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夕方。
空は赤く濁っていた。
荒廃した世界の夕焼けは綺麗というより、どこか焼け跡に似ている。
それでも。
城の農園は、土の匂いが濃かった。
風が吹くたび、バジルの葉が揺れる。
「……お」
Pizza guyがしゃがみ込む。
土を掘る。
ごろ、と丸いものが顔を出した。
「じゃがいもか」
土のついたまま持ち上げる。
小ぶりだが、ちゃんと育っている。
「……」
少しだけ笑う。
「これピザにのせると、ホクホクして美味いんだよ」
後ろに立つノスフェラトゥへ振り返る。
「食べてみろよ」
「……」
ノスフェラトゥは静かに見下ろしている。
土まみれの手。
嬉しそうな声。
それら全部を、黙って見ている。
「……その後、吸っていい」
ぽつりと続けられた言葉に。
空気が止まる。
「……」
ノスフェラトゥの瞳が細くなる。
「……大丈夫なのか」
低い声。
本気で確認している。
「……多分」
Pizza guyは肩をすくめる。
「でも」
少しだけ目を細める。
「一緒に“食事”したいからさ」
「……」
その言葉が。
胸の奥へ静かに沈む。
吸血ではなく。
捕食でもなく。
“食事”。
同じ卓につく行為。
それは、ノスフェラトゥにとってあまりにも遠いものだった。
その晩。
二人は同じ食卓についた。
ロウソクの火が揺れている。
焼きたてのピザの匂い。
じゃがいもとチーズの香ばしい香りが、
冷たい石の部屋を満たしていた。
「……どうだ」
Pizza guyが聞く。
ノスフェラトゥは一口食べる。
ゆっくり噛む。
「……」
その沈黙が長いので、
Pizza guyは少し不安になる。
「……熱い」
「そこかよ」
思わず吹き出す。
「他にないのか」
ノスフェラトゥは少し考える。
「…ホクホクしている」
言いながら、
もう一口食べる。
「……」
Pizza guyはその様子を見て、
少し笑う。
嬉しかった。
ノスフェラトゥは食べる速度が遅い。
味わっている。
本当に。
ただ栄養を摂るんじゃなく。
生地の香り。
じゃがいもの食感。
バジルの青臭さ。
全部確かめるみたいに。
「……」
その横顔を見ながら、
Pizza guyは思う。
この吸血鬼は、
人間じゃない。
エリオットを殺した。
数え切れないほど人を食った。
今も自分の血を欲しがっている。
でも。
「……」
同じテーブルについて。
同じものを食べて。
「美味い」を共有してる。
それもまた、確かな事実だった。
やがて食事が終わる。
皿にはパンくずだけが残る。
静かな空気。
「……」
ノスフェラトゥが、短く言う。
「ここに」
膝を軽く示す。
「……はいはい」
Pizza guyはため息混じりに笑う。
迷いはない。
でも。
少しだけ心臓が速い。
歩み寄り、当然のようにその膝の上に座る。
体重が乗る。
「……」
近づく。
冷たい指が首に触れる。
ぞく、と背筋が震えた。
牙痕の残る場所。
そこへ指先がなぞられる。
ゆっくり。
確かめるように。
「……っ」
呼吸が少しだけ乱れる。
Pizza guyは無意識に視線を逸らす。
首が熱い。
でも、それはもう“異常”ではない。
「……まだ完全には馴染んでいない」
ノスフェラトゥが言う。
「何が」
「唾液の影響だ」
Pizza guyは小さく息を吐く。
熱を逃がすように。
「……大丈夫」
ノスフェラトゥの喉が小さく鳴る。
その音に。
「…お前こそ」
静かに聞く。
「……我慢できそうか」
ノスフェラトゥは答えない。
少しだけ目を閉じる。
飢え。
熱。
目の前にある体温。
全部が近い。
「……分からない」
正直な答えだった。
「……」
Pizza guyは少しだけ息を止める。
怖くないわけじゃない。
今までだって、
何度も境界を見てきた。
でも。
「……」
逃げなかった。
「……そっか」
小さく笑う。
少し困ったみたいに。
「じゃあ」
首元を少しだけ晒す。
「俺も頑張る」
「……」
ゆっくりと顔が近づく。
冷たい吐息。
やがて。
静かに牙が沈む。
ゆっくりと。
「……ぅ……っ」
Pizza guyの肩が震える。
痛み。
そのあとに来る熱。
痺れ。
「……」
ノスフェラトゥは急がない。
本当に“食事”みたいに。
味わうように。
丁寧に。
奪いすぎないように。
「……」
その姿を見ながら。
Pizza guyはぼんやりと思う。
もし。
これが依存でも、
呪いでも、
歪んだ共存でも。
「……」
今だけは。
“人間と怪物”としてじゃなく。
“毒を分け合うふたり”として。
同じ食卓につけている気がした。
コメント
2件
嬉しいコメントありがとうございます🥹本番(!?)も好きですが、そこに至るまでの、耐えたり焦れたりっていうボルテージを上げる過程のエロスを書きたかったので、読み取って貰えてすごく嬉しいです♡本編の方で書き足りなかった分の吸血&キス(エロシーン)発散しました!!🤤 ソネ様のおかげでみなぎってきたのでまたノス×guy書こうと思います!よろしくお願いします!!(?)

はわわ…うわ…わわ……😭😭 今までのと段違いでドすけb…ゲフン、なんでもありません() 毒作用に耐えようとするPizza guyの心理や ノス♡♡♡トゥの圧倒的な頼もしさと 余計に依存へと引き入れていく危険な香りが 相まって更に奥深く2人の絡みが見たいなと思いました…!👍💕 あの、すごく…素直に言うと 吸血シーンと口付けシーンがとてつもなく ドえr( イラストに続きお話の更新ありがとうございます😭