「ないくん、危ないからこっち。」
さり気なく、車道側を歩いてくれたり。
「ないくんあっちのお店行きたい!!!」
自然に手を繋いでくれたり。
「ないくん、好きだよ。」
俺は照れて言えない甘い言葉を、正面から言ってくれたり。
「ないくん大丈夫?痛くない……っ?」
「ん、ふっ、……らいじょ、ぶ……っ♡」
行為中の気遣いだったり。
「りうらは!経験値が!高すぎる!!!」
「なんで俺に相談してくんねん。」
呆れ気味に零す俺の相棒。
今日はまろの家で飲み会(恋愛相談)をしている。
「だってまろも経験値高そうじゃん。少なくとも俺よりは恋愛経験あるでしょ?」
「うーん、まぁせやけど……」
煮え切らない返事をし、酒を一気に呷ったまろ。
「まろ、アニキといちゃいちゃしたかった!」
「それはごめんじゃーん」
「焼き肉奢り」
「それ相応の、アドバイスをくれるなら」
酒を飲みながらあにきぃ、あにきぃ、と恋人の名前を呼ぶまろに微笑しながら俺もちびちびと酒を飲む。
暫く雑談していると、お酒クソ雑魚な俺にはもう酔いが回ってきて、口と理性がだんだん緩んでいく。
「てか、りうら、経験値高いし、俺だけがいちいち照れてて、歳上のくせにカッコ付かないし。りうらに初めて貰われてばっかで、りうらの初めて貰いたいのにさぁ……」
「俺、りうらに相応しいかなぁ……、って、思って……」
らしくもなく、弱音を吐く。
ライブ後のりうらとのツーショが映るスマホのロック画面を付けたり、消したり。
幸せそうな二人の笑顔。りうらに愛されてるってのはちゃんと伝わってるんだけどさ……
「それ、りうらに言ったらええんちゃう?」
「やだよ。恥ずいし、めんどくさいって思われそうだし。」
「……ないこって、変なとこでヘタレよな。」
「はぁ!?」
「いつも後先考えずにやりたいことは即行動やったやん。」
ヘタレじゃないし、と言おうとしたところを遮られる。
確かにそうだけど、りうらには、嫌われたくないし。
再びスマホを付けたり消したりしていると、ピコンと通知音がして、りうらからラインが来た。
『何時頃帰ってくる?』
心配のライン。『わかんない』とだけ返した。
他の女の子とも付き合ってたから、手慣れてるんだよね、とネガティブな思考になってしまう自分に嫌気が差す。
「りうらんとこ行かないん?」
「行ったところでじゃん……」
「話し合ってきいや。通知うるさいで。」
さっきから通知音が鳴り止まない俺のスマホ。
送り主は見なくとも分かる。
ちゃんと話して、りうらから好きを貰って安心したいと思う反面、話して嫌われたらって怯えてる心もある。
頭の中でポジティブとネガティブが戦っていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「はいはーい」
とまろが玄関まで歩いていく。
ドアが開き、ちらりと見えたのは、見慣れた赤髪だった。
玄関とリビングでは少し距離があり、声は聞こえないがまろと何かを話し合っている人物は、確実にりうらだった。
「取り敢えず、ないくん帰るよ。」
りうらは家に足を踏み入れるなり、俺の腕を掴み強引に引っ張ってきた。
混乱しながら、されるがままりうらに着いていく。
まろに荷物を貰い、いつの間にかまろの家を出ていた。
「り、りうら……?怒ってる?」
ズカズカと歩いていくりうらが少し怖くなって、声をかければ無反応。
無言で歩みを進めていく。
「ないくん、何もされてない?大丈夫?」
家に着くなり、抱き着いてきたりうら。
突然のことに頭はハテナでいっぱいだが、ちょっとだけ嬉しくなった。
「ほんっと心配した……、男の家で二人っきりとか。ましてやお酒も飲んだんでしょ?」
「ごめん……」
りうらの体の温もりからか、声からか、少し眠くなってくる。
ふと、まろの言葉が過った。
“それ、りうらに言ったらええんちゃう?”
眠気で正常に働かない頭で考えてもよく分からなくて、その言葉に流されるように口にした。
「ね、りうら?俺さ、ちゃんと付き合うのとか、心の底から好きになったの、りうらが初めて。でも、りうらは違うでしょ?同じくらいの熱量で愛した人がいっぱいいるでしょ?りうらの初めては俺じゃない。りうらはほんとに俺のこと好き?俺はりうらに相応しいの?もう、俺分かんないよ。」
言っていて、涙が溢れそうになった。
りうらが好きって言ってくれなかったら。嫌われたら。って怖くなった。
自然にりうらを抱き締める力が強くなる。
「ないくん、」
耳朶を揺らすりうらの声。
「好きだよ。大好き。相応しいとか、相応しくないとか関係ないよ。お互いにお互いが大好きだったら、それでいいんだよ。」
こっち向いて、と頬を掴まれ目を合わせられる。
「あとね、りうらが心の底から好きになったのは、ないくんが初めてだよ。」
「う、そ……」
心の声が漏れた。
「ほんと。好きになったのも、キスしたのも、ハグしたのもぜーんぶないくんが初めて。」
赤い瞳の奥に映っていたのは、俺だけだった。
でも、そっか……
りうらの初めてが全部俺だと思ったら、笑みがこぼれた。
「恋愛経験値ゼロってこと?」
「そういうとこ。ないくんとおそろっちだね。」
そう言って、ふふっ、と笑ったりうら。
数秒見つめ合って、どちらからでもなく唇を重ね合わせた。
「これからは、二人で経験値貯めてこうね。」
俺の経験値が、また一つ上がった。
※初めと終わりのテンションの落差がすごい。
※久しぶりの長文。
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