テラーノベル
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調整日より数週間──
調査兵団では、
大規模な体制変更が進められていた。
各分隊長の特性に合わせた再編成
新兵〜若手兵士の配置・分配の変更
ベテラン兵士は、
自分の強みを活かせる隊に異動する事で、
より質の高い経験を。
新兵〜若手には、
生存率を上げ、場数を踏ませる事を目標に、
陣形の中でも内側にある隊への配属を。
損害を最小限に抑え、
巨人に打ち勝つ情報を集める。
これが、調査兵団の最優先事項だった。
━━━
「……という訳だ。」
リヴァイの執務室
現リヴァイ班の面々が揃う中、
彼は簡潔に、今後の体制について話した。
「我々は本日付で、別分隊へ異動……
という事ですね」
現副班長の兵士が、暗い面持ちで告げる。
「あぁ」
短い返答。
部屋に沈黙が広がる。
「……お前達は、今日までよくやってくれた。」
一言、短くはあったが
リヴァイなりの激励の言葉だった。
「……兵長。本当にここまで、貴方に着いてきて良かったです。」
「兵長の班員として活動できたことは、自分の一生の誇りです…!」
班員達は、口々に己の想いを伝えた──
数分後、副班長が口を開く。
「我々が異動した後、特別作戦班の班員はどうなるのでしょうか?」
「それに、レイには異動通達が無いようですが……」
彼女に視線が集まる。
今回の再編において、リヴァイ班で唯一
レイだけが異動を命じられなかった。
(……まだ、兵長の隣で戦える)
「俺の班には、新兵の中でも優秀な奴らを入れるとエルヴィンが言っていた。」
そして、リヴァイはレイに目線をやり
「こいつは新兵だ。引き続き俺の班で面倒を見る」
「なるほど。確かにレイはずば抜けて優秀ですし、班員の中で唯一、兵長の動きにも合わせられますからね。」
周りの兵士も同調するように頷く。
彼女が配属された当初、
新兵風情がリヴァイ班に……と現班員含む、
周りの兵士達からの風当たりは強かった。
しかし、彼女は壁外でも巨人に屈する事なく、
圧倒的な強さを見せつけた。
今では班員全員から一目置かれる、
そんな特別な存在になった。
「新兵となると、レイの同期が該当するかと思うが、目星は付いているのか?」
副班長が尋ねる。
「はい。人数にもよりますが、
4人ほど動きの良い兵士がいます。」
レイは、訓練兵時代の記憶を探り答える
1人目─エルド・ジン
統率力と判断力に優れている。周りの状況と兵士それぞれの特徴を加味し、より早く適切な指示・行動が出来る。リーダーシップがあり、仲間からの信頼も厚い。
2人目─グンタ・シュルツ
当時の訓練兵の中でも、随一の瞬発力を誇る。持ち前の素早さと力で、仲間のフォローをこなすだけでなく、前線で巨人の気を引きつつ討伐も可能。前線維持能力が高い。
3人目─オルオ・ボザド
普段はオドオドしており、少し頼りなく感じる事もあるが、戦闘スキルはレイに次ぐ実力者。
巨人のうなじを一発で仕留める程の強靭な肉体も持つ。
4人目─ペトラ・ラル
状況把握能力がかなり高く、機動力にも長けている。小柄な身体を活かした機敏性と、彼女の行動力が合わさり、巨人を討伐する際の補佐役として腕が立つ。
「この4人は、訓練兵時でも常に成績上位で、個々人の能力も先程述べた通りです。」
「基本的に同じ班で行動していたので、仲間同士の連携も取れます。即戦力になるかと。」
レイは同期4人について、
それぞれの強みや立ち位置を簡潔に説明した。
「レイ、お前は人を見る能力もあるらしい」
紅茶を啜りながら、リヴァイが言う。
「こいつの言う通り、
俺の班にはその4人が選抜された」
「明日には、ここに配属されるだろう」
一瞬、その場に沈黙が流れる。
「団長達がそう判断したんだ、きっとその4人はかなり優秀なんだろう。」
「俺たちが兵長の班から外されて、新兵4人が入るのは、ちょっと悔しいけどな〜」
「でもレイにも覚えられてるんだから、それだけすげぇ奴らって事だろ?」
特別作戦班に配属される事は、
調査兵団内でも特段名誉なことだ。
そこからの異動となると、
班員達はやるせない気持ちにもなるだろう。
しかし、尊敬するエルヴィンや他の上官達が
決定した方針である為、悔しい気持ちを押し込め、必死に明るく振舞っていた。
レイも、その空気は肌で感じていた。
そして──
「……私は、先輩方と同じ班で、共に任務を遂行出来て良かったです。」
表情こそ変わらないが、
彼女は本心をポツリと言った。
それを聞いた班員たちは、
身を乗り出し、彼女に抱きついた。
「レイ……!お前って奴は!」
「お前はすっげぇ強いんだから、絶対兵長と巨人共を葬り去ってくれよな……!」
レイは少し驚きつつも、抵抗はせず、
班員達を受け止めていた。
そんな様子を、
リヴァイは穏やかな顔で見ていた。
しかし、群がられているレイを見て
また少し、心に違和感を抱いた。
そして一言、
「お前ら、ベタベタし過ぎだ。気持ちわりぃ」
「そんな……!兵長酷いですよ!」
「今日が最終日なんだから、少しくらい良いじゃないですか!」
班員から特大ブーイング
「良いからさっさと離れろ」
「……分かりましたよ〜兵長」
リヴァイの威圧感を感じる声に、
渋々姿勢を直す班員たち。
「とにかく、今日が最後の夜だ!」
「楽しく派手に飲み明かす事は出来ないが、飯を食いながら今日までの思い出でも語って、締め括ろうじゃないか!」
副班長の声を皮切りに、
現リヴァイ班の、最後の晩餐が始まった──
「ちっ……うるせぇのが始まった。」
リヴァイは少し不服そうだったが、
班員達の楽しげな姿を見て
「……まぁ、今日くらいは良いとしよう」
紅茶を飲みながら、会話に耳を傾けた。
━━━
数時間後──
「皆さん、すっかり眠ってしまいましたね。」
レイは、話疲れて眠ってしまった班員達に、
毛布を掛けながらリヴァイに話しかける。
「やっとうるせぇのが終わった」
リヴァイは、
紅茶が入ったカップの縁を撫でながら呟いた。
「でも兵長、少し楽しそうでしたよ」
そう言いながら、レイは少し微笑んだ
「気のせいだ」
「気のせいじゃないと思います」
即答
「……お前、この数ヶ月で随分と生意気になったな」
「そうですか?」
リヴァイは軽くため息をつき、
眠ってしまった班員達を見つめた。
「……寂しいか?」
「先輩方と離れるのが、という事でしょうか?」
「あぁ」
レイは少し考え、答える。
「全く寂しくないと言えば、嘘になります。
ただ──」
視線を上げる。
「私にとって、兵長の隣に立って戦う事が、
生きがいであり、これまで生きてきた理由ですから」
彼女は、
リヴァイの目を真っ直ぐ見つめながら続けた
「今回の異動の件、失礼ながらも
自分が新兵で良かったと、心から思いました」
「ただ、仮に今後 貴方の隣に立てなくなったとしても、死ぬその日まで 私は貴方と戦場に立ち続けます。」
その言葉を聞き、リヴァイが口を開く
「重めぇな」
リヴァイはそう言って、彼女を見た
「すみません……」
「嫌とは言ってねぇ」
「……だが、どうしてそこまでして
俺の隣に立ちたがる?」
リヴァイとレイの視線が絡む──
「分かりません」
「……は?」
予想外の返答に、リヴァイは目を見開く
「分かんねぇ、だと?」
「……はい。助けていただいたあの日。
貴方の背中を見て直感的に、共に 戦いたい。
隣に立ちたいと思いました。」
「この衝動が何なのか、私には分かりません。」
「ですが──」
一瞬、息を吸う。
「この命を賭けても、 リヴァイ兵長、
貴方の隣に居たいと思いました。」
レイの瞳は、一寸の曇りもなかった
「……まるで告白だな」
リヴァイは、
照れるでも否定するでもなく、
ただ真っ直ぐ レイの目を見つめ続けた。
そして息を吐き、
「俺は、そんな事を言われなくても、
お前を班から外す気はねぇ。」
レイの呼吸が止まる。
「俺の動きに着いてこられる奴なんて、そういねぇからな。」
「仮にお前が班を離脱したいと言っても、エルヴィンから指示があったとしても」
「俺はお前を隣に立たし続ける。」
呼吸をおき、更に続ける
「だからレイ、
お前はそうやって俺を見ながら戦い続けろ。」
「ただし、絶対に死ぬな」
そこまで言い、言葉を切った。
暫く沈黙が続き──
「この命ある限り、貴方と戦い続けます」
レイは揺らぎのない声で言い、
リヴァイに敬礼をした。
「死ぬなと言っただろうが」
「……あ」
「ふん、まぁ良い。」
呆れた様子のリヴァイの口元は、
ほんの少しだけ、 笑っているように見えた──
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