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まきぴよ
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前話の❤️sideです!!前話よりも💙❤️要素強めです🙂↕️次話はもっと強くなりそうなのでタグ足したりタイトル変更したりを検討してます🙂↕️🙂↕️🙂↕️
4000字⬆️なのでご注意ください😭
ほんとに、ここの⛄️界隈を代表出来るくらい遅筆すぎて、すみません、
『じゃあ今日泊まってもいい?久々だしいろいろね』
『わかった』
『じゃあまたあとで!10時くらいに行きます』
冬の日、夜20時。俺は某チャットアプリでもう数年目になる恋人―渡辺翔太に連絡を入れた。
…最近、特別突き放されている訳ではないが、酷く冷たい態度を取られることが増えたように思う。
―俺が、温もりを求めすぎてしまうのもあるかもしれないけど。
*
夜半22時。インターホンを鳴らし、出てきた家主と軽く会話を交わして。
―躍ってしまった気持ちを、声に出そうとして。
「こんばんは。…ね、翔太。今晩さ、久々にさ―」
「ごめん、涼太」
突然向けられたシリアスで真っ直ぐな眼差し。
少しだけ気圧されてしまって息が止まる。
「…な、なに」
「…ごめん、そんなに身構えさせるつもりはなかった。後で割と真面目な話するから、ってだけ。」
*
「悪ぃ、いつも作らせてばっかりで」
「なんで急に謝るんだよ。俺が好きでやってるんだから気にしないで」
「…そ。」
何気なく不穏な空気を感じ取ってしまって、少し指が震える。
「…ねえ、翔太」
「…」
「…俺、何か嫌なことしたり言った?気付けなくてごめん、でも最近冷たいでしょ」
…静寂に息が詰まる。
それを破るように、冷たい声が通った。
「もう、全部無かったことにしよう。」
冷たい、つめたい声。
「…え?」
「涼太にはあるんでしょ、結婚願望。」
…絶対無い、って言えば嘘だけど。でも誰のことよりも翔太のことが好きで、翔太のためならそんなのどうでもいいって思ってた。
…そこで、もう少し早く嘘を吐けてたら。
「…俺は、翔太になら―」
「あるだろ」
「…」
「…今日で、全部最後。明日からはまたメンバーとしてよろしく」
*
「食器はキッチンに運んで。俺がやっておくから」
暫くして、投げるように箸を机に置きながら翔太は言った。―この後、いつもなら。リビングに居る翔太と食器を洗いながら会話する当たり前”だった”時間を過ごせていたのに。
―いつかは失ってしまうからこそ、当たり前の日々は何よりも美しいのかもしれない。心の底からそう思えた。
「…俺が酷いやつみたいだろ、泣くなよ」
「…泣いてない」
「無理あるだろ」
「〜〜ッッ、泣いてねぇよ…!!」
「へいへい、タオルやるよ」
雑に投げられる。いつもなら、ちょっと怒ってたところだけど。
優しくすんな。 …忘れられなくなるから。
「…気まずい、もう帰る」
「雨降ってっけど。傘いらねえの」
…ツイてない。今日に限って鞄に折り畳み傘を入れ忘れてた。けど。
「…いらない」
「ん。じゃあ、また、どっかで。」
「好きだったよ」
「…俺も」
*
もうやめてほしかった。
思い返せば結局、俺ばっかりが未練を抱いているように柔い言葉を繰り返していた。
冷たい雨風に負けそうになり足も覚束ない。
―そういえば俺、誰のために何を頑張ってきてたんだっけ。もういっそここで消えてしまえたなら…
*
それから、ただただぼうっとしながら街を歩いていたようで。道中の記憶は一切無いが、今こうして俺と…あいつを隔てるドアの前にいることだけは確かな事実だった。
―なんで。そういう疑問と、人に頼ってばかりの自分に嫌気が差す。…第一、人に聞いて貰えるような内容じゃない。俺と翔太の顔も立たなくなる…
…でも、ちょっとだけ。それらの感情にほんの少しだけ、期待が混じっていて。
呼び鈴の音が木霊したような気がした。
*
ドアが開かれる。…見慣れたフォルムに安堵すると同時に、身体中に緊張が走る。
「傘とかさしてなかったの!?」
「…ごめん」
「い、いや、別にいいけど…どうしたの、舘様」
「…」
事実を上手くまとめられなくて。必死に言葉を探すけど、言えなくて。
また阿部の優しさに頼っちゃった
「…冷えるでしょ、一旦上がりなよ」
「…ごめん。」
*
「…どうしたの、舘様。何かあったの?」
やめて、そんなに優しくしないで。そういう想いでいっぱいだったけど。
「…そんなに、俺頼りない?」
どうしても口を噤んでいたけど、そういうふうに聞かれたら。答えるしかないと思って。 ゆっくりと口を開けた。
「…振られた。」
…阿部は、優しいから。きっと親身になって思ってくれていて、驚いてくれたんだと思う。少し切なげな表情にも見えたけど、たぶん気のせいだろう。
「…誰に、とかは聞いてもいい?」
言いたくなかった、けど。丁寧に応対してくれている阿部にそういうことはしたくなくて。
「…誰にも言いたくなかったんだけど…親身になって聞いてくれてるから、言わないと酷いか」
「べ、別に無理にとは言わないよ!!ただやり直せる方法がないか一緒に考えようとしただけで―」
…ごめん、阿部。俺、また気遣わせちゃった。言わないでいいこと言っちゃったね
「…翔太。渡辺翔太」
その名を出すと、阿部は少しの驚きと、曖昧な空虚を含んだ表情を浮かべていた。
―情けな。改めて自分にそう思った。自分の問題を自分で解決できないからって、人に頼って、困らせて、迷惑をかけて。
…でも、阿部の様子は普通におかしいと思う。
「…阿部?どーした、眠い?」
「…」
「阿部?…ねえ、ねえってば」
そこから少し、阿部はどこか上の空だった。
*
しばらくして。
「阿部…阿部?」
「ぅうわぁっ!!!ごめんボーッとしてた、何だっけ!?!?」
「…別に大した話じゃないけど。部屋着かわいいねって」
阿部をこれ以上困らせたくないから、ちょっとした嘘を吐いたりして。
「そ、そう…??」
「うん。」
「あ、アリガト…??」
「めっちゃカタコトじゃん」
―少しだけ落ち着けたみたいで、嘘も吐けたし笑えた。…阿部も笑ってくれた。
…けど、やっぱり自分は情けなくて。頬を伝う涙を憎く思う。
「…ごめん。もう振り切れたと思ったんだけど」
…ダメだ、情けない自分を人に見せてしまう。涙なんて、もう誰にも見せたくないのに。 …そう思っていたら続けて伝うはずだった雫が拭われる。それも、暖かな指に。
「ごめ…」
「もう謝らないで。ちょっとでもいいから、話してみてよ」
「…やっぱり優しいね、阿部…」
*
どう話したか、なんて覚えてない。あったことをあったように話そうとしたら、取り留めもなく話続けてしまったこと以外、本当に何も。
*
「…そ、っか。」
…あー、気まずそう。来ない方が良かったし言わない方が良かったかなぁ。 また目の辺りがじんわりと熱を帯び始めたから、急いで取り繕う。
「…ごめん、ここに来ることに、特に意味は考えてなかった。帰るよ」
早く立ち去ってしまおう、そうして全て忘れてなかったことにしてしまおう。
そう思って。立ち上がって、部屋の中で乾かしていた上着に手を伸ばした。けど。
唐突に手を掴まれて振り返る。
「―外、寒いでしょ。泊まって行きなよ」
…多分、俺はずっと心のどこかでこの一言を聞きたかったんだと思う。
あたたかな指。 丁寧に乾かして、さらりと揺れる髪。 その髪をカーテンみたいにしてちらつく、凛とした瞳。
…すごく、頼もしくて。
*
「―色々借りちゃった。ごめん」
「謝らないでって言ったでしょー」
「あ、ごめ…ありがとう」
「はーい」
阿部の優しさのあたたかさは、逆にこの胸の奥の冷たさは本物だということを裏付けてるみたいで。…俺が、弱いから。阿部に頼って、迷惑かけて…翔太を悪者みたいにしちゃって…
自己嫌悪感に動悸がする。
「…は、っ…はーっ…」
「大丈夫…じゃないよね。1人の方が良かったら、寝室使ってくれていいよ」
「…気にすんな、大丈夫…1人のが、だめそう…」
そう言えたのは、1人になったら、自分に何をするか分からなかったから。
…でも。いつまでも弱気な姿ばかり見せている訳にもいかない。
…これ以上、阿部に迷惑は掛けられない。
…すると、突然暖かな抱擁を受けた。
「きっと大丈夫だよ、だって舘様だもん。大丈夫、大…」
「…っ」
身体に沿ってぬくもりを感じる。…そのぬくもりが、今は何より幸せで。
「…ごめん、ちょっと幼稚すぎたかな」
後頭部しか見えないから、阿部の表情も見えない。でもその代わり、俺の表情も見えていない。そのことだけが今は救いだ。
俺、どんな顔してるんだろ。
「ありがと…」
…ごめん。 こんなこと思いつくなんて、 俺最低だ。
「…阿部、ごめん。最低なことお願いしてもいい?」
怖くて顔も見れない。
…でも。期待しても、良かったんだよね
「優しく抱いて欲しい」
…そう言ったことは確かだ。
―そこから先は、何も覚えてないけど。
*
翌朝。よく眠れず起きると午前6時前。
お返しと言うには少し的外れかもしれないが、多少の家事をすることにした。勝手にいろいろ触っちゃって悪いけど、 おそらく後で買い足しに行けば良いはず。
朝の冷たい時間を、やわらかな風が通り抜けるように暖かい声が撫でる。
「…おはよう。朝早いね、涼太」
振り返って様子を伺うと、寝癖が凄い阿部。…なんというか、すごくかわいい。
「おはよう。ある物借りて朝ごはん作っちゃった、今日オフだよね?」
「オフだよー…眠いー…ありがとう、一旦顔洗って朝ごはんにしようかな」
「わかった。使った分はメモしたから後で買いに行くよ」
「じゃあその時俺も一緒に行くー」
そう言いながらリビングを後にする背中を見届ける。
*
阿部を代わりみたいにしちゃったこと。翔太の考えを蔑ろにしたこと。…俺の意思が弱いせいで、全部ぐちゃぐちゃにしちゃった。きっと、こんな俺の中身なんて所詮どうしようもなく空虚なんだろう。
「こんな俺で、ごめんなさい…ごめんなさい」
虚空に向かって、意味を成さない懺悔を小さく呟いた。