ゲームが終わった後、カイトとリョウはゆっくりと外へ出た。
閉ざされた施設のドアが静かに開き、明るい朝の光が二人を迎え入れる。
清々しい空気が、今までの閉塞感と恐怖を一瞬で洗い流してくれるかのようだった。
「終わったんだな……」カイトが呟く。
リョウは少し疲れた顔をしながらも、ほっとしたように笑った。
「ああ、ようやく終わった。本当にお疲れ様、カイト。君がいなければ、俺たちは全滅していたかもしれない。」
カイトは苦笑いを浮かべながら首を振った。
「いや、僕もギリギリだったよ。毎日が不安で、何度も間違いそうになった。けれど、君を信じて良かった。」
リョウは静かに頷いた。
「それが村人同士の絆ってやつだな。信じることが、最後には勝利を導いてくれる。」
二人は無言のまましばらく歩き続けた。
外の世界は、あの恐ろしい「人狼ゲーム」の舞台とは対照的に、穏やかで美しかった。
鳥のさえずりや木々の揺れる音、そして穏やかな風が、これまでの緊張と恐怖を少しずつ解きほぐしていった。
「でも……」カイトは突然足を止め、リョウを見つめた。
「僕たちだけが助かったんだ。アイカも、タケルも、ミカも……みんな、もう戻ってこない。」
リョウの表情が少し曇った。
「そうだな。僕たちは生き残ったけど、それは決して嬉しい結果ではない。仲間たちを失ったことは、これからもずっと僕たちの心に残るだろう。」
カイトは目を閉じ、深い息を吐いた。
あのゲームで失った命、そして自分の選択がもたらした結果の重さが、彼の心にのしかかっていた。
自分が「裏占い師」であったからこそ、人狼を見抜けたが、それでも多くの犠牲者が出たことは変わらない。
「このゲームは、僕たちに何を教えようとしたんだろう?」カイトは疑問を口にした。
リョウは少し考えてから答えた。
「もしかしたら、このゲームに意味なんてないのかもしれない。
ただ、人間がどれだけ信頼できるか、どれだけ疑心暗鬼に耐えられるかを試しただけなのかもな。
でも、それでも僕たちは生き残った。だから、その事実だけは無駄にしないようにしよう。」
カイトはリョウの言葉に頷き、再び歩き始めた。
二人の背後には、かつて彼らが閉じ込められていた施設が小さく遠ざかっていく。
もう二度とあの場所には戻りたくないと、カイトは心の中で強く思った。
数週間後、カイトは日常生活に戻っていた。
学校では普通の授業が再開され、周囲は平穏を取り戻しているように見えた。
しかし、カイトの心の中には、あの「人狼ゲーム」で経験したことが鮮烈に残っていた。
夜にふと目を覚ますと、ゲームの最中の恐怖や緊張が蘇り、胸が苦しくなることもあった。
「このまま忘れることができるのだろうか?」
カイトは窓の外を見つめながら、自問した。
だが、リョウが言ったように、ただ生き残っただけでなく、その事実を無駄にせずに生きていくことが彼の責任だと感じた。
ある日、カイトのもとに一通の手紙が届いた。差出人は不明で、ただ一言だけ書かれていた。
「次はお前が仕掛ける番だ。」
その文字を見た瞬間、カイトの全身に冷たい感覚が走った。
「次……?またゲームが始まるというのか?」
心臓が大きく鼓動を打ち、手紙を握りしめたカイトは、深呼吸をして冷静さを取り戻そうとした。
だが、今はまだその意味を考える余裕はない。
彼は、あのゲームから生き延びた者として、再び挑まれる日が来るのだろうか。
カイトは手紙を慎重に折り畳み、ポケットにしまった。
今はまだ、未来のことはわからない。
しかし、たとえ再び同じような試練が訪れたとしても、彼はあのゲームで学んだことを忘れずに、自分を信じて生きていくことを決意した。
穏やかな風がカイトの頬を撫で、彼はゆっくりと歩き出した。
完
主です。
この話は、半年ぐらい前から考えて出したいなと思っていたので他の作品よりかはとてもクオリティが高くなったかなと思います。
これ投稿した後に迷宮ができた世界で…を出すとなるとだいぶクオリティが落ちたなぁ〜と感じています。
出す順番を間違えたかな?
向こうの書き直しもしたいんですが、あと数日なので書き直せる気がしません。
迷宮ができた世界で…は、思いつきで書いているので、温かい目で見ていてください。
お願いします。
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