「君という沼に。」
カーテンの隙間から覗く赤い夕日。
少し埃っぽい図書室で、私は先輩に言われた。
no「 な ん で 逃 げ ん の 。
あの綺麗な瞳はきらりと光っている。
まるで獲物を逃さない。そう誓った狼のようで、
私は体を動かすことができなかった。
et「 ….. 逃 げ て ま せ ん 、
そう抵抗したけど、先輩は引かない。
ただ、震える私の手を握って、私の唇を塞ぐだけだった。
「 ね 、n o 先 輩 の こ と 見 た ?
「 今 日 も イ ケ メ ン だ っ た よ ね 〜 ♡
「 さ す が 、 ” 優 し い 王 子 様 ”!
優しい王子様。
学校ではそう言われてる。
文武両道で、優しくて、礼儀が良くて。
何より、顔が整っている。
そんな先輩は王子様みたいだ、と学校の女子達は言っていた。
みんなは知らない。
先輩の裏の顔なんて。
多分、知ろうともしていないだろう。
「 き ゃ ー ! n o 先 輩 が き た わ 〜 !
no「 み ん な お は よ う 。
でた。その微笑み。
みんなを虜にさせるあの微笑み。
et「 …….
馬鹿らしい。
なんであんなクズな先輩のことをみんな好きになるんだろ。
et「 …….!
一瞬だけ、目があう。
すると先輩は、綺麗な深い青い瞳をくしゃっとして笑った。
私にしか見せない、あの笑みを。
昼休み。
私は一人で、ご飯を食べていた。
友達はこの学校にはいないし、彼氏もいない。
毎日退屈な日々を送っている。
____が、
そんな日々にひょっこりと入ってくるのが先輩。
no「 e t ち ゃ ん 。今 日 は 、校 門 の 前 ね 。
そう、耳に私にしか聞かせない声で言った。
そういうところが、
et「……. は い 。
本当にずるい。
賑やかな声が通り過ぎる校門の前。
私は先輩の言う通りに、校門の前で待っていた。
no「 御 免 、遅 く な っ た 。
先輩はいつも女の子と戯れてからくるから、
6限の終わりから一時間経ったごろに来る。
いつものことだからもう慣れてしまった。
et「 先 輩 、な ん で 今 日 は 外 な ん で す か 、
no「 ん 〜 ? 内 緒 〜 。
そう言って、川の向こう際に出ている夕日を見る先輩。
夕日が先輩の横顔を当てる。
no「 ど こ 行 き た い ?
et「 え ?
no「 今 日 ぐ ら い ご 褒 美 あ げ る よ 。
そう言って、先輩は私に向かってくしゃっと笑った。
そういうところが、本当に嫌い。
et「 ……. じ ゃ あ 帰 ら せ て く だ さ い 。
no「 ……. そ れ は ダ メ 。
そう言って、先輩は私の手を握って、
走り出した。
ピンクのライトが照るホテル街。
先輩は私の手を離し、受付へと向かっていった。
no「 ワ ン ル ー ム で 。
ああ、今日もするんだな。
なんでこうなっちゃったんだろうな。
そう毎日の疑問が頭を遮る。
no「 い く よ 。
et「 ……. は い 。
そう言って、先輩はまた強く私の震えた手を握った。
先輩の手は、大きく、指は長く、ゴツゴツとしている。
世の中の女子達には安心感があるんだろうけど、
私はそうは思わない。
ガチャン。
と、扉の閉まる音が狭い部屋に響く。
et「 あ の 、お 風 呂 入 っ て も 良 い で す か 、 ?
no「 だ め 。
そう言って、先輩は私の橙色の髪を撫でる。
これは、いつもの合図。
no「 脱 い で 。
et「 ……. ビクッ
私は言われた通りに、
上下の服を脱ぎ、下着だけにする。
これは先輩の好みのスタイル。
後々、入れる時にずらしてやるのが好きなんだそうとか。
no「 e t さ ん 、♡
そう言って、先輩は私を押し倒した。
先輩の熱い吐息が耳にかかる。
ゆっくりと私の上の下着を外し、
いつものように固い手で、私の胸を触った。
ゆっくりと触って、私が声を出したらそのまま早く触るのが
いつものスタイル。
et「 あ ッッッッ ♡
私が絶頂に達した後、
先輩はそれを見ながら、
優しい王子様の仮面を外して、
狼へと変身する。
私はその瞬間が、昔から好きだった。
et「 ……. ん 、
どのくらい眠ってたんだろう。
多分行為を始めたのは18時くらい。
今は22時だ。
カーテンから夜の街灯の光が差し込む。
お風呂からシャワーの音がするから、
多分先輩はお風呂に入っているんだろう。
et「 ……. !
私の真隣にあった先輩のスマホ。
いろんな人からチャットが来ている。
私は興味本位で、そのスマホの画面を見た。
たくさんの女の子からのチャットの通知。
そこには、
「次いつできる?」
とか
「また私を満たして」
とメッセージが来ていた。
et「 ……. ッッッ 、
なんで体が重くなるんだろう。
なんでこんなに涙が出るんだろう。
それは私にも”まだ”わからなかった。
そしてまた、私は先輩のシャワーの音を聞きながら、
瞼をゆっくりと閉じた。
no「 お い 。起 き ろ 。
朝。
先輩の声で私は飛び起きた。
et「 お は よ う ご ざ い ま す 、
no「 ……. ん 。
先輩の瞳は携帯から動かない。
服は学校の制服じゃなく、先輩のお洒落な私服だった。
多分この後も女の子達と遊びに行くんだろう。
no「 昨 日 。ど う だ っ た ?
et「 …….
no「 ど う だ っ た っ て 聞 い て ん の 。
et「 ……. ッッ !!
昨日のメッセージが頭を遮る。
先輩は私の手汗がびっしょりの小さな手を握りながら、
おでこを向かい合わせにぶつけた。
先輩の長い長いまつ毛が何個あるのか数えられる距離だ。
海のように深い青い瞳はいつものように光っている。
et「 別 に 、普 通 で し た し …….
no「 嘘 だ よ ね ?
また強く握ってくる。
私の小さな手が潰されそうだった。
no「 だ っ て 、
no「 あ ん な に 気 持 ち 良 そ う に し て た じ ゃ ん 笑
確かに、先輩のものが入ってくるまでは気持ちよかった。
それは認める。
でも、入ってきた後は本当に痛くて、辛かった。
だけど、
「私の中に入ってる。」
「奥に突かれてる。」
って思うと、なんだか気持ちがよくて、
同時に罪悪感が出てきた。
私はため息を一つ吐き、
先輩の手を外した。
手は思ったよりもするりと抜けて、先輩も抵抗をしなかった。
et「 じ ゃ 、さ よ な ら …….
そう言って、私は抜け出そうとした瞬間、
先輩は口を開いた。
no「 違 う で し ょ 。
et「 ……. え ?
違う?
何が違うの?
私はおもわず間抜けな声を出してしまった。
すると先輩はニヤッと笑って、
no「 ま た ね 、で し ょ ?
ああ、
あの笑顔だ。
みんなを虜にさせる、あの笑顔。
いや、
私だけに見せるこの笑顔。
ああ、
本当にずるいなぁ。
先輩は。
ー 過去
先輩とは別次元の人だった。
いや、私は先輩と関わりたくなかった。
あんなキラキラしてる人なんて。
私はそういう人たちが苦手だった。
高校一年生の春。
私が学生証を落として、探してたら、
no「 落 と し ま し た よ 、
先輩は私の学生証を拾っていてくれた。
でも、先輩は意地悪な笑みを浮かべて、渡してはくれなかった。
et「 な 、な ん で も す る の で …….!!
no「 ……. な ん で も す ん の ?
et「 は 、は い ッッッッ 、
no「 ……. へ ぇ 、♡
今考えると、あんなこと言わなきゃよかった。
いや、学生証を落とさなきゃよかった。
そうすれば、この先輩と関わるはずがなかったのに。
それから、毎日のように先輩に呼び出されては、
愛に堕とされ、を繰り返していた。
ー 現在
学校終わりの夕方。
今日は先輩に呼び出されてないから、家に帰ることにした。
「 今 日 デ ー モ ン ハ ン タ ー の 最 新 刊 が 出 る ら し い ぜ !
「 じ ゃ あ 行 こ う !!
et「 最 新 刊 …….. 暇 だ し 買 っ て く か 。
そう言って、私はそのまま近くの本屋さんへ向かった。
それを誰かに見られていることにも気づかずに。
et「 ど れ だ ろ 、
本屋は意外と混み合っていて、
私は見つけるのに時間がかかっていた。
?「 e t ち ゃ ん ……. !?
突然背後から名前を呼ばれ、
私は後ろを向く。
et「 rn …….!
声の主は、
rn「 お 久 し ぶ り で す …….!
他の学校に通っている
親友のrnだった。
結局、本は買わずに私はrnと、
近くの公園で話すことになった。
販売機で買ったコーラがやけに冷たい。
rn「 い つ ぶ り で し た っ け ?
et「 多 分 、中 学 校 の 卒 業 式 じ ゃ な い ?
rn「 う ぇ 、そ ん な 前 ……. !?
中学校でうざかった先生のこと、
付き合っていたあのカップルはどうなったのか、
とかくだらない思い出話をたくさんした。
rn「 て い う か !
rn「 e t ち ゃ ん の 学 校 っ て 、n o 君 い ま す よ ね ?
私の耳がぴくりと動く。
先輩のこと…….?
rn「 n o 君 イ ケ メ ン で す よ ね 〜 !
rn「 な ん か 王 子 様 み た い で !!
なんでだろうな。
なんでこんなに胸が痛いんだろうな。
rnが先輩のことを話す度に。
rnが笑顔で話し度に。
胸に矢が刺さってくるように、
ズキズキと痛くなる。
rn「 ……. e t ち ゃ ん 、n o 君 の こ と 知 っ て ま す ?
rn「 よ か っ た ら 紹 介 し て 欲 し い な 〜 な ん て ______
ベチンッッッッ
手に、激痛が走る。
耳に、誰かの鳴き声が聞こえる。
目の前でrnが崩れ落ちて、綺麗な涙が真っ赤な頬に慕っている。
ああ、私。
親友のこと叩いちゃったんだ。
ドカッドカッッ
脚が勝手に動いて、
rnの綺麗な服が泥まみれになる。
「 お い 、何 し て ん だ よ !!
知らない男の人に、胸ぐらを掴まれ唾を吐き捨てられる。
こっちのセリフだよばか。
私はなんもしてないし。
先輩の思惑通りに壊れちゃっただけだし。
男の人の必死な顔。
rnが地べたで泣きながら私を見つめる。
「見損なった…….」
「馬鹿みたい…….」
そんな瞳、そんな顔。
et「 あ は は っ 、笑
馬鹿らしい。
見損ないのは元から知ってるし、
馬鹿なのも知ってる。
だからそんなこと知ってんだから言わないでよね。
ただ私は、
私の青春も、親友も、人生も壊されちゃったんだ。
先輩に。
胸ぐらを掴まれながら殴られ、蹴られる。
ちゃんと手入れのしていないカサカサの頬には血が流れ出ていた。
口の中から真っ赤なルビーのような血が出てくる。
もう1蹴りで死ぬ、そう思った瞬間、
no「 ね 、何 し て ん の 。
大好きな声。
上を見なくても、誰だかわかった。
先輩だ。
no「 立 っ て 。
私は言われた通りにフラフラな脚を持ち上げ、立った。
先輩は私の小さい手をいつもみたいに包んでくれた。
今日だけ、安心感があった。
rn「 e t ち ゃ ん 、
rnの弱々しい声が背後から聞こえたけど、
私はそれを無視して、
先輩と手を繋ぎながら隣を歩いた。
冷たい雨粒がアスファルトを叩くのを見つめながら歩き、
肩に沢山の雨粒が滴り落ちる。
no「 大 丈 夫 ?
et「 ……. は い 。
泥が飛び散る土手で、やっと口を開いてくれた。
先輩は私の服についた雨粒たちを手で払いのけてくれている。
no「 心 配 で つ い て き た け ど …….
no「 怒 っ た か ら っ て 叩 い ち ゃ ダ メ で し ょ 。
et「 ……. 御 免 な さ い 、
no「 て い う か 、俺 の こ と 好 き だ っ た の ?
et「 ……. へ ッッ 、
先輩が近づいてきたのと、びっくりして顔が真っ赤になった。
頬が熱でも出たんじゃないかと思うくらい暑い。
no「 だ っ て 、殴 っ て た 前 に 、
no「 僕 の こ と 話 し て た か ら 怒 っ ち ゃ っ た ん で し ょ ?
怖い。
深い青い瞳がいつもみたいに光った。
et「 ち 、違 い ま す し ッッッ 、
no「 じ ゃ あ 、違 う な ら な ん で ?
そう言って、私の顎を持ち上げる。
et「 た だ 、私 は ッッ 、
no「 な あ に ?
でも確かに、
怒ってしまった理由は、嫉妬なのかもしれない。
et「 ……. ッッッ 、そ う で す 、
私は他に何を言えばいいのか分からなかったから、
先輩の瞳から目を逸らし、ゆっくりと頷いた。
no「 ふ ぅ ん ……. ♡
そう、熱い吐息が私の耳にかかる。
恐る恐る、先輩の瞳を目に映した。
いつものように、青く深く、澄んだ瞳。
その瞳にはビクビクしている私が写っていて、
その奥には、
et「 ……. は ー と 、?
ハートが映し出されていた。
et「 ……. ッッッ !
私は危険を察知し、
逃げようとした_____が、
no「 逃 し ま せ ん よ ♡
私の小さい手をあの大きい手がまだ包み込んでいた。
生ぬるく、ドロドロとした感触。
安心感はもうない。
もう一つの大きい手が私の顎を持ち上げ、
先輩の綺麗な整った顔が近づく。
et「 ……. ッ 、♡
私の血まみれの唇に、
先輩の唇の感触が伝わっていく。
舌が絡みつき、唾液が雨粒のように滴り落ちる。
私の瞳からは溢れるほどの涙が出た。
愛が溢れて、涙も同じように溢れた。
その涙を先輩は長い舌で舐めた。
私の体がびくりと震える。
no「 ……. 大 好 き で す よ ♡
ああ、本当にずるい。
そんな3文字の言葉なんて、他の子にも言ってるくせに。
私、先輩のことが大好きだ。
いや、愛してるんだ。
元々知ってたけど、認められなかった。
だって、
私は先輩を色々と満たすために私を使うだけで、
先輩は私を本気になんてしていない。
だから、こんなときめいた感情なんか、
段ボールに押し込まないといけないのに。
でも、
私の奥へ奥へと突かれるたびに、
自分の名前を甘い声で言ってくれるその声に、
ぐちゃぐちゃになった私を見つめるその瞳に、
“私だけ”のその笑みに、
ずっとずっと、
深く、深くへと愛が堕ちていく。
貴方がこぼれ落ちて、愛が溢れていく。
私は、貴方を、
殺したいほど愛してる。
そう気づいてしまったのは、
この関係が始まって半年後だった。
多分これからも、
あなたに沼り沼って、
愛していく________
コメント
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ほ ん と う に す き で す ‼️‼️ ま ー じ で 表 現 は ま い か い 好 き だ け ど 、 な ん だ ろ 、 仕 草 を わ ざ わ ざ 遠 回 し に 伝 え る み た い な 、 直 接 よ り 間 接 に 、 ( まじで意味不明でごめん 何 と い う か et さ ん の 気 持 ち も す ご い わ か る し 、 複 雑 な 感 じ も 最 高 で し た ︎︎👍🏻︎👍🏻
つきなちゃんちょ~好きだo̴̶̷ ̫ o̴̶̷̥᷅
す ご い と し か 言 え ん ✨️✨️ や っ ぱ 上 手 す ぎ る 🫵🏻💗