結局、あれから何時間経っても頭にあるのは答えの出ない問いだらけ。
何を考えても、紛らわせようとしても、消える事はない喪失感。
振られて悲しいとか、寂しいとか。
そんな風に思える綺麗な恋だったならどれだけ良かっただろう。
「ごめんね」って断られて、泣いて。
朝が来ると忘れちゃって。
日の光で助かるような、そんな恋なら。
今更どうにも出来ないなんて事は分かっているのに。
叶う訳のない我儘ばかりが頭に浮かんで、未だこの感情を諦められずにいる。
時間が経てば忘れる。
そう思ってまた明日も引き摺るんだろう。
簡単に終わりにできる程度の物ではない。
そんなの、自分が1番分かってるから。
劈くようなアラーム音が、耳を刺す。
あの後、殆ど睡眠時間は取れなくて。
睡眠不足で重い身体を起こし、アラームを停止させる。
今日だって、当たり前に仕事はある。
それがどれだけ自分にとって辛くとも、一切周りに関係は無くて。
音楽を創る。鳴らす。届ける。
その為に自分が必要とされているのなら、
今はするべき事をするだけ。
スマホの画面を閉じ、真っ黒な液晶を見つめる。
「………隈、隠せるかな」
独りの部屋に落ちた声もただ虚しく。
胃の痛さと頭痛を飲み込むように、小さく息を吸った。
スタジオに着くまで、身体の倦怠感は益々強くなるばかりで。
目の前のドアノブを回せば、普段通りの光景が広がる。
それは、普段通りに接する事が出来ずとも
変わらない事実。
もう終わった事なんだから、関係は無い。
今更気にする必要も無い。
そう言い聞かせても、呼吸は浅く鼓動は早いまま。
深呼吸をして息を吸い込んでもずっと苦しい胸の奥。
「………っ、はぁ…」
身体への負担を感じながら、握ったドアノブを引いた。
「おはよ、元貴」
聞こえてきたのは、いつも通りの声。
聞き慣れた、若井の声。
距離がある訳でもない、目が合わない訳でもない。
本当に、昨日の事なんて夢だったかのようで。
「…おはよ」
小さく返すと、若井は「先行ってるね」と笑って部屋を後にした。
通り過ぎる間際に、肩に軽く触れた手。
声色だって、表情だって、いつも通りだった。
これが、望んでいた現実。
俺が、望んだ。
全部無かった事にしたくて、忘れて欲しい
なんて我儘言って。
じゃあなんで。なんでこんなに苦しいの。
頭が殴られたように痛い。
普段通りに接することが出来なかった自分と、今迄通りに接してくれる若井。
それは、気持ちの問題なんじゃないか。
若井の中で自分はそれぐらいなのか。
なんて。
何考えてんだろう。
ほんと、最低だな。
若井は気を遣って普段通りに接してくれているのに、本当に忘れられてしまったように感じる。
いいじゃん、それで。
忘れられて良かったんじゃないの。
そうして欲しかったんでしょ。
考えれば考えるほど、吐き気がしてくる。
頭、痛い。
何がしたいの。じゃあどうして欲しいの。
繰り返す自問自答。
あぁ、まだ期待してたんだ。
若井が何か言ってくれるんじゃないか、なんて。
そんな訳無いのにね。
勝手に好きになって勝手に終わらせて。
それなのに期待するとか。
馬鹿じゃないの、ほんと。
コメント
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んぎぎぎっ、こ、心が……痛いっ…… 感情移入……いや、大森さんに憑依している私は、辛さを今噛み締めてます……。 そのため、今日はちょっといつも以上に語彙力皆無でコメントが全然出来ないっ!!笑