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#たまに雑談
窓の外が白み始め、遮光カーテンの隙間からわずかな朝光が差し込む頃、楽屋の喧騒はようやく静まり返っていました。乱れた隊服と羽織が床に散らばり、ソファの上では二人が肌を寄せ合い、ひとつの毛布に包まっています。撮影中の殺伐とした空気は微塵もなく、そこにあるのは甘く気だるい、完徹明けの幸福感だけでした。
「……しのぶちゃん、起きてる?」
彼が掠れた声で囁きながら、彼女の結び目の解けた髪を指で梳きます。彼女は彼の胸元に顔を埋めたまま、小さく「ん……」と鼻を鳴らして、さらに身体を密着させました。
「もう動けません……。あなたが、あんなに何度も意地悪するから……」
「お詫びしてって言ったのは君だよ? でも、本当に綺麗だった。劇中の冷たい瞳もいいけど、俺だけに見せるその蕩けた顔、独り占めできるのは役者の特権だね」
彼は愛おしそうに彼女の額にキスを落としました。彼女は少しだけ顔を上げると、まだ熱の引かない瞳で彼を見つめ返します。
「……無限城の撮影、今日で一段落ですね。明日からは、毒も殺意もない、ただの私としてあなたと一緒にいられます」
「そうだね。次は地獄じゃなくて、美味しいパンケーキ屋さんにでも行こうか」
冗談めかして言う彼に、彼女はふふっと力なく笑い、彼の首筋にそっと歯を立てました。それは劇中での致命傷とは程遠い、甘い甘い愛の印。
「約束ですよ。……もし破ったら、今度こそ本当に毒を盛りますから」
「怖いなぁ。でも、君になら殺されても本望かな」
朝の光が部屋を明るく照らしていく中、二人はどちらからともなく再び唇を重ねました。撮影が終わっても、二人の「本当の物語」は、この穏やかな朝から新しく始まっていくのでした。
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