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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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『お帰り~!』

玄関の方から会話が聞こえてくる。

きっと心配させたこと、遅くなった理由その他聞きたいことを俺に聞いてくるだろう。

正直 怖い


なるべく落ち着いて話すつもりだったけど、きっと引かれるだろうな。

初めて会ったモブみたいなおじさんの家にいたなんて、バカ正直に言えば心配されるし迷惑だって思われて。

やだなぁ

別にアイツは何もしてこなかった。

優しく抱きしめて過呼吸が落ち着くまでの間傍にいてくれて、何か言うでもなく待ってくれて、途中途中で大丈夫、大丈夫って言ってくれて、 怖いことはなかったはず。

でもきっとみんなは信じてくれない。

階段を上がる足音が聞こえる

別にやましいことはなかったはずだ。

でも俺は逃げるように布団に潜った。

心臓がうるさくなって、息が苦しくなって まただもう……

「嫌だ……」

「うり?」

彼は俺を優しく撫でて、抱きしめて言った。

「おかえり 」

「……ただいま」

「どこ行っとったん?」

「どっか怪我しとらんか?」

「外は危ないからなるべく早く帰ってきてや

みんな心配しとる」

「……ぐすっ」

「泣いとるん?」

彼はいつもより優しく強く抱きしめて言った

「ごめん」

なんで彼が謝るのか分からなかったけど、何を彼に言って慰めることが出来るのか、分からなくて、何も言えなかった。

彼の声は震えていて体は暖かくてアイツとは違って安心する匂いがした。

彼はきっと泣いているんだろうな。

そう思った俺は布団から出て彼にキスをした。

彼は驚いてポカンとしていた。

「泣かせてごめん」

彼は一層ポカンとした顔で

「……んなぁ……はぇ、は?」

「あははw」

「いや、何笑とんねや! 」

階段を駆け上がる音が聞こえる。

「うり~~!!」

どぬが抱きしめてきた。

きっと待っててくれたんだよなと申し訳ない気持ちになった。

ゆあんは久しぶりにおもいっきり笑った?と嬉しそうに見ている。

結局アイツのことは話さなかった。



夜モゾモゾと彼は起き上がった。

まだ今日のことで考え事をしていた俺は黙って、見ていると彼は窓を開けた。

びっくりして起き上がると

「起きてたん?」

「何してるの? 」

「見てみ 」

「……猫?」

「お散歩しに来たみたいやな」

「可愛い」

「うりのがかわえぇよ?」

「何言ってんのw 」

「ホンマに」

「あっそ」

嬉しいのか俺の声は少しだけ柔らかくなる。

彼は俺の手を握って言う。

「いつかお前らを絶対幸せにしたるからな!」

そしてもう一度月の見える窓、そして可愛い猫の前で

キスをした。

朝目が覚めるとたっつんさんはいなかった。

途端に不安になり、汗が出て震えが止まらなくなった。

彼はどこに行ったのだろう。

もしかしたら飽きて捨てられたのかもしれない。

視界がぼやけて俺は泣き叫んでいた。

「どないした!!」

「はぁはぁぐすっ」

彼は急いで階段を上がって一目散に部屋にやってきた。

過呼吸気味の俺に優しい声でちゃんと息を吐いて、お前なら出来ると抱きしめてくる。

彼は忙しいのに俺に構ってる時間はないのにと気持ちがどんどん焦る。



うりは不安な時誰か分からない別人になる。

まるで恋をしてるかのような。

でも他人のような表情。

人を彼、または彼女と呼ぶような間柄。

今もそうや、不安じゃないとき余裕がある時はちゃんと家族のようやのに。

「たっつハァッハッさハヒュッッんゴホッ」

「んー?どないした~」

「ぐすっハヒュッッゴホッハッ 」

「ゆっくり息してなぁ」



「さっき何言おうとしとったん?」

「……ごめんって言いたかった」

「何でや」

「忙しいのにこんなんになってごめんって」

「……」

「ごめん」

「疲れたやろ?今日は休むか? 」

「ん……」

「ゆっくり休めよ?寝とけば治る!」

うりはすっかり疲れたらしく体に力が入ってなかった。

だんだん話してるうちに眠くなっているところで会話を終了させる。

布団を被せるとそのまま眠ってしまった。



うりの部屋から泣き叫ぶ声が聞こえてくる。

行ってあげるのが良いのだろうけど朝からキリキリと痛む胃が歩かせてくれない。

ストレスが原因だと聞いたことがあるが、俺は別にストレスになることは何もないし、もちろんうりは心配だけどそれが原因とは考えにくい。

「……はぁ」

隣で眠っているゆあんくんを起こすとおはよと挨拶される。

上手く笑えてるかな?

ゆあんくんは鋭いから少しだけ心配になる。



今日はずいぶんと痛むらしい

正直心配だけど気を遣わせてしまうから何も言わずにベッドから起き上がる。

「今日はうり休むから」

たっつんがいつもより元気がなかった。

そりゃそうか。

泣き叫ぶ声はどの部屋でも聞こえたし、心配だもんな。

今日も鞄にななチキを入れて学校の準備をして少し長めの学校への道を辿る。

別にそこまで長くはない。

体調が悪いと長く感じるんだろうか。

教室は昨日のことなんて何もなかったように普通だった。

噂もなければ、いじめも、もちろん喧嘩も何もかも不良とは言ってなくても似たような行動をとったのに。



なんや全部なかったことになっとるんか?

モブの野郎も普通に声かけてくるし、どうなっとんねん。



良かったぁ

前回殴っちゃったから(ゆあんくんが)不安だったけどこれなら大丈夫そうだね!



休んじゃったな

泣き叫ぶなんてどうかしてるわ、俺

何で急に……。

とりあえず少しだけ外に出よう。

気分転換したらいつも通りに戻れるよな。


公園にまたきてしまった……

本当に俺どうしたんだ。

とりあえず帰るか、誰かに見つかる前に

あれって昨日のヤツか?

心臓が大きく飛び跳ねる。

脳が危険信号を出す。

逃げろ、今すぐ、でももうひとつ、もう一度話して悪いヤツじゃないと確信すればみんなにも紹介できる。

俺は悪いヤツとつるんでる訳じゃないと証明できる。

すると目が合う。

こちらに近づいてくる。

目が離せない、何を言ったら逃げられるかまた考え出す。

足が震える、緊張して喉が渇く。

心臓の音が耳に響く。

「やぁ昨日ぶりだね♡」

ドクンッッ

逃げないと。

違うんだ、待ってたんじゃない。

何故か目が離せなくて、震えて怖くて……急げ急げ早く早く!!

「ダイジョブ……大丈夫……ダイジョブ大丈夫♡だいじょうぶ♡ 」

ぎゅぅぅ

「何も怖くないよ♡安全安心♡」


…………。



生徒会室に入って先生からもらった資料を生徒会長に渡す。

なんや分厚い封筒やなと思いながら、これ先生から生徒会長にと、そう言いながら渡すと俺は生徒会室から出ようとする。

すると生徒会長が一言

「中身……見た?」

「別にそんな面白いもん入っとらんやろ 」

「そっか……」

「失礼しました」

なんやアイツ。

そんな気になるんやったら自分で取りに行ったらえぇやん。

アホちゃうか?

あ”ぁムカつく……むっちゃ気になるやん!!



ゆあんくんどこに行ったの??

休憩時間終わりそうなのに帰ってこない。

ここは知らない人ばっかりだ。

一応図書室の近くで待ち合わせしてるはずだけど……探した方が早いよね!

周りも時間見て急いでるし、探そう!!

タッタッタッ


ドンッッ!!

モブ男「いってぇ」

「あぇ……ごめんなさいっ」

「てめえ何してんだよ!」

「ごめんなさい」

モブ女「え~何々~?」

「こいつがぶつかってきたんだよ」

「もしかして2年生?wかわいー」

「あのっ!黒髪の赤いブレザーを着てる男の子見ませんでした?」

「お前見た?」

「知らな~い」

「てかお前のせいで時間なくなったんだけど」

「でも探してて、!」

「走ってるヤツがわりぃだろ普通。何僕は何もしてませんみたいな顔してんだよ、!」

ドカッッッ!!

「しかも何その耳wwイキってんのー? 」

「マジじゃんww女みたいな顔してるしそういうの狙ってんじゃねw 」

「ちっちがっ!!」

「こらー!!君たち何してるの!?」

「せんせぇ、こいつがぶつかってきて~」

「移動時間なくなりましたぁ」

「あら?2年生かな、大丈夫?立てるかな?」

「……」

「てか廊下は走るなって小学校で習わなかったんですか~?」

「こら!やめなさい年下相手に、先生には私が言っておくから」

「キャーせんせぇありがとぉ♡」

モブ男「それな♡せんせぇてんきゅ♡」

「ヤバいwマジウケる(笑)」


ガラガラ……パタン

先生「ずいぶん遅かったな!何かあったか? 」

「……」

先生2「友達を走って探しててぶつかってもめていたんです」

先生「そうですか!それは大変ご迷惑をおかけしました。」

「迷……惑」

先生2「いえいえwそれでは」

先生2「はい!ありがとうございました」


ガタンッ(席に座る)



あれから二週間経ち何故かうりは家に帰るといなくなっていて、どぬは俺を探して怪我をしたらしい。

後で話したときお互いにすれ違いが起きていて、俺は音楽室前にどぬは図書室前で待ち合わせをしてしまっていたらしい。

謝るとどぬは結局は音楽室前って決まってたんだ、聞いてなかった俺が悪いと笑っていた。

傷ついてるだろうがどうすることもできずそのままになってしまっていた。

学校から帰ると誰もいなくなっていて、コンビニでもいってるのかと思ってそのまま寝落ちしてしまい、時間は6時半を過ぎていた。

みんなで探したが見つからず時間も遅いし、スマホに連絡だけ入れて寝ることになった。



あれからうりは二週間学校にも来んかった。

アイツ何しとるんや、あの日ごめんって謝っとったやないか!

またおんなじこと、もっと酷いことするんか?

何で心配かけんねや!

何で連絡とれへんのや……何で相談してくれんのや。

おかしいやろ。アホ



あれから俺は先輩たちにいじめられてる。

この耳がなければ良かったのに。

こんな顔に生まれなかったら良かったのに。

そもそも生まれてきたことが間違ってたのかもしれない。

この長い髪の毛も切って、生まれ変わったらもういじめられなくなるだろうか?

みんなは嫌いになるかな?

俺はここにいて良いのかな?

俺もうりみたいに逃げたら楽になるかな?



最近うりくんがきていない。

私はあのゆあん推しの女です。

あれから二週間経ちます。

えー寂しいです。

うちの子ゆあんくんが泣きそうな顔をしてる時めちゃくちゃに撫でたくなりました。

犯罪者予備軍です。

最近クラスの子達は四人特にうりくんを不良的な存在だと認識し始めました。

でも私の気持ちは変わってません。

えーゆあんくんは可愛いです。

以上



……ねぇねぇ聞いた?

あの噂……二年生の中に狐?の耳が生えた生徒がいて……触れると病気になるらしいよ……



二年生の狐の耳が生えた生徒が誘惑して……先生がクビになったらしいよ……


二年生の狐の耳が生えた生徒が……男子生徒を階段から突き落としたらしいよ……


二年生の狐の耳が生えた生徒……二年生狐のの耳が生えた生徒……二年生の狐の耳が生えた生徒……ニネンセイノキツネノミミガハエタセイト……、!



ガバッ……、!


ハァハァぐすっ


「俺は何もしてない ぐすっ」


タッタッタッ……ガチャン



んん…朝か……

うりの顔を見れんってこんなに辛いんやな。

あの日たぶんアイツは体調が悪かったんやろな。

そんで俺もいなければどぬもゆあんもおらんかった。

やから怖くなって苦しくなって……落ち着けるために外に出たんやろう。

そのあとはどうなったかは知らんけど、スマホがうりのだけなかったから連れ去られた可能性は家のなかでは低い。

外に出たんなら迷子か?

でもスマホには地図があるし、人に聞けばある程度分かるやろうから……これも可能性は低い。

あ”ぁ……何で俺は大事な時に傍に居れんのやろ

もう……どないせぇって言うねん……



ドタドタドタドタッッ!!

バンッッッ!!


「たっつん!!」


嫌な予感がした。

目を覚ますとどぬがいなくなっていて、どこを探してもいなくて、泣きそうになりながら最後の頼みの綱を見つけた。

たっつんはびっくりした顔をして、すごく心配してくれている。

早く話さないとそう思って焦って色んな言葉を投げ掛けるが上手く伝わらない。

違う!!今はどぬがいなくなった話をしないと、!


「たっつん、!……だって、!毎日寝てた!!昨日までいたんだけど、ッッ何で!!」

「??ゆあん……どないした 」

「ッッ!!……どぬくがいなくなった。」

ゆあんは焦って途切れ途切れに話していた。訳が分からなくて少しイライラしながら、落ち着けるために静かに諭した。

どぬくがいなくなった。

不思議と驚かんかった。

もう、分かっとったのかもしらん。

俺たちはあの日……いや、もっと前から壊れかけとって、今完全に外れてしまったんやろな。

もうえぇよ……全部。なんやみんなの為に頑張っとったのが馬鹿みたいやわ。

うりもあれからずっと探しとったのに見つからんし、ほっといてくれってことやろ?

なぁ……うり

俺……そんな強ないで?


あの夜たくさんの声が噂が嫌になって逃げ出してきてしまった。

みんなにはもう迷惑かけなくて良くなるし、ゆあんくんだってきっと俺がいなくなったってどうも思わない。

あの日本当はゆあんくんに助けて欲しかった。

無理なのは分かってるし、こんな馬鹿みたいな願いに振り回すつもりはないけど、それでも、助けて欲しかった。

きっと助けにきてくれれば迷惑かけたなんて考える必要なかったかもしれないのに。

あぁ、欲張りになる。

ダメなのに、我慢しないといけないのに。

そもそも自分のせいなのに。


ニァー


……猫?

『どこにいくの?』


どうやらこの嫌な耳は動物の耳だけあって動物の言葉が分かるらしい。


「家出してきちゃったんだ」

『それは大変ね』

「良いんだ。俺が全部悪かったんだ」

『おうちに帰らないの?』

「家出したから帰らないよ」

『あら?そうなの……だったらうちにおいで』

「君の家に?」

『そうよ、私のおばあちゃんはとっても優しいのよ』

「でもこんな時間だしきっと寝てるよ 」

『アマヤドリというのを知ってるの』

「へぇ…物知りだね」

『アマヤドリしに来た男の子がいてね、おばあちゃんは寝てたんだけど…その日の夜私の家で過ごして、朝おばあちゃんに会うと笑って、いつでもうちにおいでって言っていたわ!だからアマヤドリしましょ!』

「雨宿りは雨が降ってないといけないんだよ 」

『あら?…そうなの……シュン』

「……じゃあ少しだけお邪魔しようかな?」

『あなたならそう言ってくれると思ったわ!大丈夫よ少し大きな猫がきただけでおばあちゃんは怒ったりしないわ!』

「??……フフ…ありがとう猫さん」



あの日たっつんにはちゃんと伝えたけど…何故かそのまま学校に行ってしまった。

冷たいヤツだな!と言うとホンマになって何故か泣きそうな顔をして出てってしまった。

俺は今日は学校を休んでどぬを探している。もちろんうりも。

お昼は忙しくて作ってないからたぶんコンビニらへんで連れ去られたんやないか思てんねん。

出来たら探してやってなとたっつんは疲れた顔をして言っていた。

コンビニに着くと懐かしく感じてしまう背中を見つけた。


「、!うり!!」


ビクッ


「うり……」


ガシッ……ギュゥゥ(肩を掴む)

「ゆあんっ痛い…… 」

「俺らはもっと痛かった!!」

「ッッ、ごめん」


コンビニの近くに公園があったのでそこのベンチに座り、話を聞く。

うりは何か考えてる様子だった。



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