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お母さんがドラマを見ていた名残だろう。珍しくテレビが点けっぱなしだったので、消そうとしてリモコンを手に取る。
──可愛い〜!
そのような声がテレビから聞こえてきた。内容を見てみると、可愛い猫大特集というテーマで猫の映像が流れていた。安直な名前だ。
視聴者から集めた動画を紹介する形で進んでいくテレビ番組。猫には声を当てられ、一応凝っているんだな、とソファーに座り、何となくその映像を見ることにした。猫の種類は様々、内容は可愛いを中心に珍しい動画が多かった。
ここで、若い女の人の芸能人の猫の紹介が入った。
「絵太郎〜」
自分が絵を描くのが好きだから、という理由で命名されたその猫。名前にリアクションが入りつつ、女の人は素っ頓狂なことを言い出す。そういうキャラらしい。
茶トラの絵太郎は、猫じゃらしと戯れる。
私はその映像に少し見入ってしまった。今までの猫の特集の方が、よっぽど見入る内容の筈なのに、何故か単純な猫じゃらしと遊ぶ猫の内容のほうが惹かれた。
どうして。私がそういうものを求めていたからなのだろうか。そもそも猫の映像に惹かれた理由は。どことなく、既視感。猫に、特に絵太郎に。絵、絵……?
「絵名……?」
絵名が猫。ああ、似ているんだ、絵名が猫に。
絵太郎なんて名前だし、茶トラだしこの猫は特に似せてきているのだ。納得した。
猫。例えば自分の可愛さを理解してるところとか、変にどんくさいところとか、プライドがあるところとか、そういう面倒臭い感じが似ているのだ。
こんなことを言ったら、怒りそう。
その様子は、おやつを貰えなくて噛み付いていた猫に似ているかも。
疲れているのかもしれない。猫に絵名を重ねてしまうなんて。画面の中で猫じゃらしと戯れている絵太郎を見て、いつも突っかかってくる絵名みたいだな、とまた思った。やはり疲れている。
そういえば猫は感情が読めるんだったか。あまり覚えていないが、落ち込んでいると寄り添ってくれたりもしてくれるらしい。聞いたことがある。
「…………」
私はテレビを消して立ち上がった。
似ていると伝えたら、怒るだろうか。