コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私には、双子の妹、香がいた
ずっと、一緒にいた。どんなときでも、どんな日でも。いつも、二人でいて、これからも二人で乗り越えていくものだと過信していた。そう。あの日までは。
それは、小学3年生のことだった。
その頃、私は、まだ、元気で、明るかった。その日、学校で行ってはいけないと言われていた森に行った。そう。あの森だ。その頃から、幽霊がいるという噂が立っていたので、好奇心から行ってみようと考えたのだ。
「ここだね。」
「そうだね。」
「行こっか。」
「うん!」
私達は、森に入った。光が木々の間から漏れていた。光の雨のようだった。
「綺麗…」
「もっと奥に行ってみようよ。」
「もっと、綺麗かもね!」
行かなければ良かったと、今は思う。
奥の方に進むにつれて、光が少なくなっていった。だけど、ある場所に、光のカーテンがあった。そこだけ、世界が違うように、綺麗だった。そして、その光の中に、香は、入っていった。私は、追いかけようとした。なのに、動けなかった。もう、こっちには、戻って来れない。そんな気がしたからだ。そして、光のカーテンが、消えようとしていた。
「香!戻って来て!」
「お姉ちゃん。ごめんね。」
この言葉を最後に、香は、姿を消した。
目の前で見たことが、信じられなかった。光が、香を、呑み込んだ。それだけなのに、私は…私は…!
家に帰った。真っ先に、香のことを聞かれると思っていた。なのに、母は、何も言わなかった。まるで、最初から私に妹がいないかのように。今思えば、その予想は正しいのだと思う。私も、徐々に香のことを、忘れていったのだから。
そうだ…今回も、香は、光の中で消えた。そして、あの日、出会った時も、近くに、光があった。もしかして…香は私を守ってくれていたのだろうか。私も、光の中で、消えないように。
香…もう一度、会いたい。そして、今度こそ、二人揃って、ただいまを言いたいよ…また、会おう。香。