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#不遇職
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ルナ帝国 宮廷の一室の部屋ー
広々とした部屋のベットの上で目を覚ました河邉菜穂は、重い体を起こして窓に近付く。
窓の外から白騎士団の騎士達が、忙しなく警備に励んでいる姿を見て溜め息を吐いてしまう。
「はぁ…、本当に異世界に連れて来られちゃったんだ…。私、これからどうなるんだろ」
コンコンッ。
扉がノックされ、河邉菜穂の体がビクッと反応する。
「菜穂様、おはようございます。身支度の支度をしに参りました」
「あ、はい、どうぞ…」
河邉菜穂の返事を聞いてから、数人のメイド達が部屋に入ってきて、河邉菜穂をドレッサーの前に座らせた。
常務的な言葉で、河邉菜穂の要求を聞いていき、手慣れた手付きで髪をアレンジして行く。
「菜穂様、今日の服は如何なさいますか?」
「あ、えっと…、おまかせで…」
「かしこまりました。それでしたら、こちらは如何ですか?」
そう言って、メイドが河邉菜穂に見せてきたのは、淡いブルーのマーメイドドレスだった。
所々にパールがあしらわれ、背中が大胆に開いたもので、河邉菜穂の目がキラキラと輝き出す。
「凄く綺麗…、これが良いです」
「かしこまりました。こちらのドレスは、我が帝国で1番人気のマダムロザリアのものなんです」
「あの…、と…、いや、ルカリオ様は…」
「皇太子様は執務室におられますよ」
メイドの言葉を聞いた河邉菜穂は、少し頬を赤らめながら口を開く。
「あ、あのっ、着替えが終わったら、会いに行っても良いですか?」
「御案内する事は出来ますが…。皇太子様は、執務室には使用人すら入る事を許されておりません」
「こ、声をかけるだけでも、ダメですか?」
「僕に何か用か」
河邉菜穂達は声のした方に視線を向けると、高級なア
クセサリーを身に纏ったルカリオ・A・オルティスが扉を開けて入って来ていた。
襟足が長いブロンドの髪、前髪はセンターに分けられ、色白の肌に透き通った鼻、長い睫毛の間から見えるエメラルドの瞳。
「こ、皇太子殿下!!?」
メイド達は河邉菜穂の側を離れ、急いでルカリオに深々と頭を下げる。
「ルカリオ様っ、準備が終わったら部屋に行こうと思って…」
「来なくて結構、支度は終わったのか」
「はい…、グロスを塗ったら終わります」
「…、そのドレスはやめろ。魔法省に行くのに、露出の高いドレスはおかしいだろ」
ルカリオは、河邉菜穂が着ていたドレスを見ながら、冷たく言い放つ。
「露出のない服に変えさせろ、僕は食堂に居る。準備が出来たら、連れて来い」
「かしこまりました」
「あっ…」
キイィィ…。
河邉菜穂の顔を見ずに、ルカリオはそそくさと部屋を出て行ってしまう。
「菜穂様、こちらのワンピースに変更致しましょう」
メイドはそう言って、河邉菜穂に見えたワンピースは黒のタートルネックのロングワンピースだった。
「シンプルなワンピースですので、ネックレスは少し華やかな物にしましょう」
「分かりました」
パチンッ。
浮かない顔をしたまま、河邉菜穂は着ていたドレスをホックを外した。
***
河邉菜穂の部屋を出たルカリオは、眼鏡を掛けた中年の男に向かって口を開く。
「おい、アズバルト。マダムロザリアのドレスは、あの女に着せるな。あのドレスは、あの子の為に用意した物なんだから」
「かしこまりました、ルカリオ様。朝食の方は如何なさいますか?菜穂様とご一緒に食べれるよう、準備は出来ておりますが」
アズバルトの言葉を聞いたルカリオは、冷たい眼差しを向けながら言葉を吐く。
「食事は良い、会食以外で人と食事をする必要はない。あの女に朝食は取らせておけ、僕は執務室に戻る」
「か、かしこまりました」
「いつでも出発できるように、馬車の準備はしておいてくれ」
ルカリオはそう言って、河邉菜穂の部屋を後にした。
***
甘野芣婭(17歳)
朝食を済ませた芣婭達は、シュバルトお兄さんが働いている魔法省に向かっていた。
ニックスとレヴァさんは馬に乗って、芣婭達が乗っている馬車の後ろを走ってる。
「魔法省って、どこにあるの?すぐ近く?」
「いや、上部街にあるよ。皇族がすぐに行けるようにと、何年か前の皇帝が建ててくださったんだ」
「上部街?」
「芣婭さんには、ルナ帝国の事を少し教えておこうかな。ルナ帝国には上部街・中部街・下部街と3つに国が区切られているんだ。上部街には皇族達が住んでいて、中部街には主に公爵家や貴族家系が住み、下部街は貴族の家系じゃない人達が住んでいるんだ」
シュバルトお兄さんの説明を聞いていると、ミー君が口を開く。
「上部街に行くには、皇帝の許可書が必要でね?書面の代わりに、これが必要になります」
そう言って、ミー君が見せて来たのは、女神様が彫られた少し大きめのブローチだった。
「ブローチが必要なの?でも、芣婭はブローチ持ってんないけど、大丈夫そ?」
「んー、ブローチがながったら通行料を払わないといけないんだけど…。上部街に着く前に、芣婭さんに書いてもらいたいものがあるんだ」
「書いてもらいたいもの…?」
芣婭の問い掛けに答えずに、シュバルトお兄さんは折り畳まれた1枚の書類。
なんて書いてあるのか、全然分からない!!!
ん、んー?
筆記体の英語みたいな字が書かれてると思うけど、これって異世界語なんだよね?
書類と睨めっこしていると、シュバルトお兄さんはニコニコしながら言葉を放った。
「僕達の養子にならないかな?芣婭さん」
「えっ、養子?養子って、あの養子?」
「ロザリアも僕も、芣婭さんと家族になりたいと思ってる。君さえ、良ければなんだけど…」
「家族…」
お母さんとお父さんに愛されてないのは自覚してたし、愛されたいって口に出してなかったけど思ってた。
絵本の中やドラマに出て来るような、温かい家族を芣婭は知らない。
芣婭が知ってる家族は、お兄ちゃんだけだったし…。
隣に座っていたシーちゃんが、スッと芣婭の手を優しく握る。
「芣婭さんが昨日、僕達に言ってくれた言葉を覚えてるかな」
「覚えてるよ?あっ、でもあれは忘れてもらっても…」
「僕達は嬉しかったんだ、君にそう言ってもらえて嬉しかったんだよ。シエサからも大体の親事情は聞いた。異世界に居る間だけでも、君と家族になりたいんだ」
「シュバルトお兄さん達と家族になれるのは、嬉しんだけど…。良いのかな?異世界に来てから、嬉しい事ばっかり!!!お父さんんの事、パパって呼んでみたかったんだ」
芣婭の言葉を聞いたシュバルトお兄さんは、すっごく嬉しそうに笑う。
「じゃあ、パパ?芣婭の名前はどこに書いたら良いの?」
「あ、あぁ!!!ここに芣婭の名前を書いてくれ」
「はーい」
シュバルトお兄さん…、じゃなかった、パパに羽ペンを渡され、書類の1番右下の空欄に芣婭の名前を書く。
コンコンッ。
窓が叩かれ、視線を向けるとニックが声をかけてきた。
「公爵様、まもなく上部街の門に到着しますよー」
「分かった。芣婭、書類を貸してくれ」
「あ、うん」
パパに言われて書類を渡すと、ゲームに出て来そうな門番キャラが「止まれ!!!」と叫んでくる。
「ブローチはお持ちか。確認の為、見して頂けますか」
「ローベルク家公爵、シュバルトだ。ブローチならここにある」
「同じく、ブローチを持ってまーす」
門番に声をかけられ、パパとミー君、ニックスとレヴァさんはブローチを門番に見せてた。
シーちゃんも元騎士だったから、ブローチを持っているみたいで門番に見せる。
おいおいおい、いよいよ芣婭の番が来ちゃったじゃんかよ!!!
ほら、門番が馬車の中を覗き込んできたー!!!
「はわわわわわっ!!!」
「「「は?」」」
芣婭の顔を見るなり、真っ赤になった門番をシーちゃん、ニックス、レヴァさんが眉間に皺を寄せながら睨む。
「あ、あのぉー?芣婭、ブローチ持ってないんだけど…」
「どうぞ、どうぞ!!!」
「え」
「お、お金なら、俺払っておきますから!!!どうぞ、お入り下さいっ!!!」
マジか、この門番めっちゃ良い人ですやん。
代わりにお金払ってくれるとか、ありがたーい!!!
「ありがとう、それじゃあ通らせてもらうよ」
ガチャンッ!!!
そう言って、パパは少し強めに窓を閉めてから、芣婭の方に視線を向ける。
「良いかい、芣婭。誰彼構わず愛想を振るのはおよしなさい。あの門番のだらしない顔を見ただろ?芣婭はお姫様のように、可愛いんだから」
「お、お姫様?芣婭、愛想を振り撒いた覚えはないんだけど…?」
「安心しなさい、これからは僕が守ってあげるからね」
「お、おぉ…」
パパ、芣婭に対して過保護過ぎ。
「ふふふ、公爵って面白い方だったんですね。分かります、芣婭嬢は不思議なお方ですし、人の心を意図も簡単に開かせてしまう。本当に、不思議なお方ですよ」
「芣婭様に、それだけの魅力があると言う事です。不思議なんかじゃない」
ミー君の言葉を聞いたシーちゃんは、何故か得意げに答える。
「2人共、芣婭の事を褒め過ぎだって!!!」
「お、そろそろ魔法省に着くよ」
パパの言った通り、馬車は大きな博物館らしき2階立ての建物の前に馬車が停車する。
ローブを着た男の人達が、大量の本を抱えて建物の中を行き来していた。
「ここが噂の魔法省…、博物館みたい」
「秘書に案内させるよ、試し撃ちが出来る練習場もあるから。僕はこれから書類を出しに行かないと…、あ、良いタイミングで来たね」
パパがそう言うと、目の下に大きなクマを作っている中年のおじが走ってくる。
「はぁ、はぁっ、省長。まだ、仕事が残ってるんですよ?どこに行ってたんですか、途中から姿を消していましたけど」
「あぁ、娘を迎えに行ってたんだよ」
「娘って、省長には娘はいない…って、本当に!?省長の前に座ってる女の子ですか!?」
パパの言葉を聞いた中年おじが、勢いよく芣婭の方に顔を向け泣き出した。
「おおおおおっ!!!良かったですねっ、省長!!!ズビッ、こんな可愛らしい娘さんが出来てっ」
「ありがとう、僕はこれから書類を出しに行かないといけなから…」
「分かりました、私が御案内しますっ」
「芣婭、この人は副省長のスワイデンだ。魔法学を得意としていてね?僕が戻って来るまで、彼に魔法の事を色々と聞くと良い」
中年おじの名前を教えてもらったけど、覚えれる自信がないな…。
異世界の人達の名前が長過ぎて困るぜ。
リヴァさんに馬車の扉を開けてもらい、芣婭達は馬車を降り、パパを見送った。
「芣婭ちゃん、エス…」
「芣婭嬢、良かったら…、僕にエスコートさせてくれますか?」
スッ。
ニックスの言葉を遮るよに、隣にいたミー君が声をかけながら手を差し出す。
「ありがと、ミー君!!!」
「階段があるので、気をつけて下さい」
差し出されたミー君の手を取り、3段階段を上ろうとした時、ニックスが大声を出す。
「ちょ、ミラ!!!お前、そんなタイプじゃねーだろ!?普段、エスコートなんてないじゃん!!!こう言うのは、俺の出番だろ!?」
「ニックスは普段から、女の子のエスコートをしてるだろ?今日くらいは、僕に譲ってくれても良いいよね?」
「それは今、関係ねーだろ!?芣婭ちゃんの専属騎士である俺が、芣婭ちゃんをエスコートすんだよ!!!」
「もう、僕がエスコートしてるんだから。ニックスは帰る時で良いでしょ」
芣婭のエスコートする件について、2人が言い合いをしていると、リヴァさんが耳を赤くさせながら手を差し出してきた。
「2人の言い合いは続くようですし、よ、宜しければ僕が」
緊張しながら言ってくれてるのが見て分かるし、芣婭よりも、大人の男の人が照れてるのを見る事は、滅多にない。
ミー君の手から芣婭の手を離し、差し出されたリヴァさんの手の上に置く。
「じゃあ、お願いしまーす、レヴァさん?」
「か、かしこまりました」
「「ずるいぞ、レヴァリオ!!!」」
レヴァさんが芣婭の姿を見て、ミー君とニックスの声が重なる。
だが、レヴァさんは2人を無視して、芣婭の手を引いて階段を登り出す。
「では、1階から御案内します。正面玄関を抜けると、受け付けがあります。我、魔法省では魔道具の販売、修理もでき、魔法書の販売、取り寄せも行っています。魔法の研究は勿論…」
「?、?」
中年おじは饒舌に、魔法省で何をしているのかを説明をしているが、全く頭に入ってこない!!!
「ここは主に、魔道具と魔法書の取り扱いに力を入れていると言う事ですよ」
困惑している芣婭の耳元で、レヴァさんが分かりやすく説明してくれる。
「魔道具って、イメージ的に杖的な?本も魔法の書かれてる的な?」
「フッ、その通りです」
「マジで、美しいなレヴァさん」
「なっ!?お、恐れ入りますっ…」
眼鏡を掛け直しながら、顔を真っ赤にせてそっぽを向くレヴァさん。
「おじ、魔法の試し打ちがしたいんだけど…」
「お、おじ?あぁ、出来ますよ!!!属性検査が出来ますが…、されますか?」
中年おじの素敵な提案を聞き、興奮度はMAXだ。
「属性検査…、やりたい!!!シーちゃん達も自分の属性?が分かってるんだよね?」
「えぇ、私達も属性検査をして、自分の把握出来ました。私は炎属性でした」
「炎!!!カッコイイ!!!後で、魔法見せてね?シーちゃん」
「ふふ、分かりました」
軽く笑いながら、シーちゃんは芣婭に優しく笑い掛ける。
「では、打場に御案内しますね」
中年おじの後ろを歩き、一旦は建物の外に出て、裏に回ると学校のグラウンドみたいな場所に到着した。
木で作られた的が何個か設置され、空に浮いている的に向かって、魔法を打っている若者の姿が見える。
「おおおお!!!異世界っぽい!!!」
「ん?あぁ、ありがとうございます!!!芣婭様、こちらが属性検査が出来る魔道具です」
そう言って中年おじが持って来たのは、色が付いてない結晶が入った水晶玉だった。
「これが噂の魔道具…、どうやって使う感じ?」
「両手で包むように水晶を持っていただき、目を閉じるだけで大丈夫です。結晶が、芣婭様の体の中に流れる魔力を察知し、色がつきますので」
「なるほど?」
「簡単に出来ますので、何事も経験です!!!どうぞ!!!」
中年おじが勢いよく水晶を渡して来たので、落とさないように慎重に持つ。
え…っと、ただ目を瞑ってれば良いんだよね?
言われた通りに目を閉じていると、バキバキバキッと何かが割れる音が聞こえ、慌てて目を開けてみると…。
中にあった結晶が紫とピンクのグラデーションの大輪の薔薇が咲き、水晶に大きなヒビが入っている状況だった。
「ん?」
「これは…、見た事がない状態です!!!まさか、こんな事が起きるなんて!!!」
「え、え?結晶に色がつくだけじゃなかったっけ?」
困惑しているのは芣婭だけじゃなく、シーちゃん達も目が点になっていた。
興奮している中年おじを除いて…。
「闇属性なのは間違いありませんが、ピンク色は何の属性だ…?今まで、ピンク色に染まったのを見た事がありませんね…。一体、何の属性だ…?」
「凄いな、芣婭ちゃん!!!俺、結晶が花になるの初めて見たわ!!!」
「僕にもよく見せて下さい!!!」
中年おじとニックス、レヴァさんが芣婭の周りに集まり、水晶の中の大輪の薔薇の観察を始める。
ミー君は大輪の薔薇を見ながら、芣婭の耳元で囁く。
「芣婭嬢、誰かの傷を治した事はありますか?」
「え?あー、傷を治したと言うか…。ケロちゃんとベロちゃんの姿を元に戻した事はある。元の世界でね?2人にあった時、弱ってたから」
「芣婭嬢、この事は誰かに言いましたか?」
芣婭の話を聞いたミー君は、真剣な顔をして訪ねてきた。
「ギルベルト君の呪い、芣婭の血で治せないかなって…、言った事ある。断られちゃったけど…」
「もう、他人に自分の血の事は言わないで下さい」
「え?」
「ここには僕達以外にも、人が沢山います。芣婭嬢、貴方の血は特別な力を持っています。今はそれ以上は、言えませんが…。ギルベルト様が戻られてから、改めて話し合いの場を儲けます」
ミー君が真剣な顔して話すから、よっぽどの事なんだろう。
芣婭の血には、特別な何かがあるらしい…。
なんか、ちょっとカッコイイかも。
そんな事を考えていると、ポンッと肩に手を置かれ、振り向くと息を切らしたパパの姿があった。
「あっ、パパ!!!おかえり」
「ただいま、芣婭っ。戻ってきたら、スワイデンの大声が打場から聞こえて来たが…。何があったんだ?」
「省長!!!見て下さい。先程、芣婭様の属性検査をした所…、このような結果に!!!」
中年おじの言葉を聞いたパパは、芣婭が持っている水晶に視線を向ける。
「これは…」
「新たな発見ですよ、これは!!!」
「公爵、少し宜しいですか」
ミー君はそう言ってから、パパに小声で何かを伝えると、芣婭の手から水晶を取った。
「スワイデン、公の場で騒ぐのはやめろ。僕の娘は魔法の試し打ちに来たんだぞ」
「あっ、失礼致しましたっ。私とした事が…、申し訳ありません」
パパの少しきつめの言葉を聞いた中年おじは、すぐに芣婭に謝罪をする。
「芣婭、気にする事はないんだよ。たまにあるんだ、こう言う事は」
「そなの?」
「あの的に向かって、魔法を放ってみるかい?」
「え、やりたい!!!」
芣婭の返事を聞きながら、近くの台に置かれていた先端に球型の宝石が付いたステッキを手に取った。
あの有名な映画にも出てくる魔法のステッキ的な!?
的に向かって打ってる人達を見ると、パパが持ってる
ステッキを使ってる!!!
「魔道具を使わずに、魔法は使えるけど安定性は下がる。慣れるまでは、ステッキや杖を使うのが良いよ」
「可愛いのとかある?魔法少女が使ってそうなの!!!」
「芣婭専用のステッキを作るのも良いな…。うちに帰ったら、ロザリアにデザインしてもらおうか」
「え、良いの!?嬉しい!!!」
そう言うと、パパは優しく芣婭の頭を撫でた。
「あ、シーちゃんに魔法を見せてもらうんだっ。いい?シーちゃん」
「おいおい、シエサ。威力は抑えろよー?」
「誰に向かって言ってるんだ?ニックス」
芣婭の左側から顔出したニックの言葉を聞いたシーちゃんは、男言葉を使いながら前に出る。
ボッとシーちゃんの手から炎が現れ、ボールを投げるような仕草をした。
ボンボンッ!!!
放たれたら炎の球は次々と設置された的に当たり、クルクルと回っている。
「おおおおっ、すごいね!!!」
「ありがとうございます、芣婭様」
「球を飛ばすみたいにすれば良いのかな…?」
「さすが、芣婭様!!!そんな感じですよ!!!」
ふむ、妄想は得意ですよ芣婭は。
ふふふ、イメージならバッチリなんですよ…。
シーちゃんの時にみたいに前に出て…、こうやって…。
「えい⭐︎」
ゴオオオオオオオッ!!!
持っていたステッキを軽く振ったつもりなのに、何故か杖の先から大きな黒い球が現れ、物凄い勢いで的に当たる。
ドゴォォォーン!!!!
大きな黒い球は周囲にあった木々達も破壊し、地面には大きな穴が空いてしまった。
「「「え?」」」
パパ達は状況を飲み込めずに、ポカーンッとしていて…。
周囲の人達の視線が芣婭に注がれ、一気に打場の注目の的になってしまう。
「…、魔力量が桁違い過ぎる…」
「初めてなんだから、そう言う時もあるさ…、うん」
「そんな簡単に片付けていいものですか…?これは」
中年おじとパパの会話が聞こえて来たけど、これって普通じゃないらしい。
さすがの芣婭でも、普通じゃない事は分かるよ?うん。
ブオオオオオ!!!
ガッ、シュルルルッ…。
どこからか暴風が吹き荒れ、髪に着けていたリボンが解けて後ろの方に飛ばされる。
解けたと言うか、誰かに掴まれた感覚がしたんだけど…?
「ん?ん?あ、リボンが」
「芣婭様っ、お待ち下さいっ」
リボンが飛ばされた方向に向かうと、背後からシーちゃんが追い掛けてくる。
パサッ。
金髪の男の人が芣婭のリボンを拾ってくれたようで、慌てて芣婭は男の人に近付いた。
高級そうなアクセサリーを着けて、肩から紺色の裾が長めのジャケットを羽織っている男の人は、近くで見ると王子様みたい。
「そのリボン、芣婭のもので…」
「ようやく会えた」
「へ?」
そう言って、金髪の王子様は愛おしそうに芣婭の手を握った。