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どうも、nanaha.です。

更新遅くなってしまい申し訳在りません。

第十五話、早速どうぞ。



「何してんだよ!」

慌てて駆け寄り、手すりから引きずり降ろす。

明來は固まったまま、何も抵抗しなかった。

「明來、本当に心臓に悪いから…」

そう言いながら、ドアの方へ向かうよう促す。

すると、明來は急に身体に力を込め、その場から動こうとしなくなった。

「ちょ、明來? 帰ろう、な?」

「…」

暴れはしないものの、じっと向こうを見つめながら動かない明來は、初めて見るようで少し恐怖を覚える。

「明來、皆待ってるぞ。な、帰ろう?」

そう諭すと、明來がピクリと反応する。

と、静かに口を開いた。

「皆って誰?」

そんなことを聞かれるとは思わず、口を噤んでしまう。

「ねえ、皆って誰なの? アタシ、誰にも大事にされてないんだよ。帰ったって、おじさん達に汚されるだけ。クソみたいなもんだよ。」

淡々と語る口元はリップグロスで彩られ、不自然な色っぽさが漂っていた。

ブリーチのしすぎで傷んだ金髪が風に吹かれ、アルビナとは違った見窄らしさに胸が痛む。

「答えてよ。皆って誰?」


一瞬、沈黙が世界を支配する。

と、バン、と荒々しい音が響く。

「山口!」

設楽先生だった。

その途端、明來の顔にようやく表情が戻ってきた。

呆れ、だった。

「五月蝿いな、邪魔なんだけど。アタシの人生、アタシに決めさせてくんない?」

厳しく言い放つと、俺の腕を振り払い手すりへと歩みだす。

「…俺。」

場違いな呟きが、宙に放り出される。と同時に、明來がこちらを振り向く。

「は?」

「皆って、俺。俺以外にもいると思うけど、俺は明來に居なくなってほしくない。」

自分でも驚くほどの辿々しい日本語は、自身に言い聞かせる意味合いもあったのだろう。

話の終着点も分からないままに、言葉を探りながら語る。

「…綺麗事ばっか。もう、いいや。」

その言葉は、青い瞳にブロンドヘアの少女を蘇らせた。

自分の凝り固まった脳に、ブーメランが突き刺さって痛かった。


気がつくと、明來はそこに居なかった。



お読みくださりありがとうございました。

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それでは次のお話でお会いしましょう。

君は平和を求め、僕は幸せを知らない。

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