「ローマ…俺…レーサーに戻らないかって誘われて…」
「…え?」
「レーサー時代、ライバルチームの監督から誘われて、フォーミュラとGTに出場してくれないかって…」
「…嫌だよ…」
「ローマ…まだ決まったわけじゃないんだ!もちろんトレーナーとしてやっていきたいよ…ローマと一緒に頂点めざ…」
「落ち着け!!決まったわけじゃないから!!」
「……………」
急ぎ足でトレーナー室を出たローマ。追いかけようとしたが、トレーナーとしてなんなのか分からなくなってしまった三井。2人の絆に亀裂が入ってしまった。
「遅いなローマ」
「長いことでしょうかね?大丈夫かしら…」
「あっ!来た!!」
テイオーとマックイーンの姿が見えた。が……
「っ!!!!!!」
「え…ローマ!!」
「ローマさん!どうかしましたか!!」
2人は声をかけるが、ローマには届かなくなってしまった。
「ローマ、なんかあったのかな?」
「大丈夫でしょうか…」
「はぁ…はぁ…2人とも!」
「ローマのトレーナー?」
「ローマ見てない?」
「さっき走っていったけど、何かあったの?」
「実は…」
「えぇ!レーサーの誘いが来たの?!」
「そうなんだ…」
「ならなっちゃえばいいじゃん!!」
「テイオーさん、トレーナーの仕事どれだけ大変か知ってますの?」
「うーん……」
「もちろんトレーナーとしてやっていきたい…けど突然巡ってきたチャンス、どうしたらいいか…」
「…両方出る訳ではないんですよね?」
「両方…?」
言われてみれば、星野監督は両方出てくれとは言ってない。どれか1つだけ選べる。
「けど…ローマは分かってくれるか?」
「…大丈夫だよ!ボクが言ってあげるから!」
「自分から言った方がいいけどな…」
「…大丈夫ですよ、ローマさんならきっと分かってくれますよ」
「…ありがとう2人とも…」
2人の励ましに暗かった三井は少し光が刺したように感じた。
美浦寮
「はぁ、はぁ、はぁ…」
その頃ローマは、美浦寮まで走って帰っていた。
「…トレーナー…—————」
(トレーナーがレーサーに戻るなら私も嬉しい…けどトレーナーじゃ無くなる。どうしたらいいの?!)
「ローマ?」
「ルージュ、今帰ったところ?」
「そうだけど…?何かあったの?」
「…ううん、なんでもないよ」
(ルージュにこの事を話した方がいいのか分からない!!)
夕食後
「クリーク先輩、ちょっといいですか?」
「大丈夫ですよ〜」
話しやすいと思ったのがスーパークリークしかいなかった。三井の事について話そうかと思った。
「私のトレーナーなんですけど…レーサーに戻ろうかって誘いが来まして…」
「…ローマちゃんのトレーナーさん?」
「はい…ご存知かと思いますけど、元レーサーなんです」
「うーん…話が見えてきましたね!トレーナーとして離れてしまうのがいやなんですかね?」
「そうですね…」
スーパークリークはすぐに分った。
「もちろんトレーナーがレーサーになってくれたら私も嬉しいですよ…ただ…辞めて欲しくないんです…」
「…その思いを伝えれば大丈夫ですよ!」
「…え?」
「ローマちゃんのトレーナーさんはすごいですよ!クラシックで三冠、天皇賞・春でレコード、世界に挑戦…トレーナーでも数年かかることをとんでもない成長を見せたはずですよ!」
「クリーク先輩…」
「だから…無理に抱え込まなくても、きっと伝わりますよ〜!」
そういったスーパークリークは、ローマを優しく抱いた。
「…クリーク先輩…グズッ…」
優しさのあまり、泣いてしまった。
翌日
「…トレーナー…」
「やっほーローマ!!」
「テイオー?!」
「いつもそんなだるい感じだった?」
「…ちょっと寝不足かな?」
(昨日の事、まだ気にかかってるかも)
トレーナーの家
「…ローマ、昨日の事まだ気にかかってるかな」
ピーンポーン
「はーい!」
「よう三井!」
「沖野トレーナー?漆瀬さんまで?!」
「昨日テイオーから聞いたぞ、関係が悪いのか?」
「…はい」
「…気にすることないさ!選ばれたんだから!」
「………」
「…お前の車で学園まで送ってくれないか?」
「え?」
屋上
「…はぁ〜…」
「ローマ元気ないじゃん」
「テイオー…昨日はごめんね…」
「ううん、気にすることないよ。急に走って帰っちゃうからビックリしたよ!」
「…ちょっとトレーナーとね…」
「喧嘩でもしたの?」
「喧嘩じゃないんだ、ちょっとしたワガママ言っちゃって…」
「…別にいいんじゃない?ワガママ行ったって」
「え?」
「…ボクの話になるんだけど、キタちゃんいるじゃん」
「うん…キタサンがどうかしたの?」
「…実は、キタちゃんがここに入学する前にわざわざ学園の前まで来てくれたの。その時ボク骨折しててさ」
「わざわざ学園に?!」
「うん、その時御守りくれたんだよね、手作りの。けど、キタちゃんにキツいこと言っちゃって…」
「…え?」
知らなかった。テイオーがキタサンにその事があったこと。闇期になったことは知ってるけど…
「あの時ボク、分かってなくってさ…」
「…やっぱりすごいな」
「え?」
「学園の前まで応援しに来て、手作りの御守りもくれる子いないよ!テイオーやっぱりすごいよ!」
「えへへ。だからさ、ローマも言ったって構わないよ!」
「…そうだね、私もう少しトレーナーと話してみる!」
「その調子だよローマ!」
テイオーが相手になってくれて、私も少し気が楽になった!
「にしても、走りすぎて昨日の疲れがまだ取れてないんだよね!」
「ならボクがマッサージしてあげようか?」
「いいの?ありがとう!」
テイオーがローマのマッサージをしてくれた。
「それぇ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!!!」
「ちょ、や〜め〜て〜!!」
ローマとテイオーが笑いながらじゃれ合い、たくさん笑った。
「トレーナー、大丈夫かな?」
夕方、トレーナー室前に来たローマ。三井が心配だった。
あの時、つい余計なこと言っちゃったから怒ってるかな…
「やぁ、君が噂の?」
「…え?誰ですか?」
「三井に用があってね、君は…スクーデリアローマだったかな?」
「はい!スクーデリアローマです!」
「星野智、チームインパルの監督さ」
「チームインパル?」
「事情は中で話そう」
星野智はノックをし、トレーナー室に入った。
「星野監督?!ローマも?!」
「トレーナー、この人?」
「前に言ってた、レーサーに戻らないかって言ってた星野監督だよ!」
「…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「…では、前に言ってたこと覚えてるか?」
「…フォーミュラとGTにドライバーとして出てくれないかですよね」
「トレーナー…辞めるなんて言わないよね?!」
「…まだ決まってないから!」
「スクーデリアローマは、三井のトレーナーでいて欲しいか?」
「もちろん!いて欲しいです…ただ、トレーナーがまた活躍して欲しいと思っているんです…」
「え…?」
「私…トレーナーが本当に戦ってる姿見てないんですよ、レーサー時代強かったか分からなくて…」
「ローマ…」
俺も驚いていた。ローマがそのような事を思っていたとは。けど———
「なら…GTだけでも出てみないか?」
「………」
「大丈夫だよトレーナー、私本当にトレーナーが速い姿を見てみたいの!!」
「ローマ…」
「ははは!期待のある娘だな!」
「む…娘じゃないですよ!専属トレーナーとしての関係ですから!」
「…どうだ?やってみるか?」
「…分からないことだらけですが、やってみます!」
「うぉっ!!!!」
嬉しさのあまり、三井を抱いてしまったローマ。
「んじゃ、GTにエントリーだな!」
「よろしくお願いします!!!!」
「トレーナー…」
「なんだい?」
「昨日はごめんなさい…私つい…」
「…俺も悪かったよ、ローマを1人にしそうになって…」
「…でもさ、トレーナーも大舞台にたってる姿見てないから…私1人だけ目立ってて…」
「ローマ…」
「だから、考え直したの!トレーナーも1番目指したいって!だから…ずっと私のトレーナーでいてくれるかな?」
2人の亀裂が繋がったみたいだ。
「そうなんだ!仲良くなったんだ!!」
「良かったですねローマさん!!」
「うん!」
「ローマのトレーナーいつデビューするかな?」
「来年の4月に岡山で本戦デビューするよ!」
「お願いなんだけどさ、もし優勝したら…一緒に表彰台登ってもいい?」
「トレーナーに聞いてみるね!!」
テイオーのお願いに三井はどう答えるのか?
12月上旬
鈴鹿サーキット
この日はオフシーズン。来年に向けてテストが始まっていた。
「トレーナー、頑張って!」
「テストだから確認だよ!」
「三井、第2ドライバーが来たぞ!」
第2ドライバーは一体誰なのか?
「え…佐々木?」
なんと、ジャパンフォーミュラでクラッシュされた佐々木秀明だった。
「あの人誰?」
「佐々木秀明…俺がクラッシュして怪我をさせたドライバーだよ…」
「三井、まさか…」
犯した出来事、やってしまった事を全て言った。
「俺、あのタイミングで仕掛けようとしたら…こんな事になって…最悪だよな、俺とコンビって…」
「…え?」
「俺もあの出来事は最悪だったさ。けど、あれは仕掛けるタイミングが際どかったんだ。だから、あの技もう一度見せてくれ!!」
「佐々木…」
「トレーナー、これを原動力にして頑張ろう!!」
「…ローマ。うん、頑張ってみる!」
「いい娘だな!」
「それ監督にも言われたよ!!」
関係は良くなりそうだ!
「んじゃ、行ってくる!」
そう言った三井は、フェアレディZGT500に乗り込み、ピットロードを出た。
「来た!」
三井の乗るZはすごい音を響かせた。
コメント
1件
次回の有馬記念でこの物語を終えます。是非最後まで読んで下さい!!