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結婚後は輝明さんに夜毎求められたけれど、今はタイミング法で知った日の前後だけ、行為をおこなっている。
お医者さんからの話を絡めた上で、「妊娠しやすい日に、狙いを定めてやってみない?」と私が提案したら。
『確かに無駄な鉄砲を数打っても、ムダ打ちになるくらいなら、明美の言うようにシたほうが、妊娠する確率があがるかもしれないね』
輝明さんも快諾したので、あのときは安堵した。
正直なところ、治療で弱ってる体で彼の相手をするのは大変だった。しかも1度や2度では行為が終わらないことで、彼の性欲の強さがわかっているからこそ、現在進行形で浮気をしていないか心配になった。残業と言いながら、ちゃっかり風俗に行ってる可能性だってある。
「出張は月1より増えていないけれど、残業時間は少しだけ増えてるのよね……」
それは不妊治療の費用を稼ぐために頑張っているからだと、頭ではわかっていた。それに浮気の証拠がまったくない。スマホだって私がいつ見てもいいように、ロックすらしていない。試しに中を見ても、仕事関連のやり取りばかりで、女性とのやり取りはなかった。
輝明さんは清廉潔白――むしろ、疑うことのほうが悪い気がする。
「火のないところに煙は立たないと言うし、帰ったら昨日できなかったところの掃除でもしよう」
クリニックの帰り道、夕飯の買い物をしてから帰宅し、さっそく有言実行する。
輝明さんが会社から帰って、居心地がいいと思える家を作らなければと、重だるい体に鞭を打って、掃除に励んだのだった。
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