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「さっくん、ここ?」
朔太郎が車を走らせること約一時間、辿り着いた先は市外の高台にある公園の駐車場だった。
陽も暮れて薄暗くなっている時間帯だからか、駐車場に停まっている車は数える程しかなく、静寂に包まれた駐車場内。
「そ。とりあえず外に出ようぜ」
「あ、うん」
朔太郎に言われるがまま車を降りる事になった咲結は、ちょっと拍子抜けしていた。
(ここが、とっておきの場所?)
とっておきというくらいだから何か見所のある場所なのかと思いきや、何の変哲もない公園の駐車場なのだから、そう思うのも無理は無い。
不思議に思いながらも朔太郎に続いて少し歩いて行くと、
「うん、陽が暮れてきたから良い感じになったな。咲結、ここからの見晴らしは結構良いだろ?」
自販機やベンチが近くにあって景色が一望出来る柵の前辺りにやって来た朔太郎が声を掛け、その声で顔を上げて前を向いた咲結は、
「あ、本当だ! 綺麗!」
上から見下ろす街並みと徐々に明かりが灯っていく景色がとても綺麗で思わず声を上げた。
「ここ、今の時期はこの時間になると人も居ねぇから、一人になりたい時とか考え纏めてぇ時に来るんだよ」
「そうなんだ? 確かに、静かだからゆっくり何かを考えるのにいいかも」
「だろ? まあでも、寒いのが難点だけどな」
「確かに、ずっと外に居たら冷えて風邪ひいちゃうかも」
「つーか咲結、そんな格好だし寒いよな。車に戻るか」
「ううん、今はそんなに寒くないから大丈夫! 折角だから、もう少しここに居たいな」
「無理すんなよ?」
「無理なんてしてないよ?」
十月下旬で夕方ともなると、いくらセーターを着ていても短いスカートで制服姿の咲結にとって外は寒そうなものなのだけど、恋の力というのは凄いもので、朔太郎のお気に入りの場所を教えてもらいその場所で二人きりというシチュエーションに心は満たされ、寒空の下だというのに寧ろ体温は上がっているのか寒さはあまり感じていないようだ。
「それならいいけど、つーか今日はどうしたんだよ?」
「え?」
「いきなり会いたいとか言ってきたじゃん?」
「あ……えっと、その……」
朔太郎の質問にどう切り出せばいいか悩む咲結。
(さっくんの事が知りたい……なんていきなり言われても、気持ち悪いかな?)
「咲結?」
「あ、あのね、カフェで一緒だった友達がね、『朔太郎さんってどういう人なの』って聞いてきた時、そういえば私もよく知らないなって思って……それで、出来ればさっくんの事、知りたいなって思ったから……」
悩んだ末、回りくどい事があまり好きではない咲結は思っている事を素直に口にすると、
「俺の事? 別に話す程大したは事ねぇけどなぁ……まあ、知りたい事があるなら何でも聞いてくれよ。つーか、聞いたら咲結も話せよな?」
自分の事を知りたいと言われ慣れていないのか一瞬驚いた様子を見せた朔太郎だが、特にその事に嫌悪感を抱く訳でもなく、何でも聞いてくれと笑いかけながら咲結に返した。