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出勝⚠
かっちゃんが嫉妬してます
地雷、苦手な人は見るの中断してください
放課後の寮のリビング。
出久の笑い声が響いていた。
「ほんとに轟くん、それ言ったの!?」
「……事実だ。」
「マジかよ〜!お前天然かよ!」と上鳴が笑い転げる。
麗日も頬を押さえて、「デクくん笑いすぎ〜!」と笑っていた。
そんな輪の少し離れた場所、
爆豪勝己はソファの背に肘をついて、無言でその光景を見ていた。
(……なんであいつ、あんな楽しそうなんだよ。)
出久の笑顔は眩しいほどで、
自分に向ける笑顔よりもずっと柔らかく見えた。
「かっちゃんもこっち来なよ!」
出久が手を振って呼ぶ。
けれど爆豪は短く答えた。
「……うるせぇ。別に行かねぇ。」
「えぇ〜、何それぇ?」と上鳴が茶化すが、
爆豪は無視して立ち上がり、そのまま部屋へと戻っていった。
階段を上がる足取りは、少しだけ重い。
(バカみてぇだな……何ムキになってんだ俺。)
でも、胸の奥がずっとムカムカしていた。
出久の笑い声がまだ耳に残っている。
「……チッ。」
乱暴に扉を閉め、ベッドに倒れ込む。
「アイツ、なんで……俺ばっか気にしてんだよ……」
そのまま夜になった。
部屋の電気をつけずに寝転んでいると、
ノックの音がした。
「……かっちゃん、起きてる?」
「……」
「ごめんね。ちょっと話したくて……」
爆豪はため息をついて起き上がり、ドアを開ける。
廊下の明かりの向こうに、出久が立っていた。
両手を胸の前でぎゅっと握りしめて、少し不安そうに笑っている。
「……何の用だよ。」
「今日ね、かっちゃん、ずっと機嫌悪そうだったから……」
「別に。」
「……嫉妬してたでしょ。」
その言葉に、爆豪の肩がぴくりと動いた。
「は!? するわけねぇだろ!!」
「嘘だ。だって、かっちゃん分かりやすいもん。」
出久が小さく笑う。
「僕ね、嬉しかったんだよ。
かっちゃんがそうやって、僕のこと見てくれてるって。」
爆豪は思わず顔をそらした。
「……んなこと、いちいち言うな。」
「でも、本当にごめんね。心配させちゃって。」
出久がそっと一歩近づく。
その距離、あと30センチ。
爆豪は逃げなかった。
「……バカ。謝んなくていい。」
「でも……」
「だったら、もういい。これでチャラだ。」
そう言って爆豪は、
出久の手首を軽く引いた。
「っ……か、かっちゃん?」
「……このくらい近くねぇと、落ち着かねぇ。」
顔の距離、0センチ。
呼吸の音すら重なるほどの距離で、
出久は真っ赤になりながら小さく頷いた。
「う、うん……僕も……」
二人の間に、静かな夜が流れた。
寮の外では虫の声がして、
廊下の明かりが優しく二人を照らしていた。
──翌朝。
食堂に現れた出久とかっちゃんを見て、
上鳴が口にしていたトーストを吹き出した。
「おまっ……近っ!!!」
「え、えぇ!? ふたり……そんな近かったっけ!?」
二人はまるで磁石みたいに、ピタリとくっついて歩いていた。
「……何かあった?」と瀬呂が聞くと、出久が少し笑って答える。
「ううん、なんにも。ね、かっちゃん?」
「……あぁ。なんにもねぇよ。」
そう言いながらも、
爆豪は照れ隠しに髪をかき上げ、
その手が自然に出久の肩に触れていた。
0センチになった二人の距離は、
もう誰にも引き離せなかった。
おわりです