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昨日の午後に発生したクリニックのドクターの誘拐と事務員の負傷事件は、警察が開いた記者会見で二年前のある意味不祥事ともいえる事件が発端であるとことが報じられ、新聞の一面を飾ることになった。
ゴシップ誌などは二年前の記事を引っ張り出してきては何故そのドクターが狙われることになったのか、あの事件当時業務提携でもしていたのかなどと様々な憶測に基づいた記事を書いていたが、大手と呼ばれる新聞には過去の事件を掘り返してもそれは犯人が元刑事という事実だけで、あの事件で亡くなったシスターやそのシスターが所属していた児童福祉施設、またそこの出身刑事についてまでは詳しく書かれていなかった。
それでも過去の事件が発端となれば掘り返さないわけにはいかない為、当時のあらましを新聞が書くと、ようやく忘れられ掛けていたゾフィーが起こした事件を人々が思い出し、毎日笑顔で挨拶をしていたシスターらがいつものように挨拶をするだけで目を逸らされるようになってしまっていた。
駅の売店で買った新聞を握りつぶしながら不機嫌そうにタバコを咥えて古びた教会に足を向けたのは、誰も声を掛けることが出来ない雰囲気を隠さないリオンだった。
前夜、レオポルドにマスコミ対策をお願いするとコニーが頼んでいたが、過去の事件が引きずり出されることから必ず教会にもマスコミが来ることを予測し、子ども達のケアを頼むとブラザー・アーベルに一報を入れておいたが、それでもカバーしきれない悪意の目が今もリオンを見つめていた。
二年前のあの時も同じように見られていたなとぼんやりと思案しつつ教会の敷地に入ったリオンは、児童福祉施設のドアを開けてそこで大声でマザー・カタリーナを呼ぶ。
「マザー!」
その声は廊下を通って室内にまで届き、程なくして青ざめた表情のマザー・カタリーナと同じ表情のブラザー・アーベルやそのほかのシスターらが顔を出す。
「リオン!」
「ハロ。朝早くから悪ぃ」
日が昇らないまだ早朝の時間に悪いと詫びつつマザー・カタリーナの前に立ったリオンは、ウーヴェが誘拐されたというのは本当なのかと問われ己の爪を見下ろしつつ小さく頭を振る。
「……ああ。ゾフィーを殺したやつが連れて行った」
「おぉ……! なんと言うことでしょう……!」
リオンの感情のこもらない言葉にマザー・カタリーナが顔を両手で覆い、どうかウーヴェが無事に見つかるようにと祈るとリオンが何かを堪えるように見下ろしていた手で拳を作る。
「そのことで少し話しがある。今良いか?」
「え、ええ、大丈夫ですよ」
涙を拭い不安そうに見上げてくる母の肩に腕を回したリオンは、己の身体が怒りと不安とに震えていることに気付かないでくれと願いながらマザー・カタリーナと共に、ゾフィーがかつて使い今はマザー・カタリーナが使っている部屋に移動する。
窓際のベッドに彼女を座らせ木の椅子に後ろ向きに跨がって正対したリオンは、ニュースでやっていたが昨日ウーヴェが誘拐された、誘拐したのは元刑事仲間のジルベルトだと告げ、タバコをもみ消すと同時に新たな一本に火を付ける。
「新聞で読みました」
「目的は復讐だ。少し前に同じ組織でFKKの責任者をしていた元刑事が死体で発見された」
「!!」
「その刑事、かなりひどい拷問を受けていて、傷の中にこんなメモが埋められていた」
リオンがブルゾンのポケットから取り出したのはブライデマンが持ってきた一枚の写真で、それはロスラーの傷の中から発見された聖母マリアの祈祷文の一節が書かれたメモだった。
「これは、聖母マリアの祈祷文、ですか?」
「俺もそう思ったからマザーに見て貰おうと思った。イタリア語だけど間違いねぇよな?」
教会が運営している児童福祉施設出身のリオンはたとえ本人は宗教に無頓着だと言い張っても聖書の有名な一節は諳んじることが出来るし、こうしてマザー・カタリーナやシスターらが祈る言葉は幾度となく聞いたことがあった。
だから昨日ブライデマンがメモを見せた時もそれが一目で祈祷文だと分かったのだが、あの時抱いた感想についてリオンは確信に近いものを持っていて、それを確実なものにするためにマザー・カタリーナに会いに来たのだった。
「そうですね、間違いありません。聖母マリアの祈りです」
「これが傷口に突っ込まれていたって事はさ、これを書いた人間は信心深いって事か?」
リオンが己の疑問を解消するために問いかけると母は小首を傾げて何かを思案するが、一つ頷いた後、聖母マリアに対して強い愛憎を持っているかだと答えリオンが蒼い目を瞬かせる。
「愛憎?」
「ええ。祈祷文を覚えるほど敬愛している、けれども傷口に埋め込むなどという非道なことから同時に憎んでもいる。そう、思えます」
おお、神よ、憎むなどという言葉を使った事をお許し下さい。
敬愛の対象以外にならない神や聖母マリアを憎むなど、マザー・カタリーナには考えられないことだが、もちろん世の中にはそうではない人が沢山いることも知っているため、愛憎どちらの感情もあるともう一度伝えると、リオンが前髪を掻き上げてタバコの煙を細く吐き出す。
「これを書いたやつも俺みたいに教会が身近にあったのかな」
「可能性としてあるかも知れませんね」
「なあマザー、さすがにイタリアに知り合いの教会とか児童福祉施設とかはねぇよな」
リオン自身が教会関係の仕事をしているわけではない為に教会同士の横の繋がりが他国にまで及んでいるのかは分からないが、ジルベルトが育ったであろう児童福祉施設の関係者に知人がいないかと自嘲気味に笑うと、マザー・カタリーナがイタリア人の知人ならば何人かいますと答えたため、咥えていたタバコを落としそうになる。
「マジか、それ!」
「ええ。時々各国の教会と交流を持つことがあるのですが、その時にお世話になった教会なら知っていますよ」
ロスラーの検死報告書からの情報を元にジルベルト以外の存在を何か一つでも特定できればとの思いからここに顔を出したのだが、予想以上の回答を得たリオンの顔に希望の光が差し込み、暗かった顔色がわずかに明るくなる。
「どこの教会と交流があるんだ?」
「定期的に交流をしているのはローマですが、何度かフィレンツェやミラノ、アマルフィの教会の方ともお目にかかっていますよ」
「フィレンツェ……!マザー、フィレンツェの教会の連絡先を教えて欲しい。あいつ、フィレンツェにじいちゃんがいるって言ってた」
「分かりました。フィレンツェの教会ですね。その人の写真を持っていませんか?」
リオンの顔がこれで一歩ウーヴェに近付いたと分かった為、紅潮して口調にも明るさが混じったのを安堵の思いで見つめたマザー・カタリーナは、ジルベルトの写真があればその関係者に写真を見せると告げると用意をするから頼むとリオンが頷く。
「これでロスラーを殺したやつの顔写真でも手に入れば最高なんだけどな」
ジルベルトと一緒に行動している人間が特定できれば良いのにと拳を掌に打ち付けたリオンだったが、早く見つけないとウーヴェが昨夜見せられた写真以上にひどい目に遭わされる、それは畢竟ウーヴェの死を意味する事に気付き身体を無意識に震わせる。
「リオン」
「ん?」
「ウーヴェが無事に、一日でも早く戻ってくることを祈っています」
「……」
昨日ベルトランに送りつけられたウーヴェの拷問写真だが、それを見てしまった今無事とはどういう意味だと問い詰めたくなるがマザー・カタリーナが他意のない心配をしてくれているのだと気付いている為、その心遣いに感謝しつつ椅子の背もたれに顎を乗せる。
「マザー、オーヴェがひでぇ目に遭ってるってのに……」
何で俺はこうしてここで何もしないでいるんだろうと昨夜ベルトランに告げたものとは真逆の思いを零してしまったリオンは、マザー・カタリーナの目が見開かれ痛ましげに閉ざされたことに己の失言を察すると、今のは聞かなかったことにしてくれと小さく叫ぶ。
「いいえ、いいえ、リオン。あなたは何もしていない訳ではありません」
現にこうして今ここで事件の関係者に繋がりそうな細く脆い鎖を手繰り寄せようとしているではありませんかと、リオンの顔を正面から見つめてその言葉を否定するマザー・カタリーナに一瞬唇を噛み締めたリオンは、顔を伏せてうんと呟く。
「……出来る事から一つずつ、だよな」
「ええ、そうです。あなたが今頑張っているようにきっとウーヴェもあなたの元に帰ろうと頑張っているはずです」
なのでウーヴェの頑張りを無駄にしないためにも己の行動を否定しないで下さいと優しい言葉と共に温かな手が頭に乗せられたことに気付き、顔を上げることなくその手首を握りしめると何度も手の甲を撫でられる。
リオンが今まで生きてきた中でマザー・カタリーナ以上に優しい温もりを持つ存在を知らなかったが、ウーヴェと出逢い様々な経験を二人で乗り越えてきた中で母以上の優しさでもって己を包み自由にさせてくれていたことを母の優しい温もりに包まれることで気付く。
「……オーヴェ……っ……!!」
ウーヴェが誘拐された夜を一人、ウーヴェと一緒に寝ている広いベッドで何度も寝返りを打ちながら越えたが、心が上げる今すぐに会いたいという悲鳴と下手に動いてゾフィーの時のように殺されでもしたらどうするという声が胸を軋ませる苦しい中、限界が来てウーヴェが愛用している冬用の暖かなガウンを小さな子どものように抱きしめていたが、ウーヴェの匂いを感じれば感じるほど早く見つけなければという焦燥だけが溢れていたのだ。
そんな苦しい夜を越え刑事として事件を捜査する為に気分を切り替えたリオンだったが、二人で暮らしている家のそこかしこにウーヴェの気配だけが残っていて、結局驚くような早い時間に児童福祉施設に来てしまったのだ。
それも全て知った上で暖かく出迎えてくれている事に気付きマザー・カタリーナの腰に腕を回してしがみついたリオンは、幼い頃の記憶の中と全く変わらない優しい手が何度も頭を撫でてくれた安堵から大きな溜息を一つ零し、オーヴェを早く迎えに行かないとと呟くと背中を労るように撫でられる。
「ええ。きっとウーヴェも早く迎えに来て欲しいと思っていますよ」
それに五月になれば結婚式を挙げるのでしょうとリオンに囁くマザー・カタリーナだったが、うん、そうだったと息子がくぐもった声で返したため、同じく安堵に胸をなで下ろす。
「……ダンケ、マザー」
「リオン、ゾフィーの事でまた迷惑を掛けてしまいますね」
今回の事件もゾフィーが絡んだ事件が発端だと新聞に書かれていましたが、あなたの立場が危うくならなければ良いのですがと謝られ、俺の立場なんて問題ないと強く返しマザー・カタリーナの腹から顔を上げると、気合いを入れ直すように両頬を叩く。
「アーベルには言ったけど、また昔のことをぶり返す奴らが出てくるかも知れない。だから子ども達のことを頼むな、マザー」
「ええ。アーベルから聞きました。困難なことがあっても皆で協力して乗り越えていきます。リオン、子ども達への気遣い、ありがとうございます」
祈りながらリオンに感謝の思いを伝える母に素っ気なく頷いた息子はとにかく先ほどの教会関係者になるべく早く連絡を取ってくれと念を押しこれから出勤すると伝えると、マザー・カタリーナが少し待って下さいとリオンの腕を撫でた後慌てて部屋を飛び出していくが、戻ってきた時には紙袋を手にしていて、なんだそれと差し出される袋を受け取る。
「オバツタのサンドを作りました。朝食がまだなら職場で食べなさい」
自分の好きなもので朝食を用意してくれる母に今度はしっかりと頷いたリオンはダンケと短く礼を述べると、紙袋を手にマザー・カタリーナと部屋を出るが廊下で少年と青年の狭間にいる少しきかん気の強い顔をした少年に出くわし笑顔で呼びかける。
「よぅ、久しぶりだな」
「リオン? 久しぶり」
眠そうに目を瞬かせつつも呼びかけた相手がリオンだと気付き顔に照れと歓喜を混ぜてリオンの腹に拳を一つ当てた少年は、同じく腰を拳で叩かれて痛いと声を上げるが今から仕事かと問いながら憧れているリオンを見上げて笑みを浮かべる。
「おー。今日も仕事だ。そーいやお前は今は何をしてるんだ?」
「……今は市民大学で勉強してる」
「そっか。何か目標が出来たか?」
「うん。お前みたいになりたい」
少年が照れながらも己の夢を口にした為リオンが俺みたいになりたいのかと目を丸くすると、ダメなのかとそっぽをむきかける。
その時リオンの携帯にメールが届きメールチェックのために画面を開いたリオンは、送り主が鑑識のフリッツで昨夜の写真から色々情報を得られた、後で警部に報告するがこの男に見覚えはないかと訊かれている事に気付き写真を凝視する。
両手首と首を鎖で拘束したウーヴェを犯す男の横顔がクローズアップされていて、見たことがないかと問われてもとリオンが苛立たしそうに舌打ちするが、少年がちらりと見えた写真にあれと声を上げる。
「どーした?」
「こいつさぁ、間違ってたら恥ずかしいけど、……もしかしてあの時の男じゃね?」
「は?」
少年がリオンに断りつつ携帯を覗き込みクローズアップされている写真を見てやっぱりそうだと声を大きくするが、どの時の男だとリオンが眉を寄せると、俺がお前と初めて会った時だと返されてリオンの蒼い目が限界まで見開かれる。
「クリスマスマーケットで会ったあの時か!」
「そう。多分あの時の男じゃないかな。あいつさ、ウーヴェの事をナンパしてただろ?」
たった一夜の遭遇だったがあの時のお前が怖すぎてウーヴェをナンパしていた男の顔も忘れる事が出来ないと少年に苦笑され歯軋りをしつつ頷いたリオンは、また一つ情報を得られた、これでオーヴェの救出に向け一歩踏み出せたとあの時と同じ目つきになるが、少年がリオンの本気に触れたことからか顔を強張らせて身震いする。
「ダンケ、ライナー。思い出させてくれてありがとうよ」
「あ、ああ」
「お前がなりたいと思ったものはそう思った時からそれに向けて一歩を踏み出している、だから何があっても続けていれば必ずなれる」
だから頑張れとライナーの髪をぐしゃぐしゃにしたリオンは、呆気に取られていてもリオンに褒められたことだけは理解出来て顔を紅潮させる少年の頭をもう一度ぽんと叩いた後、マザーや他の皆をしっかりと護ってくれと言い残し、その彼女が作ってくれた朝食を片手に来た時とは打って変わった表情で飛び出すのだった。
捜査本部が設置され、事件を追いかける体勢になった刑事部屋に大急ぎで駆け込んだリオンは、デスクに朝食の袋を投げ捨てるように置きヒンケルの部屋のドアをノックもせずに開け放つ。
「どうした」
「ボス、昨日の写真からフリッツが色々情報を得たって言ってましたが、報告を受けましたか?」
珍しく息せき切ってデスクに手をつくリオンに首を一つ振ったヒンケルは、携帯を取りだしてこれをもう一度見てくれと部下に頼まれて携帯の画面へと目を落とす。
「……このクローズアップされている男は?」
「何年か前のクリスマスマーケットでオーヴェをナンパしていた男がいたんですが、多分その時の男です」
「何だと?」
ベルトランに送りつけられた写真から得られた情報は他にもあるが犯人の一人-主犯であれ従犯であれ-の身元が判明することはその足取りを追うものにとっては大きな一歩となる。
正体不明の雲を掴むような話ではなく、今生きて地に足をつけた男を捜す事になるのだ。
そうなれば刑事達の機動力で探し出せると目を光らせたリオンにヒンケルも頷き残りの写真からフリッツが有益な情報を見つけているかも知れない、まずはそれを検討したいが皆に見せても良いのかとヒンケルが声を潜めた時、ブライデマンが静かに入室し壁に背中を預けて腕を組みリオンの横顔をじっと見つめる。
「……ボス、ジルを早く見つけて逮捕しましょう」
二年前は逃げられてしまったが今回はもう逃がさないと迫るリオンの言葉に頷いたヒンケルだったが、デスクについたリオンの拳が微かに震えている事から、己の恋人が陵辱されている写真など例え仲間とはいえ見せたいはずはなく、ただそれを事件の早期解決という一点でのみ堪えているのだと気付き、部下のその気持ちを無駄にしないためにも頷くとリオンの顔に苦渋と安堵の色を浮かべさせる。
「……警部、フリッツが昨日の写真について話があると言ってます。リオン、客だ」
「分かった」
「俺に客?」
ブライデマンに黙礼をした後報告書を手に上がってきたフリッツをヒンケルの部屋に案内したコニーは、リオンを見ると同時に顔を背後に向けて来客だと告げるがその顔にはいささか緊張感が漂っていて、客とは誰だと呟きつつフリッツにさっき送ってくれた写真が役に立つ、ありがとうと礼を言ってブライデマンの存在に気付かない様子で部屋を出て行く。
「警部、この写真ですが住宅街の地下室だと思われます」
「どうしてそう思う?」
リオンがいつも座る丸いすにフリッツが腰を下ろしその横にブライデマンがやってくるのを確かめたヒンケルは何故そう言えるのかを問いかけ、鉄格子の嵌まった窓から車のタイヤが見えるがその向こうにアスファルトが見え更にその向こうにも芝生が見えていることから住宅が集まっている場所だと判断したと答え、停まっている車のナンバープレートも少し見えていて、ナンバーの特定が出来ないかやってみるとも告げるとヒンケルが身を乗り出しブライデマンも興味深げに身を乗り出してくる。
「あと、部屋にあるケージですが、これほどの大きさのものを取り扱う業者も限られてくるでしょう」
「組み立てをここでしたとしても、業者が配達したのかそれとも誰かが持って帰ったのか。最低でもどちらかをしていると言う事だな」
「Ja.住宅街ですからね。ネットで購入したとしても業者が来ているはずです」
部屋の隅の段ボールにも企業の名前が入っていることから辿ることは可能ではないかと頷くと、出て行ったリオンを気遣うように振り返ったフリッツが早くあいつの為にもドクを発見したいですねと呟きヒンケルとブライデマンが無言で頷く。
「そういえば、リオンの客とは誰だ?」
「どこかで見た顔だったと思うんですけどね、誰だろうな、あれ」
コニーが客人を案内してくる後ろをついてきたフリッツは、やり手のビジネスマン風の男で、リオンとヒンケルの中間ぐらいの年の男に見えたと顎に手を宛がって己の記憶の中で照合しようとするが、指紋の照合の時のように上手くいくはずもなく、一つ肩を竦めた後、他の写真から得られた情報を纏めた報告書をヒンケルに見せ、フラウ・オルガの足に刺さっていたバタフライナイフは新品だったこと、つい最近購入した可能性が高いからナイフを取り扱っている店を重点的に調べれば何かしら情報が出てくるかも知れないと告げ、車とナンバーの特定、持ち主の特定まで可能ならばしてしまいたいと立ち上がり、労ってくれるヒンケルとブライデマンに頷いて部屋を出るのだった。