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しばらくして、
ザリガニを入れた犯人が見つかった。
それは、前の前の席の笹田だった。
笹田は成績が芳しくなかったらしく、
成績が良かったわたしのことをよく思っていなかったらしい。
これはあとから、聞いた話。
「音、ちゃんと笹田に言ってやりなよ。酷いことすんなよって」
わたしの数少ない友達のうちの一人、倉田咲ちゃんが言ってくれた。咲ちゃんは勝気でしっかり者。
小柄で可愛らしいえくぼが印象的な女の子。髪型は黒髪ロングのストレートヘアで、いつもわたしを助けてくれる。
「ありがとう。何かあったら、自分で言うから大丈夫」
ある日。
「お前、成績いいからって調子乗ってんなよ。俺、お前みたいなやつ、嫌いなんだよな」
と、笹田が突然、偉そうな表情でやってきて言った。
髪の毛には寝癖がついており、ボサボサ。手入れなど全くしていないように見える。
「だから、こないだも、ザリガニ入れてやった」
「っ……」言葉に詰まる。
いやだ。これ以上何を言われるんだろう。
怖い。もう、傷つきたくない。
早くあっちに行って欲しい。話したくない。
心の中でわたしは完全に被害者になっていた。そう。わたしは被害者だったの。
こんなひどいことされて、傷つけられて。到底、許せるはずがない。
わたしはあなたとは二度と話したくありません、なんて言っても良かったのだが、それは口に出さずに、しまい込んだ。
というよりかは、言えなかった。今度は彼を悲しませてしまう。そう考えると、言うに言えなかった。
傷つけられたのは辛いことだった。でも、だからと言って仕返しするのはよくないと感じたから。そこまで嫌な人間になりたくない。
すると……。
「まぁでも、悪かったな」笹田は目線を外し、少し暗い表情で言った。
え……??
何?
謝った?
信じられない。
帰る途中、わたしの頭の中では“どうして、アイツ、謝ってきたんだろう?”という思考だけが、ぐるぐると回り続けた。わたしはだいぶ悩んだが、それに対しては見当もつかなかった。