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キルアと事故💋🫣
休日の午後。
×××の家のリビングには、のんびりした空気が流れていた。
床に座ってゲームを広げるゴン。
ソファの前で、キルアと×××はお菓子を分け合っている。
「それ、オレのだからな」
「えー、もう一個あるでしょ」
「今食うから意味あんだろ」
そう言って、ほぼ同時に手を伸ばした、その瞬間。
――ごつん。
「あ」
「あっ」
勢い余って、顔が近づきすぎて。
💋
一瞬、時間が止まった。
「…………」
キルアの思考が真っ白になる。
(え、今……)
×××も同じく固まったまま、目を見開いている。
次の瞬間。
「うわーーーーー!!」
元気な声が部屋に響いた。
「今の見た!? 見たよね!? 事故チュー!!」
ゴンだった。
「なっ……!!」
「ち、違っ……!!」
二人は同時に飛びのく。
「ちがう! 今のは事故!!」
「手がぶつかっただけだから!!」
必死に弁解する二人を見て、ゴンは腹を抱えて笑う。
「えー? でもさ」
にやにやしながら、二人を交互に見る。
「顔、真っ赤だよ?」
キルアは耳まで真っ赤で、視線を泳がせる。
「……うるせー」
×××も両手で頬を押さえて、小さく俯く。
「……見ないで」
「無理無理。これはからかわれるやつだよ」
ゴンは楽しそうに続ける。
「キルア、今固まってたよね?」
「してねー!」
「×××も目、ぱちぱちしてた!」
「そ、それは……!」
二人とも完全に動揺していて、否定すればするほど怪しい。
ゴンは満足そうに頷いた。
「ま、事故だけどさ」
少しだけ声を落として、にこっと笑う。
「仲良い証拠だよね」
その一言で、二人はさらに赤くなる。
「……もうやめろ」
「……心臓、もたない……」
ソファと床で距離を取ったまま、目も合わせられない二人。
でも、さっき触れた感触が、
頭の片隅からどうしても消えなくて。
ゴンはそんな二人を見ながら、楽しそうに宣言した。
「よーし、今日のネタ決定!」
「忘れろ!!」
「忘れて!!」
声が揃って、ゴンはまた大笑い。
事故だったはずなのに。
からかわれて、照れて、意識して。
その日、二人はずっと――
ちょっと距離が近づくだけで、顔が熱くなってしまうのだった。
事故チューの余韻が消えないまま、
リビングには微妙な沈黙が流れていた。
キルアは壁の方を向いて腕を組み、
×××はソファの端で正座したまま、視線を泳がせている。
(……気まずい……)
その空気を、まったく気にしない声がぶち壊した。
「ねえねえ」
ゴンが悪気ゼロの顔で、ぽんっと手を叩く。
「もう一回やってみたら?」
「「!!!!」」
「なっ……!?!?」
「ゴ、ゴン!!?」
二人同時に振り向く。
キルアは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「なに言ってんだよ!!」
「事故だったって言ってるだろ!!」
×××も慌てて手を振る。
「そ、そうだよ! わざとじゃないし……!」
ゴンはきょとんとした顔で首を傾げる。
「えー? でもさ」
指を折りながら、無邪気に続ける。
「一回目は事故
二回目は確認
三回目で本番、って感じじゃない?」
「そんな段階ねーよ!!」
キルアのツッコミが即飛ぶ。
×××は恥ずかしさの限界で、クッションを抱きしめる。
「もう……! ゴン黙って!」
「えー、だって気になるじゃん」
ゴンはにやにやしながら二人を交互に見る。
「キルア、今×××のこと見れなくなってるし」
「……っ」
「×××もさっきからキルアの方ちらちら見てる」
「見てない!!」
完全に図星だった。
キルアは舌打ちしつつ、視線を逸らしたままぼそっと言う。
「……やるわけねーだろ」
その声が、さっきより少しだけ小さい。
ゴンはそれを聞いて、ふふっと笑う。
「じゃあさ」
少し身を乗り出して、追撃。
「もし二人きりだったら?」
沈黙。
キルアの耳が、ゆっくり赤くなる。
×××も、言葉を探すみたいに口を開いては閉じる。
「……ゴン」
キルアが低い声で言う。
「今日中に帰れ」
「えー、照れてる照れてる」
そう言いながらも、ゴンは立ち上がった。
「じゃあさ、俺ちょっと飲み物買ってくるね」
完全にわざとだった。
玄関のドアが閉まる音。
――二人きり。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙の中、
キルアはゆっくり×××の方を見る。
×××も、同じタイミングで視線を上げてしまって。
目が合う。
一瞬で、二人とも顔が熱くなる。
「……さっきの」
キルアが先に口を開く。
「……ゴンの言ったこと」
「う、うん……」
「……気にすんな」
そう言ったくせに、キルアは目を逸らす。
×××は小さく笑った。
「……でも」
「?」
「事故だったけど……嫌じゃなかった」
その言葉に、キルアは完全に固まる。
「……お前」
心臓の音が、うるさい。
そのとき。
「ただいまー!」
ゴンの声が玄関から響いた。
二人は同時に飛びのく。
「なにもしてない!!」
「ほんとに!!」
必死な二人を見て、ゴンは満足そうに笑った。
「うんうん、進展はあったみたいだね」
事故から始まったはずなのに。
ゴンの一言で、
二人の距離は――確実に縮んでしまっていた。
ゴンが戻ってきてからも、三人はそのまま遊び続けていた。
床に広げたカードゲーム。
さっきまでの気まずさは、少しずつ薄れていく。
「次、キルアの番!」
「はいはい」
キルアは前に身を乗り出して、カードを取ろうとした――
その瞬間。
「わっ」
「……!」
足を滑らせて、バランスを崩す。
とっさに手を伸ばしたキルアの手が、
×××の胸に思いっきり当たってしまった。
一瞬。
「…………」
「…………」
時間が止まる。
「……っ!!」
二人同時に飛びのく。
「ご、ごめっ……!!」
「だ、大丈夫……!!」
キルアの顔は一気に真っ赤。
×××も耳まで赤くなって、視線を泳がせる。
(ちが……今のは事故……!)
(わかってるけど……心臓……)
その空気を、見逃さない人物が一人。
「……あ」
ゴンだった。
一拍置いてから、にっこにこの笑顔。
「キルア、今日なんか積極的じゃない?」
「なっ!!?」
「ち、違う!! 今のは完全に事故!!」
×××も慌てて頷く。
「ほ、本当に転んだだけだから……!」
ゴンは肩をすくめながら、楽しそうに言う。
「わかってるよ〜。事故、事故」
でも、目は完全にからかいモード。
「でもさ」
二人を交互に見て、にやっと笑う。
「事故チューして、事故で距離縮まって、
事故で手も伸びちゃうって――」
「だから事故だって言ってんだろ!!」
キルアは顔を覆う。
×××も両手で頬を押さえて、声が小さくなる。
「……ゴン……」
「いやー、仲良しだなって思って」
ゴンは満足そうに頷いた。
「二人とも、顔赤いし」
否定できない。
キルアはそっぽを向きながら、ぼそっと言う。
「……ほんとに、わざとじゃねーからな」
「……うん、知ってる」
その短いやり取りだけで、
また二人とも照れてしまう。
ゴンはそれを見て、笑いながら宣言した。
「今日、からかいがいありすぎ」
「やめろ!!」
「もう!!」
声が揃って、ゴンは大笑い。
事故ばかりなのに、
そのたびに距離が縮んで、意識して。
甘くて、恥ずかしくて、
でもちょっと幸せな休日は――
まだまだ終わりそうになかった。
夜。
ベッドに転がったキルアは、天井を見つめたまま腕を組んでいた。
(……最悪だろ、今日)
目を閉じた瞬間、昼間の出来事が一気に蘇る。
事故チュー。
転んで、慌てて、手を伸ばして――
あの一瞬。
「……はぁ……」
枕に顔を埋める。
(×××、絶対びっくりしたよな……)
わざとじゃなかった。
本当に事故だった。
それなのに。
(なんでオレ、あんなことまで思い出してんだよ……)
手に残った感覚を、思い出そうとしてしまう。
触れたのはほんの一瞬。
でも、あったかくて、
想像より存在感があって。
(……だめだろ)
自分で自分にツッコミを入れる。
(反省しろ。謝れ。変なこと考えるな)
なのに、頭は言うことを聞かない。
(……柔らかかった、とか)
(……思ったよりしっかりしてた、とか)
「……っ!!」
キルアは勢いよく起き上がる。
「オレ何考えてんだよ!!」
布団を握りしめて、耳まで真っ赤。
(×××に申し訳なさすぎる……)
顔を思い出す。
驚いた表情。
それでもすぐ「大丈夫」って言った声。
(……優しすぎだろ)
胸の奥が、ちくっとする。
(ちゃんと謝らねーと)
そう決意する一方で、
なぜか同時に思ってしまう。
(……嫌がってなかった、よな?)
その考えに気づいた瞬間、また自己嫌悪。
「……ほんと、最低」
そう呟きながら、布団に倒れ込む。
でも。
(……でも)
(近くにいたとき、ドキドキしたのも本当で)
(意識するなって方が無理だろ……)
結局、答えは出ないまま。
キルアは布団を引き寄せて、小さく息を吐いた。
(……明日、ちゃんと顔見て話せるか?)
不安と反省と、
どうしようもないドキドキを抱えたまま。
キルアの一人反省会は、
なかなか終わりそうになかった。
次の日の朝。
教室に入ったキルアは、昨日より明らかに落ち着きがなかった。
(……普通に話せるか?)
視線を上げると、×××が友達と話している。
表情はいつも通りで、怒っている様子は――ない。
それが逆に緊張する。
席に着いた直後。
「おはよー!」
ゴンがいつものテンションで割り込んできた。
「ねえねえキルア、昨日の反省会どうだった?」
「はぁ!?」
いきなりの追撃。
「してねーし!!」
×××がその声を聞いて、くるっと振り返る。
「反省会?」
「……っ」
キルアが言葉に詰まる前に、ゴンがにやっと笑う。
「昨日さ、キルア事故多すぎだったから」
「ちょっと積極的すぎるよね〜?」
完全に煽り。
キルアは机に突っ伏す。
「お前ほんと黙れ……」
すると。
「ふふ」
×××が小さく笑った。
「私は別に怒ってないよ?」
キルアが顔を上げる。
「……え」
「だって事故だったし」
そう言いながら、一歩キルアに近づく。
そして、少しだけ声を落として――
「それに」
にこっと笑って。
「キルア、えっち〜」
「!!!!?」
一瞬でキルアの思考が停止する。
「なっ……!!」
耳まで真っ赤。
ゴンはその反応を見て、吹き出した。
「うわ、逆にからかわれてる!」
「×××強い!」
「ち、ちが……!!」
キルアは必死に否定するが、×××は楽しそうだ。
「だってさ」
「昨日ずっと目そらしてたし」
「今日も顔赤いし」
「わかりやすいんだもん」
「……っ」
ゴンが腕を組んで頷く。
「確かに。キルア、今日ずっと挙動不審」
「お前ら……!」
×××はくすっと笑って、少しだけ声をやわらかくする。
「でも大丈夫」
「ちゃんと分かってるから」
その一言で、キルアの胸が少し軽くなる。
(……ずるい)
ゴンは満足そうに言った。
「はいはい、今日も仲良しで何より」
「授業始まるよ〜?」
三人並んで席に着く。
キルアはノートを開きながら、ぼそっと呟いた。
「……もうからかうな」
×××は小さく答える。
「やだ」
ゴンは即ツッコミ。
「即答!」
二人の間に流れる空気は、
昨日の気まずさとは違って――
少しだけ甘くて、少しだけ照れる。
キルアは思う。
(……怒ってなくて、よかった)
でも同時に。
(……これ、しばらくネタにされるな)
案の定、後ろからゴンの声。
「昼休みも楽しみだね〜」
「やめろ!!」
声が揃って、また照れる。
――そんな、いつもより賑やかな一日が始まった。
to be continued….