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タボちょん、捏造有り
付き合いはじめて、もうすぐ半年。
ターボーとちょんまげは駅前のショッピングモールで遅めのランチを終え、手を繋ぐでもなく、でも肩が触れそうなくらいの距離で歩いていた。
「映画、どうする? あのアクションのやつ観る?」
「ターボーが観たいならそれでいいよ」
「俺はちょんまげが観たいのが観たい」
「なにそれ」
くすっと笑うちょんまげの横顔を見て、ターボーは胸の奥が温かくなる。
穏やかで、優しくて、可愛くて、ちょっと自分に自信がなくて、でも誰よりも愛おしい人。
——その時だった。
「あれ?もしかして隆弘?」
振り向いた瞬間、ターボーの表情がわずかに固まった。
「……ああ、久しぶり」
そこに立っていたのは、長い艶やかな髪に、すらりとした体、洗練されたメイク。
誰が見ても“美人”と言うだろう女性だった。
「え、なんか前より男らしくなった?相変わらずモテそうだね隆弘は」
軽やかな笑い声。
ちょんまげは胸がきゅっと縮むのを感じた。
(もしかしてこの人が…元カノ?)
ターボーが二十代の頃に真剣に付き合っていた人。一度だけ、話の流れで聞いたことがある。
「友達?」と、元カノはちょんまげをじっと見た。
その視線はやわらかい笑顔の奥で、どこか品定めのようだった。
「いや、俺の恋人」
ターボーはきっぱりと言った。
元カノは小さく目を見開いたあと、ふっと微笑んだ。
「へぇ、そうなんだ。隆弘こういうタイプが好きになったんだ」
その言い方がちょんまげの胸を刺した。
「可愛いね。隆弘って昔はもっとこう……大人っぽい綺麗めな人が好きだったよね?というか男もいけたんだ?」
「…………」
ターボーは何も言わない。
ちょんまげの耳の奥で、自分の鼓動だけが大きく響く。
(比べられてる)
自分は地味だし、背も高くないし、華やかさもない。何より男。
ターボーの恋人として隣に立つには、あまりに釣り合わないんじゃないか。
「じゃ、またね隆弘。幸せにしてもらいなよ?」
意味深な笑みを残して、元カノは去っていった。
数秒の沈黙。
「……ごめん、ターボー。僕ちょっと用事思い出した」
「え?」
「先帰るね」
ターボーが止める間もなく、ちょんまげは足早にその場を離れた。
アパートに戻ったちょんまげは、玄関で崩れ落ちた。
(情けない……)
ただの元カノなのに。
もう終わった関係なのに。
でも、あんな人と付き合っていたターボーが自分を選んでくれた理由がわからなくなった。
スマホが鳴る。
ターボーからの着信。
出られない。 今声を聞いたら泣いてしまいそうで。
数分後、インターホンが鳴った。
「ちょんまげ、いるよな?」
ドアの向こうから、少し荒れた声。
迷った末、鍵を開ける。
「……どうして」
「どうしてじゃない。なんで逃げるんだよ」
ターボーは靴も脱ぎ捨てる勢いで部屋に入り、ちょんまげの肩をつかんだ。
「俺、なんか悪いことした?」
「してない……」
「じゃあなんで」
ちょんまげはぐっと唇を噛む。
「……あの人、すごく綺麗だったから」
「は?」
「僕全然ターボーに釣り合ってない。ターボーはああいう人の方が似合う」
言い終わった瞬間、涙がこぼれた。
ターボーは一瞬目を丸くして、それから深く息を吐いた。
「ちょんまげ」
名前を呼ぶ声が低くて優しい。
「確かにあいつは綺麗だよ。でもな」
そっと頬に触れられる。
「俺が好きなのは、お前」
「……」
「一緒にいると落ち着くし、笑ってる顔見ると嬉しくなるし、触れたいって思うのも、抱きしめたいって思うのも、全部ちょんまげにだけだ」
真っ直ぐな視線。
「半年付き合って、まだわかんない?」
ちょんまげは首を横に振る。
「不安になるに決まってるでしょ…好きだから」
その言葉に、ターボーは目を細めた。
「じゃあ、ちゃんとわからせる」
ぐっと引き寄せられる。
唇が触れた。
最初は優しく、確かめるように。
でもすぐに深くなって、ちょんまげの背中に回った腕が強くなる。
「ん……ターボー……」
「俺の一番は、お前だから」
耳元で囁かれ、身体が熱くなる。
何度もキスを重ねるうちに、不安が溶けていく。
ベッドに押し倒されても、怖くない。
ターボーの指が絡む度、ちょんまげの胸は甘く締めつけられる。
「大好きだよ、太輔」
「……僕も、隆弘が大好き」
額を合わせて笑う。
その距離の近さが、何よりの証明だった。
窓の外はすっかり夜。
でも部屋の中は、暖かい。
元カノの影なんて、もうどこにもない。
ターボーの腕の中で、ちょんまげはようやく安心して目を閉じた。
——ターボーが一番大事なのは自分だと、ちゃんと信じられるように。
そして二人は、これからも何度でも、不安も嫉妬も乗り越えて、恋人でいる。
END