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同時刻 ルナ帝国魔石洞窟内
「グアアアアアアア!!!」
ブシャアアアアアア!!!
ギルベルトを守護するように前に立つコンラットは、
表情を変えないままゴブリンを斬り続けていた。
飛び散る血飛沫、コンラットの足元に転がるゴブリンの死体の量は凄まじい。
外で戦っている騎士団のメンバーよりも、コンラットは1人で100体近くのゴブリンを1人で片付け、目の前にいる巨大なゴブリンを見据える。
太い体には似つかわしい装飾、衣服、周りに置かれた盗んだと思われる宝石や武器達。
巨大なゴブリンの周りには、もはや数人のゴブリンしかいなく、コンラットは剣に付着した血を振るい落とす。
ブンッ。
「ギルベルト様、大体は片付けました」
「ご苦労」
「ガルルルルッ…」
コンラットに労いの言葉を掛けながら、自身が契約している氷の獅子を率いて前に出る。
「た、大将っ。外の奴等も、ほとんどが殺されてしまいました」
「生き残ってるのは俺達だけです…」
部下のゴブリン達の言葉を聞いた巨大なゴブリンは、眉間に深い皺を寄せながら腰を上げた。
「いきなり来たかと思えば、仲間を殺し過ぎじゃないか?黒い騎士達を侍らす者よ」
「こっちは仕事で来てるんでね、死にたくなかったら森に戻れ」
ヒュウウウウ…。
ギルベルトが言葉を放つと、氷の獅子の足元からパキパキと音を鳴らしながら、冷たい冷気が洞窟の中を冷やす。
洞窟の中を灯していた炎も凍てつき、息を吐く度に白くぼやけていく。
「ギルベルト様ー、ご報告する事が出来ましたよ。今、宜しいですか?」
煙草を美味しそうに吸いながら,コンラットの背後からローレンツが現れる。
「話していたとしても無理矢理、話に入るくせに…。ギルベルト様の前だからって、かっこつけようとしてない?ローレンツ」
「おいおい、エリア。俺はこんなのでも第2部隊の隊長なんだぜ?騎士団をまとめているギルベルト様には、ちゃんと報告しないといけないだろ?」
「…、こんな時だけなんだから」
ローレンツの後ろから副隊長のエリアも同行し、話しながらギルベルトとコンラットと合流した。
「ローレンツさん、外にいたゴブリン達は?」
「ほとんど、エリアとうちの団員が殺っちまったよ。生き残ってんのは、でかゴブリンの周りにいる奴等だけだ」
「分かりました、それ以外にも何かあったんですね」
「ギルベルト様は、俺が何を報告しに来たか分かりますよね?」
コンラットと話していたローレンツは、そう言いながらギルベルトに視線を向ける。
「直接、ゴブリン達を率いてる奴に聞いた方が早い。おい、白騎士団の鎧を着させているのは何だ?」
「その事を貴様に教える義理は…」
ブシャッ。
巨大なゴブリンの右腕が勢いよく、血飛沫を上げながら宙に舞う。
自身の腕の事なのに、何が起きたのか分かっていないようだ。
「は…?」
ギルベルトの周りに数個の闇刃がくるくると回りながら浮いていた。
* 闇刃とは、単体攻撃魔術で、相手に対し闇の刃を穿つ。
威力も速度も高く、非常に有効な魔術である*
「聞かれた事以外は喋るな。答えないのなら、手足を斬り落としていくだけだ」
「貴様…、脅しのつもりか」
「脅しではない、命令だ。俺の問いに、さっさと答えろ」
「ッ…」
巨大なゴブリンはギルベルトの銀色の瞳を見て、口をつむんでしまう。
氷の如く視線だけで相手を凍てつかせる彼の瞳は、味方であるコンラット達でさえも、背筋が凍るものだった。
ギルベルト・カーディアックを知っている者は、多くの者は彼の瞳を恐れる。
冷たい銀色の瞳の前では、偽りの言葉でさえも語らせてはもらえないからだ。
視線だけで相手を威嚇し、真実しか述べさせなくするのはギルベルトの魅力の1つであろう。
ギルベルトがこの世界の中で、ゆういつ1人だけ彼が寵愛を捧げてしまう女性がいる。
「今日のギルベルト様、いつも以上に怖くない?どうなってるんですか、コンラット団長」
「あー、それはだな…。早いとこ仕事を終わらせたいだけさ、エリアが驚くのも無理はない」
「ふーん、ギルベルト様でも、そんな事を思ったりするんですね」
エリアに尋ねられたコンラットは、ギルベルトの背中を見つめながら答えた。
1日でも早く女性に会いに行きたい思いも強く、ギルベルトは任務を素早く終わらせたいのだ。
だが、その事はギルベルト自身と、コンラットしか知りえない。
思い人である彼女でさえも、ギルベルトの気持ちに気づかずにいた。
「…、ある男から渡された。白騎士団の鎧をな…」
「ある男?名は」
「名前は分からない…、名乗って来なかったから…」
「はぁ」と大きな溜息を吐きながら、ギルベルトが手を振り翳すと闇刃が、一瞬で姿を消す。
ブシャッ!!!
巨大なゴブリンの左足がいつの間にか斬り落とされ、傷口の断面から痛々しく骨が露わになり、勢いよく血を噴き出した。
ブシャアアアア!!!
「グアアア!!!お、俺の足があああああっ!!!」
足を1本失った巨大なゴブリンは体のバランスを崩し、その場に大きく倒れこむ。
ドサッ。
カツカツ…。
ギルベルトが近づいてくる足音を聞いた巨大なゴブリンは、泣きそうな顔をして小さな悲鳴をあげる。
「名前を知らない?男の顔、身長、特徴になるものは」
「マ、マントを着ていたからっ、顔はよく見えなかったがっ。髪は金髪だった!!!あ、あと、髪の短い女を連れていた!!!お、俺達をここにゆ、誘導して…」
「謎の男女が貴様等をここに連れ、住むように命じたと」
「あ、あぁ!!!そ、そうだ。俺達は言われた通りにしただけだっ。ほ、本当だっ」
懇願するような眼差しをギルベルトに向けるが、彼にそんな視線など通用しない。
それは巨大なゴブリン自身も気付いたうようで、視線を下に向けてうつむく。
「脳みそをフル回転させた上で、それしか情報を出せないのか。俺に言っていない事があるだろ?」
「っ!!?」
ギルベルトの言葉を聞いた巨大なゴブリンは体をビクッと反応させる。
その様子を見たローレンツは、巨大なゴブリンの恐怖心を煽るような言葉を吐く。
「あっちゃー、ギルベルト様の前で嘘ついたかー。終わったな、お前」
「う、嘘なんかついてないって!!!本当の事しか言って…」
「ギルベルト様が嘘を言っていると?お前はそう主張するのか」
聞き捨てられない言葉を吐いた巨大なゴブリンを、エリアがキッと睨み付ける。
「嘘をつく人間、魔物、怪物、他種族、俺はそう言った分類の奴は嫌いだ。物事はハッキリさせないと、苛々するんでね」
ジャラ…。
ギルベルトは右手の袖から、長いチェーンに繋がれた漆黒の十字架が現れた。
十字架の真ん中に嵌められた赤と紫が混ざった宝石が、嫌らしいくらいに光を放つ。
「あー、これって、アレがおっぱじまるじゃねーか?」
「俺達は後方に離れた方が良いですね、下がりましょう」
「エリア、こっちに来い」
ローレンツ達はギルベルトから少し離れ、後方で待機する事にした。
ギルベルトはゆっくりと十字架を揺らし、相手に催眠術にでもかけるように呟く。
「恐怖」
そう詠唱すると、巨大ゴブリンの視界にギルベルト達が消え、代わりに現れたのは今まで殺してきた人間や魔物だった。
アンデットのように地面から出て、その姿は殺された時のまま。
口から血が溢れ、傷口からは蛆が零れ、腹からは臓物が現れ、血生臭く、吐き気を誘う死臭が巨大なゴブリンを襲う。
*恐怖とは名の通り、相手を怯えさせて行動不能にする闇魔法*
ギルベルトが取り出した漆黒の十字架は、魔道具【幻覚を見せるもの】である。
相手が思いだしたくもない記憶、出来事を幻覚にする事ができるが、幻覚を見せるものは闇魔法の1つである恐怖と同時に発動しないと効果はない。
魔道具の効果も使用者の魔力量によって、効果は異なり、幻覚を見せるものはまさにそうだ。
相手に幻覚を見せる魔道具は他にもあるが、ギルベルトが使用している魔道具は店で売られていないもの。
十字架の中心に嵌められた魔石は、黒い竜の住処である洞窟内から発掘される貴重な魔石。
非常に凶暴な黒い竜を初代カーディアック家当主が討伐し、魔石を持ち帰った事により作られたものだ。
「うあああああ!!!く、来るなっ!!!」
巨大なゴブリンは幻覚に襲われ、地面に座り込んでは後ろに後ずさりする。
周りにいるゴブリン達は、巨大ゴブリンが何を見て怖わがっているのか分からないでいた。
「た、たすけ、助けてくれっ。このままだと、こ、殺されるっ!!!」
「助けてほしいのなら、隠した事を包み隠さず話せ」
「うあああああ!!!」
ギルベルトの言葉させも、巨大なゴブリンにとっては恐怖材料の1つになってしまっている。
「た、大将?」
「何がどうなって…」
「ギルベルト様、残りのゴブリンは如何なさいますか」
困惑しているゴブリン達を横目で見ながら、コンラットはギルベルトに尋ねる。
ギルベルトは何も言わすに、軽く左手を上げた。
この仕草を見ただけで、エリアは気配を決して走り出し、コンラットは腰に下げていた剣を抜く。
「お前は動かなくて良いぞ、コンラット。ていうか、既にエリアが片付けちまってるわ」
「ギャアアアアア!!!」
「あー…、ローレンツさんの言うと通りですねぇ…」
「エリアがいる時は、仕事が楽に進むわ」
2人はそんな会話をしながら、エリアの方に視線を向ける。
返り血をまみれのエリアが涼しい顔をして、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ローレンツ、コンラット団長に余計な事を吹き込まないでよ」
「おいおい、そんなに怒るなよ?お前が優秀だって事だよ、エリア」
ローレンツの言葉を聞いたエリアは、ピクッと耳が反応する。
心なしか頬も赤く、尻尾も嬉しいそうに揺れ出す。
「お前の仲間も全員死んだ。もう、お前しかいなくなったぞ。どうすんだ?」
「あ、あぁ…。ど、どうしたら、俺の事を助けてくれるんだ?」
「包み隠さず言う事、それしかないだろ」
ギルベルトの言葉を聞いた巨大なゴブリンは、目を泳がせながら口を閉じる。
「言わないのなら、呪われながら死ね」
「そ、それは嫌だ!!!分かった、分かった、言う。ちゃんと言うから、助けてくれっ」
「じゃあ、さっさと言え」
巨大なゴブリンが口を開こうとした時、巨大なゴブリンの首元に付けられていたチョーカーが輝き出す。
その瞬間、巨大なゴブリンの首を囲うように魔法陣が現れ、コンラットは慌てて叫んだ。
「ギルベルト様、お下がりください!!!」
コンラットの言葉を聞いたギルベルトは距離を素早く取ると、氷の獅子が口を大きく開けて氷壁を作り出した。
ドゴォーンッ!!!
大きな爆発音と共に衝撃波が襲うが、氷の獅子が作った壁のおかげで、ギルベルト達は無傷で爆発に巻き込まれる事はなかった。
パキパキッと音を立てながら氷壁は溶け、煙を払い除けながら巨大なゴブリンの元に向かう。
土埃が晴れ、現れたのは頭が吹き飛んだ巨大なゴブリンの変わり果てた姿。
首に付けられていたチョーカーも、爆発に巻き込まれ、姿形が無くなっている。
「ローレンツ」
「はい、ギルベルト様。あのゴブリンが付けてたチョーカーには、炎属性魔法の1つ、爆発が魔石に刻まれていた物でしょう。時限爆弾と同じ要領で、口封じの為に殺したのでしょう。ゴブリン達を住まわせた人物が、自分達の事を話したら爆発するようにと言った所ですかね」
「爆発の呪文を少し書き換え、スイッチとなる言葉を使ったら爆発する仕組みか」
そう言いながら、ギルベルトは落ちていたチョーカーの破片を拾い上げる。
「エリア、このゴブリンがどんなチョーカーをしてたか覚えているか」
「金属のチョーカーで、魔石の色は紫でした。首の肉が邪魔して、ちゃんと確認出来ませんでしたけど」
「お前の視野の広さとローレンツの記憶力と洞察力には、俺は信用している。コンラット、この破片を持ち帰り、レヴァリオに調べさせろ」
エリアと話しながら、ギルベルトはコンラットにチョーカーの破片を手渡す。
「分かりました」
「芣婭の護衛を第一に、なるべく早くだ。今日の所は一旦、引き上げるぞ。目的のゴブリン討伐は完了したからな」
「直ちに撤収作業に入らせます」
ギルベルトの指示を聞いたコンラットは、一足先に洞窟を出て行く。
ふと、歩き出そうとした時、1つの魔石がギルベルトの視線を奪った。
***
ギルベルト・カーディアック(21歳)
あの魔石、芣婭の瞳の色と同じだな。
そう思いながら魔石を手に取り、まじまじとレットピンク色の魔石を眺める。
手のひらサイズの魔石は、キラキラと白く輝くハートは見え、これは光の屈折から作り出されているのだろうか?
俺の事を見るの、あの可愛らしいまん丸の瞳と瓜二つの魔石を見つけた。
1日と数時間しか経っていないのに、もう芣婭の顔が見たくなってしまっている。
今頃、芣婭は何をしているだろうか。
熱は出ていないだろうか、寂しくさせていないだろうかと考えを広げては、会いたい気持ちを溜息で吐き出す。
この魔石は、俺の思いを汲み取って現れた物に違いない。
そう思いながら魔石をズボンのポケットにしまうと、背後から嫌な気配と悪寒を感じた。
後ろを振り返らなくても、想像が出来る。
いや、いつものアレが始まろうとしているのだ。
「お前、生きる意味を見つケタ?お前ゴトキが?」
聞きなれない男の声、背後から首元に当てられている刃物らしき物、顔が見えない背の高い真っ黒な存在。
呪いの進行する時にだけ現れる謎の存在、いつしか俺の脳内に語り掛けてくるようになってしまった。
「黙れ」
「早い未来、お前は確実に死ヌ。それナノに?生きル?生きル事を諦めていたノニ?」
「今日はやけに口が回るな」
言葉を吐き捨てながら、背後にいる真っ黒な存在に視線を向ける。
やはりと言うべきか、目と鼻は見えないが、何故か今日は口元がはっきりと見えたのだ。
「気に入らナイ、気に入らナイ!!!お前ゴトキが、芣婭ヲ…!!!芣婭ヲ好きになる事ダケは許サナイ」
真っ黒な存在の口元が歪み、苦虫を嚙み潰したような口元を浮かべさせた。
コイツとは6歳の事からの付き合いだが、口元が見えたり、感情が露わになった所を初めて見た。
いや、そんな事よりも重要な事がある。
「何故、芣婭の名前を出した。お前、芣婭の事を知っているのか」
「お前には関係ナイ」
「言え」
真っ黒な存在を睨み付けながら問うが、答えようとしない。
「芣婭の名前を、お前が口にしていいものではない。いや、口にするな」
「それは、お前の方ダ」
ズキズキッ!!!
右腕全体に伸びた黒い棘から激痛が走り、肌を焼くような熱さを感じた。
黒い棘が首筋と胸の方に伸びて行くのが、痛みで見なくても分かる。
「この野郎…、棘の進行を早めやがったな…」
「ギルベルト様!?」
右胸をを抑えながら、俺ををエリアが慌てて支え、ローレンツが駆け寄って来た。
「大丈夫ですか!?ギルベルト様!!!」
「いつもより酷そうだな、エリアはそのまま支えててくれ。ギルベルト様、胸元を少し肌けさせますよ」
そう言って、ローレンツは俺が着けていたネクタイを外し、シャツのボタンを何個か外して行く。
「すぐに屋敷に戻りましょう、ギルベルト様。呪いの進行が速いです、それも急速に。ミラに診てもらった方が良い」
「ギルベルト様!?どうされたんですか !!?」
「コンラット、馬車の準備をしてくれ。思ってた以上に、呪いの進行が早まった」
「分かりました、すぐに出立出来るように手配してきます
ローレンツとコンラットが何か話していたが、耳に入って来なかった。
今まで感じていた痛みよりも、はるかに上の痛みが襲ってきているからだ。
遠のく意識の中で、何故か芣婭の顔が浮かぶ。
何故、芣婭の顔が浮かぶのだろう、よりにもよって今。
自分が辛い状況にいるからかなのか?
俺自身の無意識な願望からなのか?
「…芣婭」
「ギルベルト様!?しっかりして下さいっ、ギルベルト様!!!」
エリアの呼び掛けに答えようとしたのだが、意識が遠のいてしまった。
***
ルナ帝国 上部街
シュンッ!!!
「この辺か?同族の気配がした場所はよ」
「えぇ、その筈ですけど」
甘野芣婭と別行動していたケルベロスの2人は、瞬間移動を使って上部街に訪れていた。
「光の矢が飛んできた方角から気配がし、来てみれば宮殿しかないじゃないですか。おまけに着飾った人間が多い」
「富裕層が見て分かるようにしてんだろ?権力が持った人間は大抵はそうだ。今もどこからか、俺達の事を見てる視線があんだろ?」
「はぁ、視線がウザいので出てきてくれませんか?鬱陶しいので」
ケロちゃんがそう呟くと、2人の目の前に黒いレースの日傘が1本現れる。
「聞き覚えのある気配だと思って、観察してたのに。乱暴な言葉使いをするのは、変わってないのね?兄弟」
日傘を持ち上げながら現れたのは、ケルベロスの2人と赤い瞳の美少女。
艶やかな黒髪は短く切られ、青白い肌を強調させる黒いレースがふんだんにあしらわれた半袖のワンピース、厚底のヒール。
「やっぱり、お前だったか。数年前に人間と契約して、姿を消したきりだったか?」
「そんな話はどうでもいいの。なんで、兄弟達が人間界にいるのって事が聞きたいの」
「これ見ても、ピンとこねーか?」
ベロちゃんは美少女に見せつけるように、首元に付けられたチョーカーを見せつける。
「は?2人とも人間と契約したって事?しかも、名付けの儀式まで済ませたの?散々、人間と契約したくないって言ってたじゃん。今更、なんで」
「俺達の御主人は、お姫様みたいに可愛いんですよ」
「ちょ、何言ってんの?アンタが他人を褒める事なんてなかったじゃない。仕方なく契約した感じでしょ」
ケロちゃんの言葉を聞いた美少女は、困惑しながらも質問を投げかけてしまう。
美少女の知っている2人は、今とは打って変わって凶暴的で、殺戮的な男達だった。
他人に興味も持たなければ、褒めたりもしない2人の筈だったのに、契約主である人間の容姿を褒めていた事に驚いていた。
「お前、光の矢を飛ばせさせてるだろ?俺達の大事な御主人様に向かって」
「私が仕組んだとでも?」
「毎回毎回、飛んでくる方向が同じだ。お前はやたらと魔法書ばかり読んでたし、予想だけどな」
「うん、そうだよ」
ベロちゃんの問いかけに答えながら、美少女は首のチョーカーを2人に見せつける。
ケルベロスの2人と同じように、エメラルドグリーンの宝石が煌びやかに輝いていた。
「私が光魔法を教えてあげたの、素質もあったし。主の命令だったから」
「教えた相手は光の巫女って奴ですか?貴方が教えているのは、光魔法と聖魔法の2つじゃないですか?」
「似たようなものだけど、そうね。命令だもの、仕方ないよね。だけど、撃っていた場所に2人の御主人が居るとは思ってもなかった」
「なんの目的で撃たせた」
ベロちゃんの質問攻めに飽き飽きした美少女は、面倒臭そうに言葉を吐く。
「質問ばっかりされて、鬱陶しいな…。答えれるのはここまで、目的とか理由とか誰なのかは言わない。命令だからね」
美少女は腰に下げていた分厚い本を取り出すと、2人は美少女から距離を取る。
「邪魔されても困るし、どうしようかな。時間稼げって、命令されてるんだよねぇ…」
ぶつぶつと独り言を言いながら、本を開いてはペラペラとページを捲っていく。
「召喚」
美少女が詠唱すると、美少女の周りに何個かの魔法陣が現れ、中から太い鎖が音を立てて飛び出す。
ジャラジャラッ。
「「ガルルルル…」」
「キイエエエエエ!!!」
首輪に繋がれた巨大な魔物達が鳴き声を上げながら、魔法陣の中から這いつくばって姿を現した。
数十匹の魔物達を従える美少女は、2人に向かってニッコリ微笑む。
「悲しいけど、兄弟を殺さないといけないよね。私、御主人の事が大好きだから」
「丁度いいですね、俺は最初から消すつもりできましたから。貴方も俺と同じ考えですよね」
ケロちゃんはそう言って、隣に居るベロちゃんに視線を送る。
「俺達の第一優先は芣婭の身の安全だ。元からよ、俺達兄妹に藻無けれもねーんだぜ?この女は俺達の御主人に手を出してきてる。なら、答えは決まってる」
ベロちゃんは言葉を吐き捨てると、鎖に繋がった紫色の魔石を抱えている骸骨が姿を出す。
「殺すだけだ」
その言葉に反応するように、紫色の魔石が光り出した。