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結構真剣に考えた
初にじさんじen作品
連鎖開始
「風が冷たい」
静かな公園に俺の声だけが聞こえる。誰もいないそれだけが今の事実。
俺はベンチに腰を下ろして、吐く息をただぼんやりと眺めていた。
帰る場所がないわけじゃない。ただ、“帰りたい場所”がなかった。
だから、こうして静かな公園に一人。
どれくらいの時間がたったのだろう。
1人の男が何も言わず、俺の隣に座った。
「…寒くない?」
何も言えなかった。それは溢れてしまいそうで。
「そっか…風、冷たいね」
それ以上何も言わずに、ただ二人で夜空を眺めた。
彼の声は落ち着く声だった。
隣に人がいるだけで風の冷たさもマシになった気がした。
ふと、視線がこっちに向けられた。目が合った。
「…浮奇、浮奇ヴィオレタ。君は?」
どうしても声が出なかった。下を向いてしまった。
遠くで車の音が聞こえる。まだ俺を見つめる浮奇さん。
「…ルカ」
ようやく出た言葉はこれだけだった。
「いい名前だね」
そう言ってまだ空を見あげた。
何もしてないし、名前しか知らない。
けど、今は彼といたいと思った。
立ち上がった浮奇さん。俺は見あげた。
「このままだと、冷えちゃう。無理にとは言わないけど…」
「…お願いします」
浮奇さんは柔らかい表情を見せた。頬が緩んだ気がした。
「うん」
浮奇さんが歩き出した。俺は立ち上がった。けれど、その1歩があまりにも大きく感じて、歩き出せなかった。
先に歩いていた浮奇さんが振り返って俺を見る。
「ルカ」
責める訳でも、尋ねる訳でもない。
ただ一言俺の名前を呼んだ。
その声に導かれる様に歩き出した。
気付けば小さく駆け出していた。
浮奇さんは、隣にいるのにどこか遠く感じて、俺より小さいのに大きく感じた。
住宅街には公園とは違う夜があった。音一つない静寂、少し明かりの漏れる窓。
さっきと違うのは、
風がぬるく感じた。
ある角を曲がった時、浮奇さんは足を止めた。
落ち着いた雰囲気の一軒家がそこにあった。
浮奇さんが鍵を取り出そうとした時、内側からドアが開いた。
「おかえり、ウキキ」
そう言って、彼は俺たちを玄関へ招き入れた。
「ふーちゃん、起きてたの?」
「もちろんさ、彼は?」
彼と目が合う。俺は何も言えなかった。
ただ目の前の事実に驚いていた。
「…ちょっと寒かったから」
「そうか」
彼は優しく微笑んで俺の前に手を差し出した。
「ファルガーだ」
俺はその手を握って、ただ呟いた。
「…ルカ、です」
「ルカ…いい名前だな、入ろうかここも冷える」