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「…佐々木さん、こちらは音楽室です。」
そう言って案内されたのは、灰色のカーペットが敷かれた薄暗い部屋。
楽器が後ろに並べられていて、いかにも音楽室、という感じがした。
「はい!」
「‥昔、ここで‥。」
ふと、ポツリと呟く彼女は顔が青ざめているようにも見えた。
「‥春野‥さん?」
「あっ、いえ。では、次に行きましょうか。」
〜
「これで以上です。まだまだ覚えられてないことも沢山あるでしょうが、一緒に乗り越えましょうね。」
最後にそう言った彼女の言葉が妙に引っかかる。
乗り越える‥。
本来、乗り越えるというのは、困難な状況を克服する、という意味だ。
私が乗り越えるというのはまだ理解できるが、何故クラスの皆まで乗り越え無ければいけないのか?
そんな事を考えているうちに、彼女はもう歩きだしていた。
「待ってください、春野さん!」
自分でもなんで呼び止めたのかは分からないけれど、そう言うと春野さんは振り返った。
「‥なんでしょう?」
「‥あの、一緒に乗り越える、ってどういう意味ですか?」
「言葉どうりですが。クラスの皆で ゛助け合える゙ 。」
そう返答した彼女の目は酷く暗くて-。
腕も少し震えていた。
「‥春野さん、なんでそんな‥。」
「‥昔、ですね。色々なことがこの村で起こったんです。
詳しくは ゙今はまだ゙ 言えませんが。」
ガタガタガタ
「本当に、たくさんの人が‥。」
カチカチカチカチ
「もぅ、やだ‥。」
「ピーンポーンパーポーン
先生よりお知らせでぇす。春野さん、はるのさん、至急職員室へお越しください。」
その瞬間、ピタリと震えが止まった。
さっきまでの青ざめた表情も、すっと消えて‥。
「では、私はこれで。」
窓から吹く風が、冷たい季節になったようだ。