つくづく都市に向いていない性格だと思う
でも、どうせ死ぬのなら…
そこは…その場所は「地獄」と言う言葉が世界一似合う場所だった。
大枚はたいて買った特注の武器、
斧派の大斧は既にボロボロで、もう武器として使うには酷に思われる。それに──
前線を見やる。
人々の絶叫や怒りだけが混じった
この場所など比べものにならないほどなその場所は、漂う煙のような霧では隠しきれないほどの狂気で飲み込まれていた。
「はぁっ…はぁっ…」
息が上がる
それでも止まらない狂気の波は、徐々にこちらへ向かってくるように見える。
(ハンスは今何処にいる…? )
ハンスとは戦争が始まってすぐにはぐれてしまった。
しかし、それも仕方無いことだ。
後に『煙戦争』、『翼戦争』と呼ばれるこの戦争は
L社、G社とI社、R社 の4つの翼の全面戦争。1~2年ほど続いたこの戦争は都市の歴史に残る事になるのだ。
絶叫。絶叫。絶叫。絶叫。
耳がイカれるような、もしくはもう既に頭か壊れてしまったのかと思うほどの人間が生み出す騒音。
そんな中で集団行動などハナから不可能だったのだ。
「っらぁっ!」
G社の技術によって両腕が虫のようになった男の背中を足場にし、兎耳を付けたスーツの人間に斧を振り下ろす
鮮血が舞い、スーツの首が落ちる
そのままの勢いで斧をブン回し、もう片方の手で首の無くなった兎耳から銃をくすね、がむしゃらに撃ち尽くす
弾が尽き、ただの鉄屑となったそれを投げ捨て、斧を振り上げる
その隙を逃さないといったようにまた別の兎耳が私の懐に潜り込み…
「っ」
その剣を振り抜いた
それと同時に先ほど足場にした男が私を後ろへ投げ捨て、私を切り裂いた兎耳に殴りかかっていた。
「ぐぁ…」
嗚咽を漏らしつつ傷口を見る
腰から左肩にかけて切り裂かれたその傷から水のように血が流れ、それを確認しながら起き上がる
後ろに投げられなければ真っ二つだっただろう
そう思い、身震いする。前を見ればもうその姿は無く、ただ殺し合いがあるだけだ
いつもの何倍も重い足を無理やり動かし、前線へ走り出した
───────────────
時間をかけ、スミレと選んだ斧はもう振るうだけで壊れてしまいそうだ。
地面に落ちている武器を拾っては前にいる人間を殺すために振るう
何度目か分からない、声にもならない叫び声を上げる
腹に刺さったナイフを物ともせず向かってくる敵に斧を振りかぶり、当たった
動かなくなった事だけを確認し、腹からナイフを引き抜いた後、更に駆けた
「スミレ…」
そう呟きながら、いないと分かっていても軽く見回してしまう
「─マズっ!」
首をはねようとした兎耳をかばうようにして、別の兎耳が割り込んで来たことで、その兎耳の頭が飛んだ。
そこまではいいのだが、庇われた方の兎耳が味方もろとも斬りかかろうとしてきた
「っ!」
ギリギリで斧を剣の前に出すことができ防ぐことが出来たが、
斧が弾かれ上空へ飛んでしまった。
唯一の武器を失い、もう一度斬りかかろうとしている兎耳と目が合ったような気がして…
ブシャッ
今日だけで何度も聞いた音が頭の上で聞こえ、すぐに生暖かい物が頭に降りかかる
スミレはほぼ反射的に身を縮め斬り伏せる筈の相手が消えたその剣は庇ってくれたはずの味方を切り裂いたのだ
「っらァ!」
その事実を脳が認識する前、体が先に動いていたのだ。
そのまま更に斬りかかろうとしてきた兎耳の腹 に蹴りを放ち、
その兎耳とまた目が合う。
そして──
武器無しで殺し合おうとしている事実に身体が固まってしまった
(どうする、どうしよう、どうすれば )
今までまともに殺し合いなぞせず小さい事務所で細々と生きてきた少女にとって、
全身の死傷
途轍もない疲労
殺すことへの嫌悪感
殺される恐怖 は少女の行動を鈍らすには十分だった。
その時
カラン。
先ほど上空へ飛んだ、ハンスと一緒に選んだ斧が落ちてくる
(ハンス…ハンス…ハンス!!!)
先の雑念を振り払い、その斧を握り閉める
そして決心を取り戻した少女は先ほど蹴り飛ばした兎耳へ向き返り…
「…あっ」
先ほどの倍以上の兎耳がこちらへ銃を向けていた
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