テラーノベル
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世界が終わる瞬間は、想像していたよりもずっと静かだった。
空は悲鳴を上げなかった。
ただ、色を失っただけだった。
夕暮れのはずの空が、急に深い夜へと沈み、星も月もない闇が広がった。
風が止み、鳥の声が途切れ、街のざわめきが一斉に消える。
少女は、その場に立ち尽くしていた。
次の瞬間、大地が揺れた。
音は遅れてやってきた。低く、重く、世界の奥底から響くような音。
建物が崩れ、ガラスが砕け、誰かの叫びが空気を裂く。
少女は転び、膝を打ち、息を詰まらせた。
-終わる。
理由は分からなかった。
ただ、本能がそう告げていた。
空に、裂け目が走った。
雷ではない。
光でもない。
“境界”のようなものが、夜空を横切り、世界を二つに分けた。
その瞬間、少女の胸が焼けるように熱くなった。
苦しい。
息ができない。
倒れ込んだ視界の端で、何かが瞬いた。
青い光。
そして、金の光。
二つの星が、彼女の手のひらに現れていた。
触れた瞬間、頭の中に言葉が落ちてくる。
「アルビレオ」。
意味は分からない。
ただ、その名だけが、はっきりと刻まれた。
揺れが収まったあと、街は別物になっていた。
半分は崩れ、半分は焼け、もう半分は――静かだった。
人の声は少なく、遠くで何かが燃える音だけが残っている。
少女は震える手で立ち上がり、空を見上げた。
闇だったはずの夜空に、星が戻ってきていた。
その中で、ひときわ目を引く二つの星。
寄り添いながら、決して混ざらない青と金。
アルビレオ。
少女はなぜか、それが「自分の星」だと分かった。
世界は壊れた。
元には戻らない。
それでも、星は空にあった。
そして、自分の手のひらにも。
「……あぁ。」
声は、驚くほど落ち着いていた。
泣くこともできず、叫ぶこともできず、ただ事実だけが胸に落ちていく。
世界が終わった日、
少女は星を受け取った。
それが祝福なのか、呪いなのかを知るのは、まだずっと先のことだった。
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