テラーノベル
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※実際の団体、個人とは無関係です。
※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他、捏造した設定が多く含まれます。
※中華絵巻を元にしてます。
※※※ 閲覧には十分注意してください。
「アキラ〜、この…にんじん、って使う?」
「いえ、今日は使いません。戻しておいてください。」
すっかり日が落ちた頃、雲雀と四季凪と、二人で少し遅い夕食の準備をし始めている。
本来であれば今日はセラフが食事当番のはずなのだが、まだ帰ってこないため四季凪が代わらざるをえなくなった。
そんなにミラン君との話が弾んでいるのだろうか。
四季凪が鍋をかき混ぜている間、雲雀は落ち着かないのかずっと使う”かもしれない”食材を持ってきては戻して、を繰り返していた。
セラフがここまで帰ってこないのは雲雀が来てから初めてのことだ。落ち着かないのも納得する。
座るように言っても同じで、すぐにそわそわしてしまう。
どうしたものかと四季凪が鍋をかき回しながら考えていると外からカランと金具がぶつかる音がした。
「今の音!セラお、帰ってきた?」
持っていた人参もそのままに、音と同時に雲雀は玄関前まで駆けていった。
四季凪は火にかけた鍋を放置することもできず、視線だけは雲雀を追っていった。
「セラおー!おかえりなさい!!……はぇ…??」
「……た、ただいまぁ〜…。」
玄関の扉が開いた音と雲雀の元気な出迎えの声が聞こえた。が、続いた声は明らかに戸惑いのものだった。
それから同じように戸惑いと恐れを孕んだセラフの声と、シャラシャラと鳴る聞き覚えのない高価そうな布ズレの音がした。
四季凪も鍋を放置して玄関まで行くと、セラフの後ろに金色の長い髪を揺らした、雲雀と同じ齢くらいの青年がいた。
俯いていたが雲雀を見た瞬間、大きな青い目がさらに大きく見開かれた。
「……雲雀…?」
「奏斗っ!!!」
四季凪がセラフへ声をかける前に雲雀は金髪の青年を強く抱きしめていた。
金髪の青年も高価そうな装いを気にすることなく、手を伸ばして飛び込んできた雲雀を受け止めていた。
「セラ夫、貴方……、」
状況を飲み込めず、ただ呆気に取られる顔をしてみせる四季凪。そんな彼に申し訳なさそうに笑いかけながらセラフは頬を掻いた。
「ごめん。ミラン君からの依頼料、全部この子に…」
そう言うとセラフは視線を、抱きしめ合っている二人へ向けた。
誘導されるように四季凪も地べたにへたり込んだ二人を見た。お互いに涙を拭い合いながら、よかった、また会えたと喜んでいる。
「……そうですか。」
安心したような顔をして、二人から視線を外し、四季凪が壁にもたれ掛かる。想定どおりだったとでも言いたげだ。
ミランに宛てた書類の中にはあの店の子たちの前の身元も調べてあった。きっとセラフもそれを見たのだろう。
だが、彼らの戸籍は家が没落したとともに消えていたのだ。
だからこそ、男児であるにも関わらずあの店にいたのだろうし、抜け出すことができなかったのだろう。
それに、あの茶屋へ行ってからというものセラフはやたら物憂げで、恋煩いのようなのは目に見えていた。
過程がどうあれ、四季凪にはセラフが奏斗を連れて帰ってくることは予想どおりであった。
ーー
ーー
「ぐす、……奏斗と申します。先程は礼を欠き、申し訳ありませんでした。身請けていただいた旦那様、それからご家族の皆様にはご迷惑をお掛け致します。」
「そんな堅くならなくても…」
出来上がった四季凪謹製の料理を前に、奏斗は腫れた赤い目をしながら教科書どおりの礼をした。
その背を心配そうにさすりながらセラフは彼に座るよう促した。
まだいくらかしゃくりあげているが、優等生らしい恭しい礼。セラフが奏斗を見初めるに至った綺麗な仕草だ。
「大丈夫ですよ。慣れるまでは大変でしょうけど、ゆっくり。ね。」
「そーだぜ、奏斗!」
優しく微笑みかけられただけでまた涙ぐむ奏斗に、来たばかりの頃の雲雀を思い出したセラフと四季凪は目を合わせて微笑んだ。
それから、シャラシャラした服では食べづらいだろうととりあえず雲雀の服を貸してやり、四人で食卓へついた。
「あり合わせでごめんなさいね。今度きちんと歓迎用の食事を出しますから。」
そう謝る四季凪からそれぞれカトラリーと粥を受け取り、食事が始まった。
遠慮なくぱくぱくと食べていく雲雀を信じられないという顔で見ながら奏斗も箸を持つ。
が、やはり自分で料理を選べずにまごついている。
「……ねぇ、セラフ、どれを食べていいの?」
「ん?好きなの食べていいよ。取ってあげる。」
「好きなのって…」
奏斗が恐る恐る一番手前にあった野菜スープが欲しいとセラフへ伝えると、お椀に具とスープを零さない程度にたっぷりと乗せて奏斗へ手渡す。
目の前のお椀とセラフを見比べてから奏斗は怖怖と白菜を箸で持ち上げて、じっと見つめている。
「熱いから冷ましてる間に別の食べる?」
「あ…えっと、…い、頂きます。」
熱い食べ物に抵抗があるのかと思い、セラフが声をかけると、 慣れない様子で数回ふー、ふーと冷ましてから白菜を口にした奏斗。
彼の手のひらぐらいの大きさで切られているため一回では食べ切れなさそうだったが、頬を膨らませることで解決させていた。
長い咀嚼をしてから奏斗の喉がこくんと鳴る、すると、青い目が潤んでキラキラと光を湛え始めた。
「美味しい?」
「うん…!おいしい、…温かい……」
「そっか。」
セラフが聞くとめいっぱい頷いて、 次の野菜を箸で取って同じように長い咀嚼をする奏斗。
ひと口、またひと口と食べすすめる度にぽろぽろと涙が落ちていった。
コメント
1件
コメント失礼します՞ᴗ͈ ̫ ᴗ͈՞今回も素晴らしい作品をありがとうございます👶🏻🎵奏斗くんが良い道へ歩んでいったことにとても感動しました😿✨次回もお待ちしております🙇🏻♀️՞