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青さんが4人からも好意を寄せられているお話は激レアですね…✨✨ 水さん白さんが点数超えないのは想像できます…ꉂ🤭︎💕 青さんの気怠げそうな雰囲気が文章からじわじわ伝わってきます…煙草吸う教師なのは予想外過ぎました!! 青さんの絶対的な桃さんから揺るがない気持ちに心打たれましたඉ_ඉ あおば様の青桃作品にはいつも癒されてばかりです😖😖🎶
投稿ありがとうございます✨通知きた瞬間飛び付いて見てしまいました。 自信たっぷりの青さんとちょっと余裕のない桃さんが可愛すぎました。解釈一致過ぎます!! お忙しいなかだとは思いますが、たくさん投稿してくれてありがたいです。 これからも頑張ってください✨応援してます!!
【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
「学〇崩壊~」のパロ?と言えるか分かりませんが、学パロです。
教師の青さんに片想いする子供組(赤→青、水→青、白→青)と、教師同士の青桃のお話。
白視点→赤視点→桃視点
「お前らさぁ、この前俺に何て言うた?」
狭い狭い進路指導室。
座らされた椅子に深く腰かけ姿勢を若干崩した僕と、隣で膝に両手を乗せて態度だけは百点満点のいむくん。
その前には、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせてこちらを見据える人相最悪の教師が一人。
進路指導役を兼ねた英語教師で、最近ではこの部屋の住人かのように居座っている。
長すぎる足を尊大に組み、太ももの上辺りで頬杖をついていた。
もう片方の指が銀縁の眼鏡の位置を直したかと思うと、そのまま前髪を掻き上げる。
不機嫌を露わにしたような吐息まじりのその仕草すら、ほんまに教師なん?と問われても仕方ないくらいの色気がある。
恐らく本人は無自覚なんだろう。
黒い細身のスラックスの上は青いベスト。
ワイシャツの第二ボタンまで緩めて外されているのは、罪深さすら感じられる。
「何か言ったっけ」
僕が何か答えるよりも早く、いむくんが小さく首を傾げながら目の前のまろちゃんに問い返した。
途端にまろちゃんの目がギラリと鋭さを増したのが分かる。
身を縮めるかと思ったけれど、いむくんは素知らぬ顔で目の前の青を見つめ返していた。
「『今度のテストで本気出す!80点超えたらご褒美ちょうだい!』って言うとったよなぁ!?」
2週間前のいむくんの言葉をきれいに復唱した後、まろちゃんは語尾を少し荒げて言う。
そして近くの机から、用意されていたらしい紙を2枚ぴらりとこちらに示した。
今日出たばかりのテスト全教科分の個人成績表。
まろちゃん担当教科の英語の部分には、真っ赤な〇がつけられている。
「言ったけどさ、何でそんなに怒ってんの? 僕らが80点いかなかくてご褒美与えなくてよくなったんだから、いふくんが怒る理由なくない?」
さらりと何でもないことのように反論するいむくんは、相当度胸のあるコミュ強やと思う。
…そういうことじゃないよな、と思った瞬間、目の前のまろちゃんが「そういうことちゃうやろ!?」と思った通りの言葉を続けた。
「お前らほんまに勉強した!? 80点を条件にするからにはそれ相応の努力をするべきやろ!? ほとけ31点、しょう22点…どう考えても人に条件提示できる立場ちゃうやろ、お前ら!」
あと「くん」づけで呼ぶな!「先生」つけろ!なんて、まろちゃんは喚くように言う。
スタイリッシュでインテリジェンスな見た目がもったいないくらいに荒げた声が、室内に響き渡った。
「ご褒美ちょうだいって言った僕らに80点を条件にしたのはいふくんの方じゃん。どうせ僕らに取れるわけないと思って提示したんでしょ?」
「いや、そうやとしても普通もうちょっと努力するやろ! 無理やと思われとったような条件もクリアしてくるもんやろ高校生は!」
「そんな漫画の主人公みたいなこと現実に起こるわけないじゃん。ないちゃんに影響されて漫画読みすぎなんじゃない?」
ぷーくすくす、なんて煽るように笑ういむくん。
そんな煽りに、まろちゃんが手にした紙をぐしゃりと握りつぶしかけて寸でで思いとどまったのが見て分かった。
「とにかく、お前ら夏休み補講やからな」
「えーなんで!」
「赤点取っといて偉そうに文句言うな! 以上! 解散!!」
「人を呼んでおいて勝手に解散させないでよー」
ぶつぶつと文句を言いながらも、いむくんはガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
それに続くように立って、僕たちは連れ立ってその部屋を後にした。
「あともうちょっとだったんだけどなー」
進路指導室を出て長い廊下を歩いていると、隣でいむくんは「うーん」と伸びをしながらそんな言葉を口にした。
「え、もうちょっとって…点数のこと?」
どう考えてももうちょっとじゃないやろ。
人のことを言えた立場ではないけれど、そう言うといむくんは唇を尖らせながらこちらを振り返った。
「ねぇ、しょうちゃんは点数クリアしたら何をご褒美にもらうつもりだったの?」
尋ねられて、「そうやなぁ」と間延びした声を返す。
いむくんがまろちゃんに出した提案に乗りはしたけれど、正直そこまで具体的に考えていたわけではなかった。
何か物が欲しいわけでもなかったから。
どうせ本当に欲しいものは手に入らないと、僕もいむくんも知っている。
それならせめてと、一瞬でもあの青い瞳が自分だけを映す時間が欲しかっただけかもしれない。
そう思えば、呼び出されてあの目が自分を見据えて説教してくる今の状況は、この現段階では一番自分の希望に近いのかもしれない。
いむくんも同じことを考えたのか、「まぁいいや、次だね、次」と来月また訪れる実力テストを思い浮かべたらしかった。
きっと頭の中では次こそ勉強を頑張ろうという決意より、どうやってまろちゃんにご褒美のハードルを下げさせるかの作戦を練り始めているに違いない。
「今回はしょうがないから、りうちゃんに譲ってあげる」
さっき出てきたばかりの進路指導室を肩越しに振り返って、いむくんは「ね」と同意を求めるように僕を見た。
「お前は呼んでないけど」
いむとしょうちゃんが出ていったその部屋は、さっきまでの喧騒が嘘のように静かだった。
まろと俺しか残されていないその空間。
話は終わったとでも言うように立ち上がり、まろは広げていた資料を机の上で揃えて片付け始める。
「むしろりうらが呼ばれてないことがおかしいと思うんだけど」
言いながら、俺はこの前返された英語のテストをまろに突きつけた。
名前の横にある点数の欄には80点の朱字。まろの几帳面な性格が表れた字で丁寧に書かれている。
「何でもご褒美くれるって言ったよね」
80点以上だったら何でもご褒美をくれる…いむがまろに出した条件に横から乗っかったのはしょうちゃんだけじゃなかった。
細い腰に手を当てて、それを捻るようにしてまろはこちらを振り返る。
それからわざとらしく大きな吐息を漏らしたようだった。
「……何が欲しいん」
譲歩したようなまろの言葉に、一歩そのテリトリーに踏み入ることを許された気がする。
上履きのかかとをきゅっと鳴らして、ゆっくりとその間合いを詰めた。
机に片手を突き、まろは黙したまま近寄ってくる俺をただ見据えている。
その青い目が、今は自分だけを映している。
その事実に胸が一度ふるりと震えた気がした。
多分、いむもしょうちゃんも同じ気持ちなんだろう。
この目が自分だけを捕える瞬間があったらいいのに、と。
「……」
詰めた互いの間の距離。
すぐ目の前まで行って、その整った顔を見上げる。
10センチ近く俺より背が高いまろは、それでも猫背なせいか実際よりは身長差を感じさせない。
少し前かがみな態勢のその頬に、そっと手を伸ばした。
逃げるつもりも拒むつもりもないのか、まろは微動だにしなかった。
…なに、本当に生徒に言われるがままにご褒美でもくれるつもり?
教師の鑑というべきか…皮肉をこめてそんなことを思ったとき、自分で近づけた唇がまろのそれに重なりかけた。
だけどその瞬間、目の前のまろの目がすっと斜め下にずらされたのが分かった。
「…あー」
小さく声を這わせるものだから、思わずぴたりと俺は動きを止める。
至近距離で止まった俺の目の前で、まろは俺の手元に目線を送った。
さっき一度突きつけた英語の答案用紙だ。
「採点ミスみっけ」
ふっと鼻で笑うような呟きを漏らし、まろは触れ合いそうだった唇の端を持ち上げる。
思わず見開いた目で見つめ返すと、手にした用紙を見るように顎で指し示された。
それから、まろは問3のとある解答をちょいちょいと指さす。
「スペルミス。eやなくてaやな、ここは」
一度は〇がつけられているその答え。
胸ポケットに入れていたらしい赤いペンを出し、まろは俺から答案用紙を取り上げる。
〇を二重線で消して、その脇に大きめの✕を書き直した。
「ざーんねん、79点な」
眼鏡の奥の目が細められ、まろはおかしそうに笑ってそう言う。
目を瞠ったままその一連の動作を見つめていた俺は、次の瞬間大きく肩を上下させて盛大な吐息を漏らした。
「ないこせんせーさよならー」
「はい気をつけて」
すれ違いざまに挨拶を投げてくる生徒たちに、こちらも軽く声を返す。
放課後になり部活へ繰り出す生徒もいれば、意気揚々と下校していく生徒もいる。
その昇降口の方へ流れる人波の中にある2人組を見つけ、俺はその首根っこをぐいと掴んだ。
学ランの下に着込んだ白色のパーカーのフードが揺れる。
「いむしょー、待った」
「!? なにないちゃん…!苦しいやん」
掴まれた首を後ろに引かれ、驚いた初兎は振り向きざまに俺を視界に捉えた。
隣でいむも目を丸くしている。
「お前ら進路指導室に呼び出されてたよな? いふ先生は?」
尋ねた俺に、2人は互いの顔を見合わせた。
それから同じ向きにこてんと首を傾ける。タイミングまで同時だ。…双子か。
「すぐ終わったよ。テストの点がちょっとだけ条件に満たなくてさ。『次はがんばれよ』って言われて終わっただけ」
饒舌に説明するいむの隣で、初兎ちゃんが一瞬妙な顔をしたのが分かった。
どうやらかなり話が脚色されているらしい。
「条件?」
なんの?と聞き返すと、いむはにやりと笑ってみせる。
「80点取れたら何でもご褒美くれる、って」
「……で、あと何点くらい足りなかったわけ?」
「まぁざっと50点くらいかな」
悪びれもせず平然と答えるものだから、思わず声を上げて笑ってしまった。
まろが声を荒げて説教しただろうことが想像できる。
「ないちゃんは? いふくんに用事?」
改めて問われて、「あぁうん」と頷く。
それから片方の腕に抱えた機械を顎で示した。
「明日会議で使う機材、視聴覚室から運ばなきゃいけなかったんだけどさ。お前らの進路指導終わったら手伝ってくれるって言ってたのに全然来ないから。おかげで一人で3往復したわ」
「手伝おうか?」
すかさずそう口にする初兎ちゃんに、俺は小さく首を振った。
「これで最後だから大丈夫、ありがとう。それより寄り道しないで帰れよー」
「高校生に『寄り道しないで帰れ』は無理だよないちゃん」
あははと楽しそうに笑ったいむが、初兎を促して「じゃあねばいばーい」とこちらに手を振る。
軽快に去っていく2人の後ろ姿を見送って、俺も廊下を再び歩き出した。
職員室は隣の棟の2階にあるから、まず階段を上がらなくてはいけない。
それから渡り廊下を通ってあちらの校舎に入る。
…そんな道筋を思い浮かべながら歩いているうちに、ふととある部屋の前で足を止めた。
こちら側の校舎の2階は、あまり人の気配がない。
生徒が日常的に使う教室はほとんどないし、各教科専用の特別教室が多いから今みたいな時間帯は静かなものだ。
その中でも、俺が今足を止めた目の前の部屋は、そもそも使われているのをあまり見たことがない。
「資料室」ドアの上側に提げられたプレートは埃をかぶっているのか少し黒ずんでいるようにも見える。
……そうか、ここか。そう思って、ノックも何もなく扉を引いた。
本来なら鍵がかかって開かないはずのそれは、何の抵抗もなくキィと音を立てる。
開いて一歩踏み入った瞬間に、予想通り独特の香りが嗅覚を刺激した。
それを確認して、俺は中に入ってすぐに後ろ手にドアを閉める。
「やっぱりここにいた、不良教師め」
目を細めて資料室の奥に視線をやると、窓側に立って外を眺めていたらしいまろがゆっくりとこちらを振り返った。
壁に背を預け、投げ出すようにした足を組んでいる。
その手には学校なんかで見せていいものじゃないはずの、「煙草」。
たまにこの部屋で人知れず吸っているのを知っている。
「…あ、ないこの顔見て思い出した。視聴覚室から運ぶ物あったんやっけ」
「もう終わったよ。待っててもお前全然来ねぇんだもん」
「んはは、ごめん」
カチャリと中から鍵をかける。一応だ、一応。
生徒や他の教師がこんな部屋を訪れるとは思えないけれど、隠れて煙草なんて吸ってる不良教師の姿を見られる可能性は一つでも摘んでおいたほうがいい。
そう思って鍵をかけてから、俺はまろの方へ近寄った。
「俺がまろに頼みごとしてたとき、ちょうど学年主任の教師が割って入ってきたじゃん。だから話が流れちゃって、きっとまろにはきちんと伝わらなかっただろうなとは思ってたから」
「ごめんごめん」
心がこもっているのかどうか怪しい口調で謝り、まろは煙草を咥えた。
大きく吸うと肺までため込み、それからゆっくりと細く長く息を吐き出す。
普段絶対誰にも見せない、この寂れた資料室でしか見られない姿。
体に悪いからやめろと口では日頃から言っているけれど、こんな職についているとストレス発散したくなる気持ちも分かる。
あえて健康を害するようなものに走ってしまう気持ちも分からなくはない。
「さっきいむしょーに会った。なんなん、80点でご褒美って」
「知らんよ。勝手にあいつらが言い出したことやもん」
ポケットの中から取り出した携帯灰皿。
そこに吸っていた煙草を押し付けて、まろは火を消した。
じゅっと小さな音がしたかと思うと、ふわりと最後の煙の匂いが俺の鼻を抜けて脳を掠めていく。
「まぁでも、かわいいよな高校生って。『ご褒美くれ』って…小学生かっつーの」
揶揄するような口調ではあるけれど、まろのその言葉に嫌悪のようなものは含まれない。
バカな子ほどかわいいっていう言葉があるくらいだ。
きっといむしょーのこともあしらいながらもそれなりにかわいがっているはずだ。
「……お前いつか足元掬われそう、あいつらに」
「まだ子供」「まだかわいい」なんて思ってるうちに、急に成長した子供たちに形勢逆転されるくらいありそうだ。
そもそもまろだって知ってるくせに。あいつらがどんな目でお前を見ているのかってことくらい。
そう思って告げると、まろは意外にも「…あー」と小さく理解を示すような声を漏らした。
「りうらは危なかったな、ぎりぎりご褒美回避したけど」
「りうら!? あいつもそのご褒美制度に参加してんの!?」
「惜しかったなーあと1点やったんやけどな」
眼鏡の奥の目を細めて笑うまろ。
その目に何か嫌な予感が胸をよぎった。
「……何かあったな?」
確信に似た思いでじと目で尋ねたけれど、まろは慌てふためくこともなく口角を上げて余裕の笑みを見せるばかりだ。
「未遂未遂」
「『未遂』!? ほらやっぱり足元掬われそうになってんじゃん!」
「次は90点ボーダーにしといた方がえぇかもな。りうらだけはほんまに超えてきそう」
んはははは、なんて楽しそうに笑うまろに、呆れたため息しか出てこない。
りうらなら…いやいむしょーだって、いつか本気を出したら90点を超えてくるくらいやってのけそうなものだ。
俺らみたいな年の大人からしたら、若さってやつは本当に限界を知らないから怖い。
それでもまろが焦る様子もなくあいつらに好き勝手させておける理由を、俺は知ってる。
そして俺にこんな話を何でもないことのようにしてくる理由も。
「…お前、本当に俺のこと好きだよな」
小さく呟いて、隣に並んだ。
同じように壁に背を預けると、ピンクのカーディガン越しにもひやりとした感覚が伝わってくる。
分かってるよ。
お前が子供たちに好き勝手させて野放しにしておけるのは、自分の気持ちが絶対に揺るがないって分かってるからだよな。
動かされることも揺さぶられることもない確固たる思い。
それが自分に向いているという自覚も、俺の中には確かにある。
「ところでまろ、ご褒美欲しがるのは子供だけじゃないんですけど」
少しだけ前かがみになりながら、隣の青い瞳を覗き込む。
眼鏡の奥のそれがこちらを捕え返したかと思うと、無言で言葉の先を促された。
「視聴覚室から3往復して機材運んでー、だるいし腕痛いし最悪。俺めっちゃ頑張った今日」
わざとらしく子供じみた声と口調で言うと、隣から長い腕が伸びてくる。
くしゃくしゃと俺のピンク色の髪を掻き回し、「はいはいえらいえらい」なんて適当にあしらうような言い方で、労いにもならないような言葉を寄越された。
…そうじゃないだろ。
今時高校生だって頭撫でられたくらいじゃ喜ばねぇわ。
むっと唇を尖らせて、俺もまろの方へ手を伸ばす。
第2ボタンまで開いたシャツをぐっと掴むと、そのまま引き寄せるようにキスをした。
重ね合わせた唇から感じるまろの口内に残された煙草の残り香に、頭がくらくらする。
互いに舌を絡ませて、そんなキスに溺れるように目を伏せた。