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深夜、寝床で思った。
パパが平凡に生きるより悪党として生きたいと言っていたのは過去に壮絶ないじめを受けていたからだろうな、と。
それにしても――
調教、調教師。
瑠奈が使ったワードに不思議と既視感があった。
既視感というか、かつて余自身がそのワードを口にしたことがあったような。
そして余は魔王時代の出来事を思い出した。
余の百万の軍勢はディオン王国の首都を陥落させ、国王一家を拘束した。第二王子だけは首都が包囲される直前に辺境の地へ逃れたが、無駄な抵抗とはこのことだ。余はまず二人の王子の目の前で国王夫妻を処刑した。
ここは占領した王宮の一室。玉座に座る余の前で軍服姿の第一王子のアスルが後ろ手に縛られてひざまずいている。五歳年下の弟は甘いマスクで余の好みだったが、兄の方もイケメンという点では弟に負けていない。
「降伏すれば王族全員殺さないと約束したじゃないか。なぜ両親を殺したんだ?」
「〈全員殺さない〉は〈全員は殺さない〉の意味だ。おまえも殺し、第三王子のモスペリオだけ生かすつもりだ。これで約束は守ったことになる」
「いいだろう。おれは死ぬ覚悟はできている。モスペリオは生かしてやってくれ。あいつは二十歳だが心は十歳のまま。野原で花や蝶と遊ぶことを好む、政治にも軍事にも無縁な、純粋で汚れなき少年だ。生かしておいてもおまえに害をなすことはない。おそらく誰かと結婚し子をなすこともないだろう。静かな場所で天寿を全うさせてやってくれ」
余は鼻で笑ってやった。
「馬鹿言うな。穀潰しを養うつもりはない。余の性奴隷として飼育すると言っているのだ」
「性奴隷? おまえまさか、もうモスペリオに……」