テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「居ないって…どういうことや」
「い、いやっ…多分目が覚めて窓から落ちて出たのではないかと……」
「多分?はよ病院のカメラ見せろや」
「ひっ、ひぃ!ただいま!!」
そう言って院長に焦った顔で詰寄るアザミ
そんなアザミの後ろで足をトントン、と何度も音を立て苛立っている様子のカラスバ
「3年ぶりに起きるのに立つことなんてできるのか?」
「…姉さんは私の代わりに色んな実験を受けてたから、回復能力が高いんだよ。もしかしたら自分で立ってって事も出来たかもしれない…」
「でも2階から下に落ちたなんて…」
「とりあえず病院のカメラ見よう」
そう言ってジプソとアザミは病室を離れて院長の元へゆっくり歩いていく
カラスバは昨日までいたシオンのベッドを眺めていた
半分落ちている布団に、散らかった薬や点滴機シオンの腕に着いていた管は全て取られていて、床に散らばって落ちている
「…どこ行ったんや、シオン」
起きたのであれば、待っていればよかったものの気でも動転していたのだろうか
そう思いながら病室のベッドを眺めているとカツカツと此方に走って向かってくるヒールの音が聞こえる
「カラスバ!姉さん、やっぱ2階から落ちてどっか行ってる!!」
カメラを見たのか、アザミがカラスバに声を掛けるとすぐに振り返りカラスバは「そうか」と呟く
「街のカメラはサビ組には見せてくれんさかい、こっからは死ぬ気で探すんや。誰かに見つかる前に何としてでも」
「言われなくても。──お前は駅で姉さんのような人間が来ないか見張れ!お前は─」
カラスバに頭を下げたあと、すぐにアザミが淡々と部下に命令していくのが聞こえる
「シオン。」
何故逃げた。何故居なくなった。
何故オレを置いてまた逃げようとするんや。
「…絶対捕まえたる」
絶対に逃がさへん
──ホテルZ
「えー!?病院から抜け出してきたの!?」
「それは病院や家族も心配してるのでは…」
あの日、あの少年──ガイにホテルZへ案内された翌朝、元気そうな女の子と礼儀正しそうな男の子が驚いた顔でシオンを見ていた
そんなふたりに対し、シオンは声が上手く出せない事からAZさんから貰ったホワイトボードに文字を書いていく
『心配してくれる家族は近くにいない』
『我儘かもしれないけど、病院には戻りたくない。怖い。』
怯えた顔でデウロ達に訴えると、少しバツの悪そうな顔をし顔を見合せる
「…まぁ、色々な事情があるでしょう…」
「ほ、本当に身体は大丈夫なの?何かおかしな所はないの?声が出ないのも…心配、だよ……」
と2人は話すとそれに対し『大丈夫。ありがとう』とホワイトボードに文字を書き頭を下げる
とりあえず2人から色々と話を聞き、ここはカロス地方のミアレシティで今は───年と聞いた
「(施設を出たのが──年…だからあの日から4年経過している。4年間の記憶が抜けている)」
首の装置が無いのは何故か分からないが、それさえ無ければシオンは自由の身だった
カロス地方だし、自分が施設だと思っていたところは本当に何も無い病院だしそこに戻っても大丈夫だろう
しかし外に出れば施設の人間が自分を探しにきているかもしれない
またあそこに戻されるかもしれない
そんな恐怖が自分の身体を縛って動かなかった
「ふぁ〜、おはよう」
「あ!セイカ!!ちょっとこっち来て」
「んー?あれ、お客さん?」
『朝からごめんなさい』
「喉が悪いみたいで話せないみたいなの、シオンって言うんだけどかくかくしかじかでホテルZに住んでもらうようにしたから」
「へー!そうなんだ!!」
あんな適当な説明で納得するのか…ある意味大丈夫かなこの子と少し心配しつつもセイカに頭を下げる
それからガイも揃い、話し合った結果シオンはホテルZに置く代わりに身体が回復すればホテルの清掃等をやってもらうということになった
『それくらいしか出来なくてごめん。でもすごく助かる、ありがとう』
「いいんだって!気にすんなよ!!」
そう笑いながらシオンの頭を撫でるガイ
そんなガイの笑顔にトクトク、と心臓が甘い音を鳴らした
「(スマホロトムまで貰ってしまったし…)」
どう見ても怪しさ満点なのに、ここまでしてくれるホテルZには感謝しかない
それからスマホロトムを見つつ、情報をまとめる
ミアレに着いた途端何かが自身の身に起こり、4年間寝たきりだったのか記憶がすっぽり抜けている
それに首の装置が取れているのも不思議だ
もしアザミがカロス地方に居るのであれば連絡を取りたいが元々持っていたスマホロトムはどこかへ行ってしまっている
かと言って外に出てもし施設の人間が私を探していたら?見つかって連れ戻されたら?
せっかく自由になったんだ、あんな所戻りたくない
しかしアザミの事だけは気がかりだ
しかし4年も経っているんだ、もう生きていない可能性だって考えられる
「(どうしよ…)」
他に何かカロスで知ってる人物を思い出すとふとターゲットである『カラスバ』という男を思い浮かべる
どんな人物なのだろうか…
いや、そんな事考えても仕方ない
もう人を殺さなくていいんだから
「(とりあえずアザミを探さないと)」
そう思いながら、鏡を見た際長くなった髪に目が行く
すると先の方は何故か紫色の似合わない髪色をしていた
「(こんな色入れたっけ?)」
そう思いつつも不自然な為近くのハサミを手に取り、髪の毛を持ちジャキッという音を立てて髪を切った