとつ、小さくても幸せな思い出を作っていきたいので」
それって、この先の関係に期待しての言葉なのか。それとも、俺を諦めるための「思い出作り」に入っているのか。
どっちにせよ、今の俺にこれ以上のことはできない。この幸せな空気のまま、上司と部下でいることがベストなんだ……そう自分に言い聞かせる。
「え、うま。こんなに美味かったっけ、このケーキ」
「そんな数日で味変わったりします? え? 間違えてないっすよね?」
パッケージを確認し、俺のケーキを半分ほどフォークで掬って食べる。同じだ、なんて呟いているが、さっき自分で食べたんだから知っているだろうに。
「本当、バカだなぁ、りゅうせいは」
笑いながら、残りのケーキにフォークを突き刺す。
「……あの時はさ、味がわかんなかったんだよ。めっちゃキスした後だったし。なんでだろうとか、どうしようとか、頭の中がぐちゃぐちゃで味どころじゃなかったんだ」
「……いつきくんは、なんであの時、俺のキスを受け入れてくれたんすか?」
空気が一変した。
きっと、あの日と同じ、真剣で綺麗な眼差しで俺を見ている。……まっすぐな問いに、まっすぐ返す勇気が俺にはなかった。
「……わかんない。……キスとか久々だったから、ただ興奮しただけかもしれないし」
「……相手が、いっちゃんやだいきくんでもですか?」
「……それは、どうだろうな」
最後の一切れを口に放り込む。自分で嘘をついて、自分で傷ついている。
そんなわけない、と本音を言えば彼を期待させてしまう。けれど中途半端に濁して、彼をゆるりと繋ぎ止めている自分は、なんて卑怯なんだろう。
「……帰ります」
明らかに傷ついた顔をして立ち上がった彼を、引き止めることも、抱きしめることもできない。
見送る背中を見ながら、俺は自問する。俺は本当は、何がしたいんだ。
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