テラーノベル
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翌朝。
「おはよー。」
「おはよう。」
いつも通りの朝。
奏斗が席につくと、すぐに颯太がやってきた。
「なあ、奏斗。」
「ん?」
「昨日のこと。」
「……。」
「まだ考えてる?」
「何のこと?」
「石川が他の人と話してて、嫌だったってやつ。」
「……。」
奏斗は黙った。
「それ。」
颯太が少し笑う。
「もう答え出てるんじゃない?」
「……何の?」
「石川のこと。」
「……。」
「好きなんじゃない?」
「――!」
奏斗の顔が一気に熱くなる。
「な、何言ってんだよ!」
「図星?」
「違う!」
「じゃあ、なんでそんな顔赤いの?」
「暑いだけ!」
「今日そんな暑くないけど。」
「……うるさい。」
颯太は笑った。
「まあ、無理に認めなくてもいいけど。」
「……。」
「自分の気持ちは、自分で決めればいい。」
そう言って、颯太は席に戻っていった。
-–
授業中。
奏斗は黒板を見ている。
けれど。
頭の中は別のことばかり。
(好き……?)
昨日のことを思い出す。
冴が誰かと楽しそうに話していた。
嫌だった。
自分のそばにいてほしかった。
一緒に帰りたい。
会えないと寂しい。
写真をもらうと嬉しい。
そして。
冴から「また明日」と言われるだけで、こんなにも嬉しい。
「……。」
(これって。)
(本当に――)
「神崎。」
「えっ?」
先生の声で我に返る。
「問題、答えられるか?」
「……はい!」
教室に笑い声が起きる。
「神崎、大丈夫かー?」
「大丈夫です……。」
-–
放課後。
「神崎。」
「ん?」
冴が鞄を持って立っている。
「帰ろ。」
「……うん。」
二人で校門を出る。
しばらく歩いて。
「神崎。」
「何?」
「今日、静か。」
「……。」
「何かあった?」
「別に。」
「昨日もそうだった。」
「……。」
冴が心配そうに見る。
「俺に言えないこと?」
「違う。」
「じゃあ?」
奏斗は足を止めた。
「……石川。」
「?」
「もし。」
「俺が変なこと言ったら、笑わないで。」
冴も立ち止まる。
「笑わない。」
「……約束?」
「約束。」
奏斗は少し息を吸う。
「俺さ。」
「うん。」
「最近、石川が他の人といると……嫌なんだ。」
冴は黙っている。
「でも。」
「それが何なのか、分からない。」
「……。」
「友達なら、こんなこと思うのかな。」
冴は少し考えてから。
「……分からない。」
「そっか。」
「でも。」
冴が奏斗を見る。
「俺も同じだから。」
「……。」
奏斗の胸が跳ねる。
「神崎が他の人と楽しそうにしてると。」
「少し、嫌。」
「……。」
「だから。」
冴は小さく笑った。
「同じなら、変じゃないんじゃない?」
「……そうかな。」
「うん。」
-–
駅が近づく。
「じゃあ、また明日。」
冴が言う。
「……うん。」
二人が別れる。
数歩進んだところで。
「神崎。」
「?」
振り返る。
冴がこちらを見ている。
「明日も一緒に帰ろ。」
「……!」
まただ。
胸が跳ねる。
「うん。」
奏斗は笑った。
「絶対。」
-–
家に帰る。
鞄を置く。
机の上には、体育祭の写真。
その隣には、冴からもらったしおり。
奏斗は椅子に座る。
そして。
「……。」
小さく呟く。
「俺。」
「石川のこと――。」
そこまで言って、止まる。
まだ怖かった。
この気持ちに名前をつけてしまったら。
今までの関係が変わってしまう気がする。
だから。
「……まだ、いいや。」
奏斗は写真を伏せる。
けれど。
その表情は、少しだけ笑っていた。
-–
その頃。
冴も自分の部屋で、同じように写真を見ていた。
「……神崎。」
そして。
「俺も。」
小さく呟く。
二人ともまだ知らない。
同じ気持ちを抱えていることを。
-–
第38話 おわり
次回・第39話「近すぎる距離」
翌日。
体育の授業でペアを組むことになった二人。
いつもより距離が近くなってしまい、奏斗は妙に意識してしまう。
そして冴が何気なく言う。
「神崎って、近くにいると安心する。」
その一言で、奏斗の心臓はまた大騒ぎになる――。
コメント
1件
お読みになりました!「第三十八話 : 気づきたくない」、すごく良かったです。 颯太に「好きなんじゃない?」ってずばり言われて、顔が真っ赤になる奏斗、可愛すぎました。でもまだ認めたくない、その怖さがすごく伝わってきて…。放課後に冴に「他の人といると嫌なんだ」って打ち明けるシーン、勇気がいったろうなあ。それに対して冴が「俺も同じだから」って返すところ、心臓がぎゅっとなりました。お互い同じ気持ちなのに、まだ名前をつけられないもどかしさが、胸に刺さります。 次回、体育でペア…!もう距離が近くなるだけでドキドキしそうです。続きが待ち遠しいです🌷
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