「ん…」
冷たい柩の中でゆっくりと目を覚ます。重々しげに自分の体を起こした僕は周りを見渡した。1人、また1人と柩から起き上がってくる。起き上がってきた人たちはみんな、はっきりしない、ぼんやりとした表情だった。僕たち新1年生はこの学校特有の式典服を身に着けていた。いつ着たかはわからないけど。僕は立ち上がって、他の新1年生たちを置いて何も考えずその部屋を離れた。ひとしきりこの学校の中を歩いてはみたものの、どこにも2、3、4年生は見つけられなかった。最後にたどり着いたのが鏡が無数に配置してある部屋だった。この部屋に全ての生徒は集められている様だ。僕も部屋に入る。式典服のフードを少し深めにかぶり、顔を見られないようにした。人に認識されたくないからだ。しばらく待つと僕と同じ新1年生がこの部屋に入ってきた。今から寮分けを行うらしかった。本来なら僕も寮分けを受けるべきなのだろうけど、やっぱり人に認識されるのが怖かった。だから僕はどの寮にも属さない。手には透明な魔法石がはめてあるマジカルペンと、制服を着るときにつける白いリボンがあった。
「あぁ…」
オンボロ寮の一室にあるベッドで目を覚ます。ここの主である監督生のユウからちゃんと了承を得てこの部屋を使用している。本当は誰とも接触せず過ごしたかったけど、どの寮にも属さないと決めたからには仕方のないことだった。彼には僕のほんの一部の事情だけ伝え、この部屋を貸してもらった。罪悪感が無いといえば嘘になるけど、こうでもしないと生きていけないから。僕はユウがいるであろう部屋まで降りていった。
「ユウ〜ってあれ、いない…」
彼は入学早々様々なハプニングに遭遇していた。大変だろうと思ったけど当の本人はその状況を楽しんでいるのだ。なら放っておくしかない。
「そっか、今日はなんでもない日のパーティーか。ハーツラビュル寮のいざこざ解決ついでに行くって言ってたっけ。」
そんな楽しそうなものを聞いたら行かざるを得ない。人との接触は避けたいけど、パーティーも楽しみたい。僕は自分で作ったハーツラビュル寮の寮服に袖を通した。潜入用に密かに作っていた。作りがいのある衣装だった…。鏡の前で寮服姿で1回くるりと回ってみた。なかなか似合うかもしれない。身バレ防止のために前髪で目元を隠した。うん、それっぽい。
僕は軽い足取りでなんでもない日のパーティーにでかけた。
コメント
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ノベルにしたんだね!なんか、すごくつづきがきになる!