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「今日部活無いんだけど」
颯が怠そうに隣を歩く瞳を見上げる。
「いいじゃん。付き合ってよ〜」
「恋人の見送りくらいひとりで行けって」
「後でドリブルの練習相手するから!」
今日は朱里が帰る日。
11時頃にバスが出発するとの事でいつものコートに向かっていた。
昨日、颯にはあの後すぐに朱里と恋人になったことを電話で伝えた。
嬉しい感情をひとりで抱えきれず聞いてもらいたかったのは、我ながら子供だと思う。
颯は「よかったじゃん」と相変わらず素っ気ない返事だった。
「……その髪のやつ。」
颯は瞳の髪に添えられたマゼンダのヘアピンを見た。
「えっ、似合わないかな?」
瞳はヘアピンを隠すように手を添えた
「いいんじゃねーの」
颯はそう言って目を逸らした。
「朱里から貰ったんだろどうせ。自信なさげに付けんなって。」
瞳は手を下ろし、スマホの反射でヘアピンを確認する。
「そうだね。ありがとう」
颯は前を向いたままだった。
コートにつく頃には、駐車場に人が集まっていた。
テニス部の部員達がバスに荷物を運んでいる。
「瞳ちゃーん!颯くん!」
集団の中からぴょこぴょこと朱里が走ってくる。
「2人とも見送り来てくれてありがとう〜」
「朱里ちゃん〜寂しすぎる」
瞳は朱里の手を撫でながら言った。
「私も寂しいよ〜。毎日会ってたのにね」
瞳の手を握り返した。
「俺は何見せられてんだよ」
颯は腕組みしながらため息をついた。
「え〜朱里がデートって言ってたの彼??」
「ヘアピンまでお揃いにして熱いね」
朱里の後ろからぞろぞろと冷やかしがやってくる。
「そ、そうだよ。瞳ちゃん…」
朱里は頬を染めながら瞳の服の裾を握った。
瞳は少し目を丸くしたあと、困ったように笑う。
「……なんで朱里ちゃんが照れてるの」
「だ、だって」
後ろから、
「かわい〜」
と茶化す声が飛ぶ。
朱里はさらに顔を赤くした。
「そろそろ出発するぞー」
監督がバスの前から呼んでいる。
「もう行かないと」
朱里は慌てて振り返った。
「じゃあね。」
「うん。すぐ、連絡するから。」
瞳は頷く。
少しだけ、髪についたヘアピンへ触れた。
朱里が嬉しそうに笑う。
「それ、似合ってる」
瞳は少し照れたように笑う。
「朱里ちゃんに貰ったから。颯のお墨付きだよ」
「そこまで言ってねーだろ」
少し遅れて颯が眉をしかめた。
「ええ?!良いって言ってくれたじゃん」
「それは言ったけど……」
颯は少したじろいだ。
「私の見立てに間違いは無いんだよ」
2人の会話に、朱里は満足そうな顔をした。
「じゃあ2人とも、またね!」
朱里はバスの方へ駆けて行った。
ドアが閉まる直前、大きく手を振った。
瞳も手を振り返す。
バスがゆっくり動き出す。
遠ざかっていく窓の向こうで、朱里がまだ笑っていた。
瞳はその姿が見えなくなるまで、しばらくその場に立っていた。
海風が頬を撫で、髪を揺らした。
瞳はしばらくその場から動けずにいた。
コメント
1件
ゆめかだよ〜🌸 第6話読んだよ! 朱里ちゃんとの見送りシーン、切なくてじーんときた😭💕 颯くんがヘアピンに気づいて「いいんじゃねーの」って言うところ、ツンデレすぎてにやけたわ…笑 自分から気づいといて照れるのずるい!! それに朱里ちゃんが「似合ってる」って言いながらバス乗るシーン、青春の1ページって感じで涙腺ゆるんだよ🥺✨ 遠距離になっちゃうけど、2人の関係がどうなっていくのかすごく気になる…! 次の話も楽しみにしてるね、矢野さん!!📖💕
こちらの茨さん🖌️
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