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俺はシロを連れて冒険者ギルドを出ると一旦家にもどってきた。
そこでヨーラン村に行く事や、帰りが明後日になる事などをカイアさんに伝えあらためて出立した。
町の南門を出た俺達は街道をそのまま南下していく。
マギ村を過ぎれば街道には馬車や人の姿はほとんど見られなくなる。
飛ばせば一刻 (2時間) も掛からず到着できるだろう。
だけど今日は天気も良いし、シロとのんびり歩いていくことにした。
シロもお散歩気分なのかブンブン尻尾を振って楽しそうだ。
それでも夕方前にはヨーラン村へ到着した。
(ここに来るのも久しぶりだなぁ)
こちらに転生して初めて寄った村である。ここの宿屋も含めて印象に残っていた。
まずは村長の所にいって挨拶した後は、状況確認をおこなっていく。
なんでも、5日ほど前からこの村ではゴブリンが出没するようになったという。
村では小麦のほか町に卸す野菜なども作っているのだが、出荷をひかえている野菜畑を荒らしていくのでとても困っているそうだ。
ゴブリンの出没する時間帯は夕方から夜にかけてで、このところは毎晩きまってやってくるそうだ。
数も申告されている20匹前後であるという。
最後に荒らされた畑の場所を聞いて、俺たちは村長宅を離れた。
さてさて、今夜もうまく出て来てくれるといいのだが……。
とりあえずはこの前泊った宿屋に顔を出し、夕食にお肉とシチューを二人前頼んでおいた。
すると宿屋の女将さんが俺たちことを覚えていたようで、
「おや、今日は一人なのかい?」
「今回は冒険者として来ていますので」
「あぁ、ゴブリンどもだねぇ。困ってるみたいだからしっかり頼むよ」
「はい、任せておいてください!」
「夜になると思うから気をつけるんだよ」
こうしたさり気ないやり取りであったが、知り合いが増えていくのは嬉しいものだ。
その後は村をひとまわりして簡単に地形をチェックし、早めに夕食を頂いた。
食事を終えて表に出てきた俺とシロは、村の畑が見通せる場所を探して陣取る。
――もちろん風下にだ。
………………
夜になり、少し肌寒くなってきたが待ち伏せをしているので火は起こせない。
俺はシロにくっつくと一緒に毛布を巻き付け暖をとる。
シロが湯たんぽみたいで暖かいのだ。
『いっしょ、うれしい、まつ、あそぶ、おにく、ぬくい』
シロが念話で伝えてくる。
「俺も一緒にぬくぬくで嬉しいぞ」
それからというもの、毛布から顔だけ出してひたすら待つ。……じっと待つ。
すると夜半前にシロが反応した。(0時前)
『きた、いっぱい、やる、くさい、はたけ、あそぶ』
そうか、ようやく来たか!
下手に魔法を使うと村や畑に被害が出るかもしれない。
仕方がないので剣でいくことにした。
「シロ、魔法は使うな。爪でいけ」
小声で伝えるとシロは頷いている。
よし、行こう!
俺はかぶっていた毛布をインベントリーに回収、身体強化を掛けゴブリン共の後ろに躍りでた!
「…………あれ?」
しかし、奴らは俺たちに気付かない。魔獣のくせに鈍すぎるだろう。
はぁ~、ため息を吐きながら夜空に浮かぶ二つ月を見上げる。
そしてポンポンとゴブリン共の首を刎ねていった。
ものの5分程で戦闘は…… いや、これって戦闘と呼べるのか? 全く手ごたえがなかった。
これならシロの手はいらなかったよね。
まぁ、依頼は依頼だからね。
朝になったので数を確認するとゴブリンは26匹もいた。村長に報告し確認してもらうと、
「こんなにたくさん居たんですか? さぞ大変だったことでしょう。申し訳ございません!」
「えっ、まぁ、何とか……な。 次回からは魔獣の数をしっかりと確認しておいて頂きたい」
「そ、そうですね。これからは気をつけたいと思います」
「それで、今夜まで確認した方が良いですか?」
「いえいえ、これだけ狩って頂いたのですから例え残っていたとしても1~2匹でしょう。あとは村で何とかなります」
そう言って、追加分の報酬と共に依頼書にサインをしてくれた。
「じゃあ、これらの後処理をして帰ります」
「では宜しく」
村長は去っていった。
俺は討伐部位である右耳を切り取りトイレの葉っぱで包むと、さらに布袋に入れてからインベントリーへ収納した。
うん、ゴブリンは臭くてばっちいからね。
ゴブリンの骸はシロに頼んで焼却処分したのち灰を土に埋めた。
これにて今回の依頼は無事に終了。
さーて1日浮いたなぁ。マクベさんには明日帰るといってある。
帰り道だし、今夜はガンツを誘って酒でも飲むとするか。
てことは夕方までにマギ村につければいいんだよな。
それなら今日はシロが大好きな川遊びに付きあってあげよう。
俺とシロはヨーラン村を出発すると街道沿いを流れる川へと向かった。
すると程なく川が見えてきたので、
「今日は時間もあるしゆっくりできるから、すきなだけ泳いできていいぞー」
「ワン!」
シロは尻尾を振りながら大喜びで川に突撃していった。
そして俺は川べりの木陰に腰を下ろし、気持ち良さそうに泳いでいるシロを見守るのだった。
そうして、しばらくぼ~と川の流れを眺めていた。
………………
すると、ふいに魔法のアイデアが頭に浮かんできた。
橋は作れないのだろうか? ……結界魔法で。
ヒントは、印を切るあのアニメだ。(結界師)
滅することは無理だろうが、結界の上には乗れるんじゃね?
立方体の方が強度が上がるのか? そもそも結界自体を浮かすことが出来るのか?
何かそんなことを考えていると、だんだん楽しくなってきたぞ。
この前の森では救助した女性に結界魔法を掛けて、その場を離れていたよな?
とすると、そこに置く感じでいいのか? それとも座標で管理するのか?
う~ん。う~ん。俺がひとりで唸っていると、
それを心配したのだろうか、川から上ったシロがこちらに近寄ってきた。
「おぅシロ、もういいのか?」
「クゥ~ン?」
シロは心配そうに鳴いた。
「なんだぁシロ、心配してくれたのか? ありがとなぁ」
まだ濡れているシロの頭をやさしく撫でてやる。
せっかく来てくれたので、さっきの考えを伝えてみることにした。
「シロ、結界魔法があるだろう。あれで川に橋を架けたり出来るんじゃないかって思ったんだよ」
シロを見ると首を傾げて『そんなこと出来るの~?』って仕草だ。
「じゃあ、一緒にやってみるか?」
それを聞いたシロはブンブン尻尾を振ってとても嬉しそうだ。
俺と一緒に何かをする事はシロにとって喜びでもあり楽しいことなんだろう。
ホントに可愛いやつだ。
いつものようにシロの頭に手を乗せ理解できるようにイメージを固めていく。
「どうだシロ、いけそうか?」
『できる、あそぶ、わたる、いっしょ、たのしい、わかる』
そうか、ではやってみよう。
俺は左手をシロの背にのせ右掌を川に向けて叫んだ。
「――結界!」
すると……、これって出来ているよねぇ?
人の目には映らない魔法の橋が川に掛かっている。
魔力操作のレベルが高い者でないとこの橋を視認することは難しいだろうが。
シロを連れて橋のたもとまで行き、石橋を叩くように結界魔法で作った橋を足でバシバシと叩いてみる。
おお~、ビクともしないなぁ。かなり頑丈に出来ているようだ。
よっしゃ、渡ってみるか!
シロを連れて向こう岸まで渡ってみた。
何も問題なく渡れた。凄い!
「やったぞシロ、凄いぞー!」
俺はその場で膝を突き、シロを両手でわしゃわしゃともふり倒してやった。
あまりの感動と嬉しさに確認することを忘れていたが、
俺のステータスにはしっかりと結界魔法が生えていた。