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4日後、私たちはクレントス北東の端、|人気《ひとけ》の無い浜辺を再び訪れていた。
前回と違うのは、ポエール商会が集めてくれた土木建築の職人さんが91人いるのと、護衛が12人いるのと、あとはクラリスさんを連れてきたことだ。
「――海、ですね!」
馬車から降りると、クラリスさんが水平線の彼方を眺めながら興奮して言った。
表情がキラキラしているのが何とも微笑ましい。
「クラリスさんは、海は初めて?」
「はい、ずっと王都におりましたもので。
それにクレントスに向かう途中も、海岸沿いは通りませんでしたから」
「ちょっと遊んでみる?」
「いえ、さすがにそれは……」
「あー……。
そうだ、私はこれからやることがあるから、その間にリリーの面倒を見てもらえると助かるなぁ。海で遊んであげるとか……。
ついでにグリゼルダの面倒も、よろしくしたいかなぁ……」
「ぐ、グリゼルダ様もですか!?
……かしこまりました、それではリリーちゃんと一緒に何とか……!」
「うん、よろしくね。
潮の流れが強いかもしれないから、あんまり海の中には入らないようにしてね」
「はい。水着も持ってきていませんし、それは大丈夫です!」
……おお、そう言えばこの世界、水着もしっかりあるのか。
今まで海とか川には縁が無かったから、水着を探したことはまだ無かったなぁ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ポエールさん、来ましたよー」
ルークとエミリアさんと一緒に、ポエール商会の集団に入っていく。
一番奥のところで、ようやくポエールさんを見つけることができた。
「アイナさん、ご足労ありがとうございます!
早速で申し訳ないのですが、アイナさんのお店はもう少し陸の方で考えています。
こちら問題ないでしょうか」
「はい、大丈夫です。
晴れているときは良いですけど、天気が悪いときは大変ですからね」
この辺りには台風のようなものは無いそうだが、それでも豪雨になったときは、海の近くは危険になってしまう。
海の近くにお店を構えたいという希望は特に無かったので、お店は安全な場所に構えることにした。
「ここから少し陸に入ったところに、開けた場所があるんですよ。
街の規模が大きくなったときには、ちょうと中心の辺りになると思います」
「……とすると、少し歩く感じですね」
そう言いながら、ポエールさんの開いた地図に目を落とす。
いつの間にやら、この周辺の詳しい地図を作成していたようだ。
「はい。この地図で言うと、この辺りになります。
アイナさんのお店の近くには専門的なお店を集めて、海側には大きな宿泊施設を作って……そこは観光スポットにしたいな、と」
「ふむふむ……。まさにオーシャンビューってやつですね!」
「はい! アイナさんのお店を作ってからの話になりますけどね」
「それにしても、宿泊施設……ですかぁ」
「……あの、何か?」
「それ、ポエールさんのところで全部やっちゃう感じですか?
私も少し、噛みたいなぁ……って」
「ほう、神器の魔女様プロデュース……というわけですね!」
「私の街で宿泊施設に力を入れるなら、それを切り盛りしてもらいたい人がいるんですよ。
何も相談していないから、承諾してくれるかは分かりませんけど」
「なるほど! ……そうですね、ポエール商会としては問題ありません。
その方との契約は、ご本人様と相談させて頂きましょう」
「世界一の宿屋を目指していた方なので、できれば大きな権限をあげて活躍してもらいたいんです。
……すいません、我儘言っちゃって」
「いえいえ、ここはアイナさんの街になるのですから!
ああそうだ。後日、利益の分配についても相談させてくださいね。ポエール商会だけが利益を得るわけにもいきませんので」
「……何だかポエールさん、やたらと良心的ですよね。
商人ってもう少し、自分の欲に忠実なイメージがあったんですけど」
「ははは。前にも言ったと思いますが、私だってアイナさんの仲間のつもりなんです。
仲間が国を作ろうというときに、自分ばかりが良い目を見るわけにはいきませんよ!」
「それは何とも、ありがとうございます……?」
「それにですね。私が私腹を肥やそうとしても、アイナさんが国主として実権を握るわけじゃないですか。
いざとなれば、ポエール商会の全財産を没収することも可能になるわけで……!」
「ああ、確かに」
「いや、本当にやるのは勘弁してくださいね!?
……とまぁ、仲間うんぬんは置いておいたとしても、やはり共存共栄が望ましいのです。
だからアイナさんは我儘でも何でも、私共にそれを素直にぶつけて頂ければ幸いです」
「分かりました、ありがとうございます。
この街、この国は私の夢を叶える場所ですが、ポエールさんたちの夢も是非、一緒に叶えていきましょう」
「是非とも!
それではお店の予定地に向かいましょう。途中では『例の仕事』をお願いしますね」
「はい。配分が分からないので、指示はくださいね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――ポエールさんの言った『例の仕事』。
それは資材の運搬である。
街作りには大量の資材を使用するため、クレントスからここまで運ぶ必要があるのだが、まともにやっていたのではかなりの人手を要してしまう。
さらに馬車の手配なども必要になるため、かなりの金銭的な負担になるところなのだが――
……あっさり解消する方法があったのだ。
それが私の、収納スキルLv99!!
何を隠そう、容量はほぼ無制限! しかも時間経過も発生しない!
まさに今回、最大限に輝くスキルなのだ!!
「それじゃ、出しまーす」
「それではこっちには砂利をお願いします」
「はーい」
指示のあったものを、指示のあった分だけ出す。
本来ならかなりの重労働のはずだが、私に掛かれば『えい、やあ、とう』くらいの仕事だ。
「凄い……。これが魔女の力か……」
「酒作りだけじゃなかったんだな……」
「一家に一台、欲しいなぁ……」
私の働きに、職人さんたちからの評価も上々だ。
最後が何だか、どこかで聞いたことのある言いまわしだったけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昼食を挟んで4時間後、私たちはようやくお店の建設予定地に到着した。
道すがらで資材を出してきたのは、まずは私のお店までのライフラインを確保するためだ。
上水道と下水道は、しっかりしておきたいからね。
「このあたりはお話のあった通り、少し開けていますね。
……とは言っても、何も無いですけど」
「はい! 特に障害物のようなものもありませんし、すぐに作業に入れますよ!」
「お店と一緒に、住居も建てるんですよね?
ああ、そうだ。アドルフさんの鍛冶屋の件って、どうなりました?」
「はい、そちらも|恙《つつが》なく。
大枠は事前に協議済みですので、あとはアドルフさんに来て頂いて、内部はそれから……という流れです!」
「相変わらずのフットワークの軽さですね。
では必要な資材を出しますので、指示をお願いします」
「かしこまりました!
ここが今回のメインなので、量が多いのですが――」
私はポエールさんの指示に従って、大量の資材を出し続けた。
その量には自分でも驚いたけど、よくよく考えればアイテムボックスに入れるときも、大量の資材に驚愕していていたっけ。
実際、アイテムボックスには街の外の開けた場所で入れていたくらいだし。
……そんなこんなで、そこからはさらに1時間が掛かってしまった。
もうすぐ夕方。
ジェラードには時間を取るって言っていたけど、そっちは明日にしてもらおうかなぁ……。