「いい?拓馬くん。」
「今度はちゃんと聞いてるからそんなに確認しなくていいよ。」
僕は強く言い出せない。
「さっき聞いてなかったのは拓馬くんでしょ?」
「だからごめんって。」
本当に真白は…一度やらかしたら念入りに注意してくるよな。まぁ、そんな性格だからミスをしないんだろうけど。
「もっかい説明するから今度はしっかり聞いてね?」
「分かったってば…」
「よろしい。」と上から目線の真白。ちょっとだけムカつくな。でも…こんなにも普通に会話をしているのに、やっぱり真白の『心の声』は聞こえない。僕はそれに慣れてきている。今では真白を怖いなんて思わない。
「まず、スピーチは一人に向かって話さないでしょ?だから、全員と目を合わせるように話すの。」
たしかに僕は一人に話しかけるように喋っていたかもしれない。次からは気をつけよう…
「次に…」
「⸺うん、⸺」
キーンコーンカーンコーン
昼休みが終わった。みっちりと練習したかいあって、僕でもなんとなく良くなったのを感じていた。これを教えてくれた真白には感謝しかないけど…何で真白はこんなにも完璧なんだろう。
「ねぇ、真白。」
「んー?」
「なんで真白は何でもできるの?」
真白の顔色がさっと変わった。肩を震わせながら優しいけれど酷く傷ついたような笑みを浮かべた。僕はそれ以上何も言えなかった。
これ以上話してしまうと、真白が壊れてしまいそうだったから…
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