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桃「何カレーが好き?」
赫「なんなん?いきなり」
この会話の発端となったのは俺の今日の昼飯が昨日の残りのカレーだったからだ。俺の家では基本カレーは豚だから、それ以外食ったことがない。
少し前まではカレーを弁当に持ってくるのは考えにくかったが、今では背丈の低い魔法瓶にカレーを詰めてできたてのような熱さで食べられるのが当たり前になっている。いつもの弁当箱ではないこの入れ物に熱々の何かが入っているかと思うと、高校2年の俺でも少しわくわくしてしまう。
そんなことを考えながら保冷バッグから魔法瓶を取り出し蓋を開ける。その瞬間、カレーのスパイシーな香りが教室に充満する。その香りに釣られて彼が話しかけてくる。
茈「美味そ〜」
赫「どうも//」
茈「ひょっとして昨日カレーにしたん?」
赫「まぁね…」
好きな人に話しかけられて幸運に感じているのもつかの間、彼はいつも一緒にいる仲の良い友達に呼ばれ教室を出て行ってしまった。少し寂しく感じる俺に別の人物が話しかけてくる。
桃「待っててって言ったじゃん〜!」
昼休みは毎日いつもらんとすちと飯を食っている。すちは委員会の仕事で少し遅れると言っていた。そしてらんはただいまトイレから帰ってきたらしい。
赫「まだ食ってねぇよ」
桃「よかった〜」
桃「今日はカレーなんだね」
赫「昨日夜カレーにしたから」
桃「いいなー俺もなっちゃんの作ったカレー食べてみたい!!」
赫「今度家に来たらな笑」
らんとすちには俺の家の事情を話しており、それでも重く捉えず変な気も遣わず、気楽に接してくれるから有難い。そんなところも2人を気に入っている理由の1つだ。
らんも弁当を机に広げ終わったようなので、食べ始めようと弁当用のスプーンに手を伸ばしたところに、ギャハハと大声で笑い声を上げながら3人の陽キャ集団が入ってきた。
桃「ほんっとうるさいなぁ…」
赫「まーまーw」
俺は目立つのが嫌いだ。らんもすちも騒がしいのがあまり得意ではなく、クラスだとあまりパッとしないグループに属している。いわゆる三軍男子ってやつだ。だからと言って大人しいわけでもなく、楽しいことがあると普通に大きな声で笑ったりする。特にらんは笑うと声が高くなるから、静かなところで笑えば目立ってしまうだろう。だからからんが本気で笑うのは俺たちしかいないときか、周りもうるさいときだけだ。それ以外は笑いたくてもなんとか耐えようとしている。
桃「あいつらなんであんな騒げんだろ…」
赫「騒いでないと死ぬ病気とか?w」
桃「もう少し周り見ろって…」
らんが言っているあいつらとは、いるまが属している一軍男子のことだ。いるまは青髪クリ目のカワイイ系男子と金髪清純主人公顔の2人と常に一緒におり、クラスで一番目立っているグループだ。
そんなこんなでらんの愚痴を聞いている間に、委員会から帰ってきたすちが弁当を持ってこっちに来た。
桃「おつかれー!」
翠「ありがと。お、ひまちゃんカレーじゃんいいな」
赫「だろ? 」
翠「今日うちもカレーにしようかな」
そして話は冒頭に戻る。
翠「俺は夏野菜カレーが好きかなぁ」
桃「ぽいわ…栄養バランスとかなんとか言ってそう…」
桃「俺は無水カレーが好きなんだよなー」
桃「余計なもの入って無さそうだし、旨み閉じ込めましたって感じして良くない?」
赫「俺豚以外食ったことない」
桃「まじで!?人生5周分損してる!」
赫「それは大袈裟だろw」
翠「なら、今度違うの作ってみなよ」
赫「その時覚えてたらなw」
そんなこんなでカレー話も盛り上がり、俺とらんは昼食を食べ終えた。遅れて食べ始めたすちが食べ終わったころで予鈴のチャイムが丁度よく鳴った。次の授業は理科室で行うので俺たちは移動教室の準備を始めた。
酸素は2価の陰イオンであり、水素は陽イオンになりやすい性質がある。酸素原子は電子を2個受け取って酸化物イオンとなり、水素原子は電子を1つ失い陽イオンとなる。そんなイオン化傾向の授業を行っているらしいが、理科室でも後ろの席の俺は眠くなる一方だった。なぜだかうちの学校では実験などをしなくても理科系の授業は理科室でやると決まっている。
理科室は普通の教室とは違い1人1つ机がある訳では無い。ひとつの大きなテーブルに4つ椅子が置いてあり、4人で1グループになるようになっている。そのため、隣のテーブルに座る隣のことはすごく距離が近くなるのだが…なんと、隣はあの紫咲いるまくん!!昨日告白をしてOKをもらった相手だ。普通出席番号順では俺と彼は前後にも隣にもなれないのだが、理科室の座り方だと隣になるのだ。
初めて理科の授業での席が分かったときは嬉しかったな〜。そんなことを考えながら板書に目をやるとその拍子で彼の肩にぶつかってしまった。
赫「あッ…ごめん…」
茈「いや、俺こそ」
触れた肩が熱い。心臓が爆発しそうなほど激しく動いている。その音が彼に聞こえないように黒板からノートに身体を向け直した。が、その行動はすぐその意味を無くした。
茈「ここ狭いよな」
赫「確かにね笑」
茈「これ設計ミスだな」
赫「板書も見えにくいし、危険が多い実験をする部屋には適してないかもな」
俺たち…一応付き合ってるんだよな、、?
普段と何ひとつ変わらない彼の行動に困惑する。昨日家に帰った後に何度も夢なのではないかと思い自分の頬をつねった。朝起きると全てが無かったことになっているのかもしれないとなかなか眠れなかった。しかし、本人に直接確認する以外に真実か確かめる術はない。それを理解しながらも聞けずにいた。違うと否定されればショックだし恥ずかしい。あんな大胆に告白(事故)しときながら、自分から聞くのは怖くて話しかけられない。結局今日彼と喋ったのは、昼食時のカレーの話と今の理科室の設計の話だけだった。
「いるまって今付き合ってる子いるの〜?」
そんなこんなでうだうだ考えていたら理科室からの帰りにクラスの女子がいるまにそう言い寄っているのを聞いてしまった。
みんなが教室にもどっているこのタイミングでそんなことを聞くのかと関心しつつも、彼がなんと答えるのかが怖かった。彼がキョロキョロと周りを見渡し始めたので、俺は咄嗟に近くにある空き教室に入ってしまった。
茈「別にいねぇけど」
別に傷ついたわけではない。ただ、心にぽっかり穴が空いた気分だった。俺といるまは付き合ってなどなかったのだ。
え?やっぱただの冗談?俺勘違い野郎?痛すぎる!恥ずかしい死にたい消えてなくなりたい!あの子絶対いるまのこと狙ってるじゃん〜泣
空き教室でうずくまりながらぶつぶつともがいているとらんとすちが入ってきた。
桃「なっちゃんどうした?突然空き教室になんか入って」
赫「…なんでもない。」
翠「絶対なんでもなくないやつじゃん」
その後もしょぼしょぼしていた俺を見かねてらんが帰りにコンビニでアイスを奢ってくれた。
この間までの暑さが嘘のようになくなり、最近は涼しくなった。天気も曇っている日が多く、風も強い。風が窓にあたる音はガタガタとうるさく、締め切った窓のせいで教室の湿度は少し高くなっているように感じた。 雲が分厚くかかった空はまるで付き合っている人がいないと言った彼のことをもんもんと考えている俺の心を表しているようだ。
あの日から俺は彼に話しかけられても上手く会話ができずにいる。挨拶をしてくれても目を逸らして返してしまうし、笑いかけてくれても愛想笑いしかできない。多分相手も気づいている。だけど、追求されないから何も言わずにいた。
︎︎ ♀「ねぇ〜いるまの好きなタイプはー?」
茈「ん〜…そういうのは雨乃に聞いて」
蒼「こさは可愛い子なら誰でもおっけー!」
︎︎ ♀「いるまのが知りたいんだけどな〜?」
茈「お前みたいのはタイプじゃねーよ」
彼の肩に顔を乗っけてクラスの女子がだる絡みをしている。好きな人が教室内でそうしているのを見るのは正直堪えるものがある。なるべく気にしないようにと目を背けながら溜まった気持ちを吐き出すかのようにため息をついた。
桃「どうしたの〜?ため息なんかついて」
翠「幸せ逃げるよ?」
赫「幸せを吸い込むために悪いものを吐き出してるんだよ…」
桃「その考え方いいね!なんかポジティブで」
翠「とてもポジティブな人がするようなため息だとは思えなかったけどね…」
その通り。多分俺は大丈夫じゃない。あの日からずっと考え込んでしまっている。彼がどうして付き合おうを言ったのか分からないし。付き合ったからといって何か変わる訳でもなかった。ましてや付き合ってすらなかったのだ。
もうなんだか悲しくなってきた…そんな俺の心をくみとったのか、雨がぽつぽつと降り始めた。
今日の天気予報は晴れの予定だったのに天気は優れず、空には曇がかかっている。ここ最近は曇りが続いており、俺の心も曇る一方だ。
茈「よっす」
赫「あ…ども」
茈「…最近、調子どうよ」
赫「別に…普通だけど」
俺の様子がおかしくなったの気づいても彼は相変わらず話しかけてきたが、流石に気まずくなったのかここ数日はあまり話しかけて来なくなったし、教科書忘れもなくなった。だが、今日久しぶりに彼に話しかけられた。
茈「なんかずっと様子変だったからさ…俺なんかしちゃった感じ?」
赫「別に、なにも」
茈「…やっぱりなんか変だよな」
赫「そんなことないって笑」
茈「少し経てば治るだろって思って放置してたけど、流石に長すぎ」
茈「何かあるならはっきり言えよ」
赫「別になんでもない」
そう言って席を立とうとしたら彼に腕を掴まれた。掴まれた腕から彼が少し焦っているのを感じる。
赫「別に…ただ隣の席なだけでめちゃくちゃ仲のいい友達ってわけでもないから良くない?」
茈「はぁ?何言ってんだ…俺とお前は付き合っ…」
赫「そういう冗談もういいから」
自分の口から発した心に胸が痛くなる。彼はおそらく俺を心配して言ってくれているのに、自分が惨めすぎてこんな言い返し方しかできないのか嫌になる。ますます自分が嫌いになっていく。でも、元はと言えばこいつがあんな冗談言ってきたのが悪いんだ。
茈「はぁ?冗談って何」
赫「付き合ってるとか」
赫「大体、俺がお前のこと好きだからってそういうのふざけたことは言わないで欲しいかな」
茈「はぁ??ふざけんな!!!」
彼は急に大きな声を出した。その大声にクラスにいる人たちの目が一斉にこちらを向いた。らんとすちも心配そうにこちらを見ている。目立つのが大嫌いな俺が今まさに注目を浴びているのだから。
彼が何にこんなに怒るのかが分からない。困惑して何も言えずにいると彼は俺の手を引いて教室を出ていった。
強く腕を握られ半引きずられるようにして俺は彼の後をついて行くと、人気のない教室に入らされた。ドアを完全に閉め切り、鍵を荒々しくしめる。
茈「さっきの…冗談ってどういうこと?」
赫「…お前がクラスの女子に付き合ってる人いないとか言ってたから」
茈「あれは…!お前に許可もとらずに言うべきじゃないと思ったからで…」
赫「なら後からでも俺に許可とればよかったじゃん」
茈「お前がその話知ってるとは思わなかったんだよ」
いるまが言っていることは正しい。間違っているのは多分俺だ。相手に何も聞かずにひとりで勝手に決めつけて、自分が傷つくのが嫌で逃げようとした。
赫「ごめん…」
茈「なんで謝んだよ」
赫「だって俺…」(ジワ…
茈「…」
なんでお前も泣きそうな顔してんだよ。
俺が謝った途端、いるまの表情が曇った。彼も彼なりに自分に非があると考えていたんだろう。
赫「変な態度とってごめん…事情は分かったから」
茈「じゃあ、これからは今まで通りでお願いしますわ」
赫「…でも、付き合うとかはなしにしよう」
茈「は?」
赫「だっているまは俺のこと好きとかじゃないわけだし、きっともっと相応しい相手いるし…」
茈「ふざけんな!また勝手に考え込みやがって!俺は…!」
赫「もう惨めになるのは嫌なんだよ!!」
茈「…ッ」
赫「もう放っておいてくれ」
茈「待って…!!」(ギュッ…
茈「好きなんだ…」
初めて見た時、すごく可愛いと思った。
1年の秋、そろそろカーディガンが欲しくなってくる時期に2階の教室の窓から外を覗いた時だった。1人の女子生徒が花壇の横でうずくまっているのを見た。そこは人通りが少なく告白するのに都合のいいスポットだったため、あの女子生徒も告白して振られてんだろう。
しばらく眺めていると彼がやってきた。色素の薄い茶髪に少しだぼっとベージュのカーディガンを着た彼は、うずくまっている女子生徒の横にそこら辺で買ったであろうお茶とハンカチを置いてすぐ立ち去って行った。
あいつ、なんであんなことしたんだ?遠くて顔は見えなかったものの、校章の色が赤色だったことから同じ学年だと言うことがわかった。
茈「なぁ、マッシュっぽい茶髪の男ってこの学年にいる?」
蒼「そんな子いっぱいいると思うけどw」
茈「多分身長俺と同じ」
黈「いるまくんでも知らないってことは、俺らとあんまり関わりない子だな」
蒼「あ!暇くんじゃない?隣のクラスの」
茈「暇…?」
蒼「そ!綺麗な顔してるよねーちょっと地味だけど」
茈「暇か…」
隣の教室ということはおそらく俺と同じように窓からあの子の様子を見て急いで外に行ったのだろう。あそこは人通りがほぼ無いため、そうじゃなきゃ気づきっこない。わざわざ自販機でお茶まで買って、しかも気を遣って何を言わずに去ったのだろう。そう考えると彼の行動が物凄く可愛いと思ってしまった。おそらく彼は不器用なのだろう。でも自分の優しさに正直な人だ。俺は顔を見たことがない彼に自然と惹かれていった。
2年に上がる時、奇跡だと思った。ずっと気になってた子と同じクラスになれた。すぐにでも仲良くなりたかったが、全然属性が違ったため、変に話しかけに行くのは変だと思った。
そしてそのまましばらく経ち、席替えでその子と隣同士になった。なんとか話すきっかけを作りたくて席替え初日は教科書を忘れたふりをしてその子に見せてもらった。
それからもバレない程度に教科書を忘れたふりをしては会話をするきっかけにした。俺のことを紫咲くんと呼ぶので名前で呼ぶように言うと、その子は照れくさそうにも俺の名前を呼んでくれた。それがとても嬉しくて、授業中に必要以上に喋りかけてしまった。もうとっくに気になっているから好きに変わっていたのだ。
半年間好きな子に話しかけれもしなかった俺はそこそこ拗らせていた。やり方が女々しいし、だいぶ意気地無しな自覚はあったが、これでも俺は真剣に攻略法を考えていた。 そんなこんなで日々悩んでいる俺だったが、そんな悩みが吹っ飛ぶ出来事が起きた。
あの子にいきなり告白された。告白された時は混乱してみっともない姿を見せてしまい、相手にも心配させてしまった。だが、俺はこんなチャンスはないと思い、付き合おうと提案した。真剣に攻略法を考えていたがそれはもう無意味だと気づき、俺はすぐに付き合ってからどうするべきかを考える方向に視点を変えた。だが、拗らせてに拗らせまくった俺は上手く事を運ぶことができず、いつの間にかすごいすれ違いを生んでしまった。
いるまが…俺を好き?
彼に抱きしめられながら俺は呆然とする。確かに一応付き合ってはいたが、彼の口から好きという言葉を聞くのはこれが初めてだった。
赫「…好き?」
茈「好きだ!」
赫「え…」
茈「好きなんだよ…だから、付き合わないなんて言うな…」(ギュゥゥッ
そう言う彼の声は震えていた。抱きしめる力がより強くなる。何がなんだかよく状況が理解できないが、彼が本気なのは伝わってくる。2人きりの教室で好きな人に抱きしめられている。心臓が今までにないくらい速く脈打つのを感じると同時に彼の心臓の鼓動も伝わってくる。その鼓動は俺よりも速いように感じられた。
赫「…俺も好きだよ」(ギュッ
そう言って俺は彼を強く抱きしめ返した。すると彼も応えるようにさらに強く俺を抱きしめた。
赫「流石に痛ぇって笑」
茈「ごめん嬉しくて…」
そう言ってお互いに確かめるようにまた強く抱き締め返す。最近はずっとひとりで迷走してばっかいたからこんなに心が満たされたのは久しぶりな気がする。
先程まで曇っていた空も、天気予報通りに雲ひとつない晴天となっていた。
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少しはマシになりましたかね…
なんかめっちゃオーソドックスな話になっちゃったかも…w
ノベル書くの楽しいかも!
コメント
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待ってましたああ❕ 最初の茈彡に対してなんだこいつって思ってスマホに空振りかましてたけど、途中から赫彡の勘違いって気づいてもうどちゃくそに口角飛んでいきました🫶🏻🥹 これは正式に付き合ったということですね!?うう、これからのお話が楽しみすぎて既に発作が...ッ!! 待ってます👊🏻👊🏻👊🏻