パーティーでのお披露目と一通りの挨拶をし、皆と一緒の楽しい時間が過ぎていく。
「いいね。こういうの」
「ん?」
「私たちの結婚式だけど、私達だけじゃなく皆で楽しめて幸せを感じられるのって」
皆が思うまま、その場で料理を食べながら飲み物を飲みながら、楽しい場所へと移動して、笑顔がこの場所でたくさん広がっている。
そんな姿を樹と二人で見ながら、ただゆっくり時間を過ごしているのもまた幸せで。
そんな幸せを感じながら、隣の樹に伝える。
「よかった。気に入ってくれた?この結婚式」
「うん。すごく」
「いつかこういう幸せ透子に届けたかったんだよね」
「こういう幸せ?」
「そう。自分達を想ってくれる大切な人たちに囲まれて、その想いを感じられる幸せ」
「確かに。こんなにたくさんの想いをこんな風に感じられることってないもんね」
「でもそれも、普通の結婚式みたいにさ、ただかしこまった型にハマったお披露目がメインのやつじゃなくて」
「うん。わかる。私もそれなら望んでなかったかも」
「ホントに祝ってほしい人、オレたちのこの幸せを伝えたい人と、ただこういう場所で楽しい時間を過ごせたらなって」
「でも本来はその自分達の幸せを伝える場なのに、私は逆に皆にこの結婚式の為にたくさんの幸せをもらえた。それも全部樹が皆にお願いしてくれたんだよね?ホントにありがとう」
「なんかさ。透子とはさ、実際偶然なんだか運命なんだかわからないけど、結果今こうして一緒にいられるワケでさ」
「そうだね」
「だけど、オレにとっては例え偶然だとしても、間違いなく透子との出会いは運命なんだよね。透子がどうしようもない自分を救ってくれた」
「私は何もしてないけどね」
「透子はきっとそう思うだろうね。でも透子の存在自体がさ、オレにとっては力になって、救われてる。透子との時間が全部自分にとって意味ある時間に変わったんだよね」
「それなら私も同じ」
「でもさ。ホントはずっと昔にオレが幼い頃からきっと会ってたのに、再会したのはもう何年も後で。それまでの透子に出会ってない時のオレはどうやって生きてたんだろう、なんでそんな生き方してたんだろうって、考えたりしてさ」
「また大袈裟だな、樹は」
「でもそのタイミングでようやく再会出来たのには、きっと意味があると思うんだよね。オレがどうしようもない生き方してたのにも、その時はきっと意味があって。だからきっとオレも透子と再会出来て、そして恋に落ちた。それから再会してからも、二人で幸せになるまではどうしても時間が必要で、随分そこまでかかっちゃったけど、でもそこまでかかるのにもやっぱり意味があって」
「うん」
「だからさ。今の自分達だからこそ、意味がある時間と感じられる幸せをこの結婚式で実感したかった。それで、皆にお願いしたんだ。一緒にこの結婚式を作ってほしいって」
「そうだね。皆がそれぞれ力を貸してくれたことで、私もそれ感じたかも。なんかどこかで皆とそれぞれ繋がっているのかなって。一人一人出会えたことに意味があるのかなって、そう感じた」
きっとどんな出会いにも、どんな今にも、意味があって。
それがすぐにカタチになるかもしれないし、何年もずっと後にそれに気づくかもしれない。
そしてその出会いも、きっかけも、それまでの時間も、きっとその時が来れば、それが意味あるモノだと、必要な時間だと実感する。
「でも。オレの人生いい時も悪い時も、どんな時もすべて意味があるんだとそう思えたのは、やっぱり透子がいてくれたからなんだよね。一人だと当然そんなことに気付くこともなかったし、透子がいてくれることで、その意味はちゃんとした本来の意味を持てた」
もしも。
樹と出会わなければどうなっていたのだろう。
どこかですれ違っていたとしても、きっと気付かないまま、お互いの存在を知らないままでいたら、私たちはどんな人生を歩んでいたのだろう。
だけど、なぜか、もうずっと昔から始まっていた樹との時間を知ってしまった今は、きっといつかどこかで、樹とは出会う気がして。
もしも今じゃないタイミングなのだとしても、きっと樹とは、必ずどこかで繋がる様な気がして。
それもきっと二人にとってまた意味がある時間なのだと思うから。
「透子。ありがとう。オレと何度も出会ってくれて。そして意味のある人生だと教えてくれて」
「こちらこそ」
「これからは透子の人生この先ずーっとオレと一緒にいる幸せの意味伝えていくから」
そう。今は樹と二人で歩む幸せな人生がもう始まっている。
もしも、だとか、そんな存在しない未来も必要ない。
今は樹が出会えたことを、一緒にいる幸せを伝えてくれる。
「じゃあ私も、樹のこれからの人生ずーっと私と一緒で幸せだって思ってもらえるように伝え続ける」
「うーん。それはちょっと違うかな」
「え?」
「だってオレはどんな時も透子といると幸せなのはわかりきってるから」
「樹・・」
「今のオレのこの人生すべてが、透子と一緒に幸せになるための時間。オレにとってそれが今まですべて必要で意味があった時間だから」
そうだね。
きっと私の人生もすべて、樹と出会うまでの必要で意味ある時間。
「じゃあ、これからは二人でいる幸せの意味を、一緒に分かち合って伝え続けていこう」
これからはずっと一緒にいる人生をもっと幸せにしていこう。
きっとずっと一緒にいられるだけで、この人生はずっと幸せだから。
出会えた幸せを、好きになれた幸せを、好きになってくれた幸せを、今一緒にいられる幸せを、これからはお互い伝え続けよう。
どんな時もその幸せを一緒に感じていこう。
二人だからこそ感じられる幸せを。
二人でいられるからこそ感じられる幸せを。
これからもずっとずっと。